7 俺の家族
「おめでとう、山野!や~っとお前も所帯持ちか!」
「あ、ありがとうございます、先輩。」
「嫁さんだけじゃなくて娘さんまでゲットしやがって!まぁ、これで俺の苦労を無駄にしやがった事もチャラにしてやる!」
女の子を紹介してくれたのに断り続けてた件か………。確かに悪いことしたな。
「ありがとうございます、先輩には感謝してますよ。」
「まぁ、いい。とにかく幸せになれよ!」
今日は俺と美紀の結婚式。
もうすぐ小学校に入学する美玖もおめかししてそわそわしている。
「ひとがいっぱい…。あ!ママきれい!」
その母親である美紀も同じようにそわそわしている。
「美紀、主役なんだからちょっと落ち着け。」
そう声を掛ける俺も実はそわそわしている。
「和人だって落ち着いてないじゃない。あー、緊張する~。」
「俺はこういうの苦手なんだよ。仕事だったら人前も平気なんだが。」
「私だって得意じゃないよ?」
「まぁ、なるようにしかならねぇか。」
式は滞りなく進んだ。俺たちの結婚式はあまり大人数ではなく、近しい人だけを招待した。
美紀が再婚という事もあるが、家族の生活の為にあまり金を掛けない様にする事が俺と美紀の希望だったからだ。
式も終わり、二次会までは顔を出したが、そこで俺たちは帰らせてもらった。
結婚を機に物件を見て回り、広めのマンションへと引っ越した。
だが、今日は美玖は美紀の実家にお泊りしている。
マンションの部屋で、美紀と2人きり。
「あー、疲れたね?何かお腹もすいてるし。2次会でも緊張してあんまり食べられなかった。」
「そうだなー。俺も酔いが醒めたら腹減って来た。」
「何か作ろうか?」
「疲れてるだろ?何か頼もう。」
遅めの食事を摂り、風呂に入って寝室へ。
「改めて、これからよろしくね?和人、愛してる。」
「こちらこそよろしくな。美紀、愛してる。」
こうして俺たちの結婚式は無事終わった。
それから1年。
今日は美玖の小学校初めての運動会。
カメラのバッテリーとメモリカードの貯蔵は充分だ。
いざ!
「ねぇ、気合い入れすぎじゃない?」
「普通だろ、これくらい。」
「まぁいいけど。和人も競技に出るんだから、ソッチも忘れないでね?」
「任せろ。今の俺に死角はない。」
「何か逆に不安なんだけど…。」
大丈夫だ、美玖。お前の勇姿は全部録画してあるぞ!
「和人、次、出番だよ!」
おおぅ、もうそんな時間か。見てろ、美玖、パパのかっこいいところを!
お父さん向け障害物競走に出場するため、集合場所に向かう。
「パパ、がんばってねー!」
「おう!」
「よーーーい!」
パンっ!!
周りのお父さん連中も俺と大して年は変わらなそうだ。
だが、俺は今でも身体は鍛えている。その辺の奴には負けはしない。
「パパーーーーーーーーーーーー!!!」
美玖の声が聞こえる。そうだ、たとえ血がつながっていなくても、お前は俺の娘だ。
誰が何と言おうと、俺の娘だ。その娘の期待に応えられなきゃパパじゃねぇだろ!!
最後のコーナーをトップで駆け抜ける。
1着のゴールテープを
目前にしてすっ転んだ。
「ねぇ、いつまで落ち込んでるの?美玖も慰めてくれたじゃない。」
「そうは言ってもなぁ、情けなくてなぁ…。」
寝室で美紀にも慰められる。本当に情けない。
「ね、和人、こっち来て。」
ベッドに呼ばれたので、美紀の隣に腰掛ける。
「和人が美玖の事、凄く大事に思ってくれてるのは嬉しいよ?」
「当たり前だ。美玖は誰が何と言おうと俺の娘だ。」
ベッドに押し倒される。
「うん、そう言ってくれるのは私も幸せだよ?でもね?」
「ちょ、おい、どこさわって」
「私にも夢中になって欲しい。美玖と同じくらいでいいから。私はこんなに和人にメロメロなのに。」
「おいって、美紀?」
「和人にも私にメロメロになって欲しいな。」
「俺、結構疲れてんだけど…。」
「だめ。私と和人の子供も欲しいし、ね?」
「………わかったよ、美紀、覚悟しろよ?」
ガチャ。
「パパ、ママ、一緒に寝よー」
んーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
幸せだよ?ホントに。
最後までお読み頂きありがとうございました。