1 予期せぬ再会
今回のお話は展開的には正直作者の好みではありません。
そこを敢えて書いてみようと思いました。
好みではない展開を自分なりに納得できるよう書いてみました。
正直、好みは分かれるかと思います。
もしお時間が許すなら感想など書いて頂けると嬉しいです。
「おい山野、この間紹介した子とはどうなんだよ?」
「あ~、すいません、連絡とってないです。」
「何でだよ!結構可愛かったろ?性格も悪くないと思うんだが?」
「ええ、まぁ…。」
「ハッキリしねぇなぁ。そんなんじゃ彼女出来ないぞ?」
「はい、すいません。」
俺の名前は山野和人。27歳のサラリーマンだ。
さっき声を掛けてきたのは会社の先輩。
気のいい人でずっと彼女がいない俺に何回か女の子を紹介してくれている。
まぁ、俺が頼んだわけではないが。ぶっちゃけあまり気乗りしない。
自分で言うのも何だが、そんなにモテないわけでもない。
それでもずっと彼女がいないのには一応ワケがある。
俺には小学校から高校まで一緒だった幼馴染がいた。
海原美紀。同い年で、近所だった為、仲が良かった。
元々容姿の整っていた美紀は、小学校高学年になると男子からの人気が高かった。
中学になると、女らしく成長した美紀は告白されまくっていた。
俺はと言えば、小学校の頃から美紀の事が好きだったが、どんどん綺麗になっていく美紀に気後れしていた。
高校を卒業するまでに告白しようと漠然と思っていたが、高校2年のある日、美紀から報告があった。
「和人、私、里中先輩と付き合う事になったの。」
「えっ?」
里中正樹、1個上の先輩で成績優秀、バスケ部のキャプテンも務めているイケメンだ。
「昨日告白されて、前からいいなって思ってたから。」
「あ、そ、そっか。」
「うん、だからこれから一緒に登下校は出来ないの。」
「そ、そうだよな!彼氏出来たんならしょうがねぇよ!」
「うん、ごめんね?和人も彼女見つけなよ?」
「お、おう、頑張るわ。」
こうして俺の初恋は告白する勇気の出ないまま、砕け散った。
それから美紀とは接点が無くなり、話すことも無くなった。
今も美紀がどうしているのかも知らない。
それからというもの、勉強や筋トレ、ランニングと自分磨きをしてみたが、どうしても自分に自信が持てない。
女の子から告白もされたが、付き合うという気になれない。
美紀の事を引き摺っているのだろうか。女嫌いなのだろうか?自分でもハッキリしない。
今日も定時で上がれたので、そんなことをぼんやり考えながら家路に着く。
「ママーーー!!ママーーーーーーーーーー!!」
ん?迷子か?この辺はそんなに人通りも多くなく、小さい女の子が一人ギャン泣きしていた。
どうするかな…。声を掛けて不審者扱いされてもな…。
「ママーーーーーーーーーー!!!どこーーーーーー!!!」
ええい!しょうがねぇな!
「どうしたの?ママとはぐれちゃったのか?」
「………おにいちゃんだれ?」
おお、27歳の俺をお兄ちゃんと呼んでくれるのか。多分この子はいい子だ。
「お兄ちゃんは山野和人って言うんだ。ママとは一緒じゃないの?」
「にゃーおいかけてたら、ママいなくなってたの!」
にゃー?あ。猫の事か?
「ママがいなくなったのはどこ?」
「うーんとね、みくとおかいものしてたの!そしたらおそとににゃーがいたの!」
なるほど?えーと、一緒に買い物をしてて、外に猫がいたから追い掛けて店から出てきちゃったのか?
…この辺で買い物って言ったらあそこのスーパーしかねぇと思うんだが。
スーパーまで連れてくか。
「じゃあ、ママを探しに行こうか。」
「おにいちゃん、ママがどこにいるのかしってるの?」
「うん、多分ね。」
そう言って近くのスーパーに向かう。
「美玖ーーーーーー!!!!どこにいるのーー!!美玖ーーーーーー!!」
スーパーの駐車場でこの子のお母さんであろう女性が必死に呼びかけていた。
「ママーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「美玖!!!!どこ行ってたの!!!!心配したんだから!!!!!」
「にゃーおいかけてたの。ごめんなさい!!!」
「もう!!本当に心配したのよ?勝手にどっか行っちゃだめでしょ?」
「うん…。ごめんなさい、ママ。」
俺は声を出せずにいた。
「ん?あなたは?」
「このおにいちゃんがここまでつれてきてくれたの!」
「ありがとうございました!本当にご迷惑を……え、もしかして和人?」
この子のお母さんが美紀だったから。