85 破滅への鍵
3人もすぐに家から出てきた。
ヒカリの無事を確認し、コーラーの手から例の本が離れていることに気がついた。
「イグニス、早くその本を燃やすんだ!!」
スベルは強い口調で急かした。
しかし、すぐ近くにコーラーがいるので、イグニスは躊躇った。
「いいから、早くしなさい!!」
スベルの剣幕に押されて、能力を使ったのだった。
アッと言う間に、その木の本は炎に包まれる。
火の勢いが強いので、ボルヴィーは家に火がうつらないようにと、足ですこし蹴飛ばした。
「うああ・・・あああ・・・」
それを見て、コーラーは断末魔のような声を上げている。
どこからその気力が湧いてくるのか、またも這いつくばったまま本のところまで行こうとしているようだ。
恐ろしいまでの執念であった。
そしてコーラーは本のそばに辿り着くと、炎を諸共せずその上に覆いかぶさったのだった。
「きゃーー!?」
「うわーっ!!」
「おい・・・マジかよ」
その常識を逸脱した行為に、呆然とするしかない。
我に返ったのはリュードだった。
さっきまでコーラーのことを棒で叩き回していたが、このままでは焼死すると判断してすぐに水をかけたのだった。
火が消え、恐る恐るコーラーに近付いてみると呻き声が聞こえてきたのだった。
どうやら一命はとりとめたようだ。
「本はどうなった?」
「あいつの体で隠れて見えないな」
「すぐに確認しよう!」
ヒカリ以外のみんなでコーラーをひっくり返してみると、まだ本はほぼ全形を保ったままだったのだ。
「どういうことだ!?燃えていないぞ!」
「・・・・よ・・こせ」
コーラーは気力を振り絞り、近くにいたイグニスの足を掴もうと手を伸ばす。
イグニスは思わず足蹴にしたのだった。
「とりあえずこいつをどうにかしよう」
コーラーは時間が経つにつれて、火傷の痛みが酷くなっているようだ。
見るからに皮膚が焼けただれて悶絶している。
しかし、今はこの男に構っている場合ではなかった。
こんなにも壊す者がこの本に執着しているということは、これが破滅への鍵であることは間違いないのだ。
もう動けそうな気配は無いが、引きずって遠くに追いやっておく。
気を取り直し、再び本の周りに集まった。
「さっき、確かに燃えていたよな!?」
「ああ、でも途中で邪魔が入ったからな。もう一度やってみたらだどうだ?」
再び勢いよく本は燃え出すが、やはり時間が経っても本はそのままの形を保ったままなのだ。
変化がないので、仕方なく消火した。
ボルヴィーは傍らにかがみ、端の辺りの焦げた部分を指で触った。
指に付いたその黒い焦げを指の腹同士で擦り合わせた。
燃えかすはザラザラとしており、まるで砂のようだった。
「完全な灰にはなっていないようですね」
そう言って、手に付着したものを見せた。
頭を突き合わせて覗き込む。
さっきまで難しい顔で考え込んでいたスベルが口を開いた。
「もしや、それが種ではないのだろうか?すなわち、この本自体が種の塊で作られているのではなかろうか」
「こんな小さな種子がこんなにもあるってことか??」
それにいち早く反応したのはリュードだった。
確かに砂のように小さな種が、大きな本を形作っていたなら、その数は膨大だ。
「でも焼いても燃えないなら一体どうしたらこれを処理できるのですか!?」
「うむ、それなのだが・・・。守る者であるお前たち3人が協力しないと消滅できないようになっているのではないだろうか。まずボルヴィーが発芽させ、イグニスが焼く。そしてリュードが火を消し止める、という具合だ」
「それでやってみよう!」
ボルヴィーが能力を使うと、焦げた本の端から緑の芽が出てきたのであった。
「やった!芽が出たぞ!!」
スベルの予想通りでよろこんだのだが、あっという間に成長するようで、もう蕾が膨らみかけている。
「花が咲く前に早く燃やしたほうがいい」
そう言われて慌てて燃やし、その後リュードがその火を消したのだった。
燃えかすを確認すると、今度こそ粒子のようなものは無くなり、完全に灰になったようだった。
「この方法でいけそうですね!」
解決策がわかったのはいいのだが、問題があった。
「しっかし、さっきとほとんど一緒だな?!」
焦げた四角から芽が出ただけなので、本は驚くほどにさっきと何ら変化はみられないのだった。
「今度はもっと力を込めてみましょう!」
ボルヴィーはそう請け負ったが結果は一緒だった。
今度は力を込めると、先に発芽したものが早く成長してしまうのだ。
だからチマチマと少しづつやっていくしかないのだった。




