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84 壊す者


すぐに外に出て王宮への道を辿りながら、ボルヴィーは種を発芽させ、出た芽をイグニスが焼いて歩いたのだった。

ヒカリは燃え広がらないように、水を持って付いて歩いたのだった。


「大事に至らなくて良かった〜」

廃屋に戻ったみんなは一仕事終えた気でいた。

「さっきの中にそんな人を滅ぼすような種があったのでしょうか?」

ボルヴィーは手応えを感じていないようだ。

「だけど城内には入れないんだから、あれが俺たちに出来る精一杯だぜ」

「それだよね〜」

その種の大きさや数もわからないし、どこで落としたのかも不明だ。

コーラーが別に保管している可能性だってあるのだ。

だからこれ以上は手の施しようがない。

このままここに残り、城内で異変が起きないかしばらく様子を伺うしかないなと話していた時だった。


「バタンッ」

大きな音とともに突然ドアが開いて、コーラーが姿を現したのだった。

()()が見たときよりも更にでっぷりとしており、体調が良くないのかそれとも急いでここに来たせいか、土気色の顔に尋常じゃない汗をかいていた。


コーラーはお目当ての物がテーブルの上にあることを、瞬時に見つけたようだ。

近くにいたヒカリを押しのけ、吸い込まれるように本のところへと歩を進める。

その瞳にはそれしか映っていないようで、まるで何かに取り憑かれているように見えた。


しかし、一足早くイグニスが先に本を掴んだのだった。

本を取り上げた男を見て、それが火の能力者だと気が付いたようだ。

「・・はー・・はー・・やはり・・生き・・・のか」

息も絶え絶えにそう言うと、この場所ことが気になりだしたようで、慌てて部屋の中を見回した。

特に真っ黒の光で顔の見えないスベルの方を食い入るように見て、コーラーはようやくここに能力者が集まっていることを理解したようだ。


すぐそばで固まって動けなくなっていたヒカリとも目が合った。

折角、スベルが黒い光をたくさん出してくれていても、彼の近くにいなければ隠れることは出来ない。

見覚えのある顔だとわかると、下卑た笑いを浮かべた。

すぐにヒカリの腕を掴んで引き寄せると、首にヘッドロックをかけたのだった。

「おい、こいつがどうなってもいいのか?」

片手で髪を引っ張りながら、首をグイグイ締め上げてくる。

「やめろっ!!」

「だったら、それをこっちに寄越せ!!」

イグニスはどうすべきか少し躊躇ったが、ヒカリがとても苦しそうに耐えているのを見て、仕方なくその本を渡した。


ヒカリを押さえているので、コーラーの体調はどんどん良くなっているようだ。

「本を渡したんだから、ヒカリを放せよっ!!」

そんなイグニスの言葉を無視している。

火を出されることを警戒して、ヒカリにヘッドロックをかけたまま引きずるように後ずさりをする。

緑の能力者のボルヴィーは、危機的状況なのに何もできずに悔しがった。

プランに攻撃の方法を教えてもらっていたのだが、その練習はまだしてなかったのだった。

長年能力者だったプランだからこそ、あんな複雑な要求に植物が応えてくれているのが分かったので、徐々にやるつもりをしていたのであった。


そうこういているうちに、コーラーは廃屋の外に出てしまった。

しかしヒカリを手放しそうな気配はない。

このまま本もヒカリも持って行かれてしまうのかと、諦めかけていたときだった。



鈍い音がして、コーラーは膝をつくように倒れこんだのだった。

その背後には火かき棒のような物を持ったリュードが立っていたのだった。

「ヒカリ、こっちへ!」

腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。

「大丈夫だったか?」

「・・・・うん」

ヒカリは救出されて安心したのか、リュードにぎゅっと抱きついたのだった。


リュードはさっきの騒ぎを聞いて扉を開けようとしたのだが、会話からこちらの形勢が悪くなっていることに気がついたのだった。

武器になりそうな物を手にして、窓から外に出て入り口に回り込んできたのであった。

コーラーは頭を押さえながらも、再び立ち上がろうとしていた。

リュードはこの卑怯な男に、容赦なく再びその金属製の棒を何度も振り下ろしたのだった。


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