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83 タネだけでは植物名は言い当てられない


こうして国王との約束を取り付けて、空が白白してきた頃に廃屋に戻ってきたのだった。

緊張感から解放されると、みんなは泥のように眠ったのだった。

日がかなり高くなった頃、起きた者から簡単な食事を取っていた。


「昨夜はあんなに上手くいくとは思わなかったなー!」

イグニスは昨夜の活躍を自画自賛している。

「あんな元気いっぱいの幽霊いないって!!しかも国王を怒鳴ったりして、バレるんじゃないかとヒヤヒヤしたんだからね」

「幽霊よりも生きてる人間のほうが、よっぽど恐ろしいってことですよ」

「そうだよなボルヴィー、上手いこと言うじゃないか」

「まあ、確かにそうなんだけどさー」

あの後、イグニスはちゃっかりウイスキーへの侵攻停止と、自身の名誉挽回の為に、真実を国民の前で話すように約束を取り付けたのだった。

こんなに次から次へと色んなことを言ってくる幽霊の要求を、国王は素直に受け止めたらしい。


みんなが食事を終えても、中々起きてこないリュードのことが心配で、ヒカリは様子を見に行く。

治療とはいえ、キスをしてしまったからか、妙な空気感で少し距離を感じたのだった。


国王の部屋から出ていく際に、バルコニーに移動中している時だった。

怖いもの見たさでこちらの様子をチラリと見た国王は、血で半目が閉じたままのリュードと目が合い、恐ろしさの余り気絶したのだった。

月光の中なので血だとは分からなかったはずなのだが、想像力が掻き立てられたのだろう。

お陰で帰ってくるのも容易に済んだのであった。

水で血を洗い流したら傷はすっかり治っていたが、出血が酷かったのでもう少し休むように言っておく。


「ここであってるか」

「多分、そのようだ」

「ゴトン」

外からそんな声と物音が聞こえてきたのだった。

国王は余程怖かったのだろう。もうお目当ての物が到着したようだ。


イグニスとボルヴィーが確認しに行ってる間に、ヒカリはコッコを呼びに行く。

コッコはスベルと体を共有しているので、すっかり昼夜が逆転してしまっているのだ。


「それ、それ!コーラーのところで見たのは」

「こんな古い本が何だってそんなに大事なんだ??」

イグニスは不審がった。

「この表紙の模様・・・何だか呪いでもかかりそうで不気味さですね」

室内に運んできたボルヴィーはすぐ手を洗い出す。


そんな繊細さとは無縁なイグニスは、テーブルの上に置くと早速、表紙をめくった。

だが中身はなかった。

表紙を開けたら裏表紙の板があるだけなのだ。

しかし、よく見るとそこには何か書いてあるのだった。

「んん?何だこれは?」

「薄っすら文字みたいなものが書いてあるみたいね。スベル何かわかる?」

「はぁ?ハッコ、何言ってんだよ!」

昼間なのでスベルは意識下にいたようだ。

「そっか、今はスベルじゃないのか・・・」

何気なく言ったその言葉でコッコ少年は拗ねてしまい、すぐにスベルが出て来たのだった。

焦っていたとはいえ、コッコを仲間はずれにしてしまったかなと反省したのだが、出現したスベルがその文章をいとも容易く読み上げたので、すぐに頭の隅に行ってしまったのだった。


「これは古代文字だな。『この種を蒔き育てれば、(あし)きは消え去り清き世に戻らん』と書いてある」

「ん??どういうことだ??」

「『悪き』は人間のことを指してるんじゃない。だから前の時に人類はいなくなってしまったんじゃないの?」

「そうであろうな・・・」

スベルは文字をじっと見つめていた。


「では、ここで書かれているその種が芽ぶかなければ、滅びることはないってことでいいのでしょうか?」

「そうだろうな。花か実に猛毒があるのか、あるいは人を死に至らしめる有害な物質を出すのかも知れんな」

「でも種なんて、そんなもんどこにあるんだ?」

「この間に挟まっていたけど、落ちたとか?」

「それは・・・「「「大変だー!!!」」」」

みんなは一斉に立ち上がったのだった。



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