82 おばけは怖い
乱心した火の能力者がエール国を侵略したので、ラガー国がエールを助けて一つの国になったのだと、城下では信じられていたのだった。
そして大罪人は火の能力者で、処刑されたと信じられていた。
「なんで俺ばっかりっ!!!」
イグニスは国の為に力を尽くしたのに、自分だけが悪者になっていることを腹に据えかねていた。
「本当にむかつくぜ。あんな城、全焼させてやる!」
このように情報収拾している間、イグニスの恨みを毎夜聞かされていたのだった。
「だったら逆にそれを利用したらいいんじゃない?」
「どういうことだ?」
「幽霊になって脅してみるとか・・・」
「それは面白いかもな!」
リュードとボルヴィーも食いついてくれた。
「俺、まだ生きてるんだけど!」
「だから死んだと思い込んでるなら、その死んだはずの人が突如現れたらおもしろいことになるんじゃないってことよ」
こうして、城に侵入する方法を考えて今夜の決行に至ったのである。
さすがに王宮内部のことを知っている人はいなかったのだけれども、土着信仰されていた神木を囲うように城が作られたことを知ったのだ。
神木と崇められるような大木があるのなら、後はボルヴィーの能力で何とかなるだろう、と見切り発車でここに来たのだった。
だからイグニスは今こそ恨みを晴らそうと燃えている。
「おい、コラ聞こえてんだろ!!恨めしいって言ってんだから、何とか言ったらどうなんだよー、アアン!」
幽霊とは思えない威勢の良さで怒っている。
バルコニー近くで隠れていたヒカリは、王が目を隠しているのをいいことに、立ち上がって身振り手振りで『もっと幽霊らしくしろ』と指示をだした。
「わ、儂は何も知らん。宰相や軍の総監が勝手にやったことだ!」
「嘘をつくな〜〜!お前が許可したから殺されかけ・・・いや殺されたんだ〜」
「儂は引き止めた、本当だっっ」
「そうか。お前が引き止めたから、俺の腕を切り落としたのか〜?」
「ヒーッ、ヒーッ」
否定しないことは、認めていることと同じである。
「でも逃げられたから、用済みだと見限ったんだな!」
「わ、わ、儂はあの場に居なかった!本当に知らんのだ」
国王がそこにいなかったことはイグニスも覚えていた。
もしエール国の残党に保護されでもしたら、一大事だから殺そうとしたのだろう。
「だったらどうして俺だけを悪者にしたんだ!!戦争をはじめたのはお前だろう」
「わからん・・・気がついたらそうなっていたのだ」
『能力者を戦犯にしておけば統治しやすい』と利用したことを、国王はとぼけたのだった。
イグニスは暴言を吐きそうになるのを抑えて、代わりに炎を大きく出した。
顔を隠していた王も、その熱を感じて堪らずに手を外した。
そこにはビチョ濡れの男が、鬼の形相で炎を出しているのだ!
「ヒィーーーーー、許してくれー。あ、あいつらが勝手にそんな噂を流したのだ!」
「そうかそんなに火だるまになりたいのか」
「わわ、わ、悪かった。儂も悪かった!!」
この状況下でも他の者を道連れにしようとしていた。
次々に臣下の名前をあげていく。
まるで数多く言えば自身の罪が軽くなるとでも思っているようであった。
こんな奴に褒められて、いい気になって、どれだけ非道な行いをしてしまったのだろうとイグニスは己を悔いた。
「・・・あとはコーラー男爵もだ!」
国王の口からその名前が出てきて、みんな固唾を呑んだ。
ここに来た真の目的は、コーラーが大事に持っている木が表紙の本を探し出すことだからだ。
「コーラーがどうした〜?」
幽霊が反応したので、国王は必死で記憶を辿ったのだった。
「そうだ! そもそもあいつが能力者を利用すれば良いと言い出したのだ。
お前、いやそなたを儂のところへ連れて来たのもあの男ではないか!!恨むならあの男が先だろう」
再びイグニスを怒らせてしまい、王の目前に炎が迫った。
イグニスはとても太った男が国王に引き会わせたことを思い出した。
あの男がコーラーだったのだろう。
残念ながらその顔までは覚えていなかった。
「その男が俺の大事な物を持って行ったのだ〜。だから俺は城の中をウロウロしているのだ〜」
「そ、そ、それは何だ?それを見つけたら消えてくれるのか?」
「そうだ〜。大きな木片のような本を探しているのだ〜」
国王はそんな物を見たことがなかったが、必ず探し出すと約束をした。
「それを見つけたら、旧街道沿いにある大きな廃屋の前に置いておけ〜。お前に2日間やろう。持ってこなかったら今度こそ、お前諸共この城は火の海になると思え〜」
「わ、わかった、わかったーっ」
国王は悲鳴にも近い声を上げたのだった。




