78 あちらの事情
久しぶりにベッドで横になったヒカリは、すぐに眠りについた。
その夜、こちらも久しぶりに彼女と会えたのだった。
「「おおー、久しぶり〜」」
色んなことがあり過ぎて、もうずっと会ってないように感じられた。
「ごめーん、今日は何も持ってない」
「気にしないで、もしかして寝る時にはいつも何か準備してくれてたの?」
「うん。でも会えないものだから、だんだんと忘れていちゃってねー」と彼女は笑った。
「いつもの近況報告しよっか」
私たちは体に触れ合うと、お互いの体験したことを共有できる便利な機能がある。
「その前に・・・その子誰なの?」
「えっ?!」
なぜか傍に『コッコ』がいたのだった。
「んな、なんでここにいるのよ!?」
「成人したそなたにどうしても会いたいと、少年にせがまれたのだ」
「じゃあなんでここにいるのが『スベル』なのよ!」
「本人は眠っているのだ。後で起こしてやってくれないか?」
そう頼まれたのだった。
コッコを呼び出す前に彼女と手を繋いだ。
「結婚するんだ!本当におめでとう!!」
彼女は同じ会社の山口さんと順調に愛を育んでいたのだった。
久しぶりに会った両親はとても喜んでくれていた。
親にはいつまで経っても結婚報告できない後ろめたさと、妹夫婦への劣等感から居場所をだんだんと見失っていたのだった。
その内、たった数日の帰省すら煩わしくなり、言われたくないことを聞きたくないが為に電話もせず、母からの連絡にも必要なことだけしか話さなくなっていたのだった。
幼い頃に両親を亡くしている彼女は、私とは違い両親をとても大切に思ってくれていた。
「騙している罪悪感で、心が押しつぶされそうよ」
そう言ってはいるが、プレゼントを贈ったり、まめに連絡もしてくれていた。
「私よりも全然、全然、良い娘だよ」
涙が止まらなかった。
こんなことになるのなら、もっと親孝行しておけば良かった。
『後悔先に立たず』
私はもう何があってもそこに帰れないし、帰る場所を無くしたのだ。
「最初にこうやって手を繋いだ時に、あなたの生きてきた人生が本当に羨ましくって幸せで泣いてしまったの・・・だからあなたのことを大事に育ててくれたご両親のことは大切にすると約束するわ」
彼女はヒカリの気持ちを慮ってくれたのだろう。
「よろしく・・お願い・・・します」涙で声が詰まった。
彼女と私は抱き合い気が済むまで泣いたのだった。
「おーい、まだなのか・・・」
スベルの呆れたような一言で、二人はこちら側の出来事について話し始めた。
「そっちは大変なことになってるじゃない。あのコーラーが元凶だったのね」
「何が何でもあいつを見つけて、世界を救わないと!!」
そっちに居場所がなくなった以上、こちらの世界で生きていくしかないのだ。
とてもじゃないけど、山口さんと一緒に生活はできない。
いい人だとは思うけど、やはり好きではないからだ。
どうせ一緒に暮らすならリュードみたいな人がいいな〜。
苦労人だからか我慢強いし、とにかく優しいもん。
若い頃ならマザコンだと一蹴するところだが、あのお母さん想いなところも結構好きだな。
でもまあ、いくらなんでも厚かましいか・・・20コぐらい違うもんな〜。
「で、これがあの黒崎くんなのね」
コッコの話題になったので、ヒカリは彼を起こしたのだった。
そして「これが今の私なのよ」と彼女を紹介したのだった。
彼女が手を差し出したので、二人は握手をした。
コッコは大人になった私の姿を見てもリアクションもなく、特に何も言わなかったのだった。
本当に大人になった私に会いたがっていたのか、疑わしいものだ。
それとも口を開いたら、余計なことを言ってしまいそうで黙っているのかも知れない。
彼女の手前『ほら、年取ったでしょー』なんて自虐も言えないし、ヒカリもほとほと困っていた。
「彼女もうすぐ、結婚するんだって」
口から出た言葉はそれだった。
「おめでとうございます」
コッコ少年は、それはそれは小さい声でそう言ったのだった。
「どうしたの?緊張してるの?」
様子のおかしいコッコにそう尋ねた。
「少年は強制的に私が眠らせた。この出来事は夢だと思っているだろう」
コッコはまだ眠たかったのか、急にスベルに替わっていたのであった。
この日を境に、コッコは元気がなくなったのだが、ヒカリは自分のことに気を取られていて、そのことに気がつかなかったのだった。
すっかり更新が遅くなってしまいました。




