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77 創る者


船は、ウィスキー国の港に寄港してもらえることになった。


チャーコブ王室の印を見せれば、友好関係なウィスキー国では好待遇で迎えてもらえただろう。

しかし詳しく説明できない以上(話しても信じてもらえないだろう)ここは素通りするしかない。


仕方なく地続きでビール帝国に向かっている。

5人は旅人を装い、乗合馬車で国境付近まで行き、戦争地帯を避けて山側からビール帝国の領地に入った。


地の利に詳しくないのに、どうしてこんなにスムーズにビール帝国に入れたかと言うと、出たんである!

イグニスが話していた熊のような狼のような、白のデカもふもふがっ!

最初は遠巻きにこっちと距離を取っていたのだが、イグニスがゆっくりと近寄って行くと彼には心を許しているようで、野生とは思えないほどにワシワシ触られても平気そうにしているのだ!と言うか、むしろ嬉しそうにしていたのだった。

そのデカもふが道案内をしてくれたのだ。

それだけじゃなく、彼が話していた通りに野宿をしていたら色んな動物が、食べ物やら枝やらを持ってきてくれるのだった。


「火は動物たちにとって脅威であるから、火の能力者のことを崇めているのではないか」

『統べる者』の見解に、みんなは納得したのだった。


イグニスのお陰でヒカリもデカもふもふに触ることができた。

最初は嫌がっていたが、白の能力は動物にも効いているようで、その内には進んで近づいて来るまでになったのだった。


こうして動物たちの協力もあって、ビール帝国の町まで来られた。

今日は久しぶりに宿屋に泊まっている。


しかも1階には食堂が併設されているので、久しぶりに美味しい食事にありつけた。

「あんたたちどこから来たんだい?」

「ウイスキーからです」

「まあ〜、この国から逃げ出す人が多いのに、なんでまたこっちに来たの?」

「色々と事情がありまして・・・」

子供のコッコがいてくれることは中々に良いカモフラージュになる。

女将さんもそれ以上は詳しく詮索してこなかった。


「そんなに逃げ出す人が多いんですか?」

「そりゃそうよ。ウイスキー国は大きな国でしょう。

勝てるわけがないって見切りをつけて逃げる人が多いのよ。

男たちも兵隊に取られて行っちゃって、こんな田舎もすっかり治安が悪くなってしまってね」

「そうなんですね」

「王様もどうしちゃったんだかね〜、そんなに領土を広げてたってしょうがないのにね・・・以前までとは人が変わってしまったみたいに戦争ばっかりで、嫌になっちまうよ」

女将さんはここだけの話だよと口止めをした。


部屋に戻りみんなでこの先の相談をする。

「やっぱり、コーラーが来てからこの国は変わってしまったようだね」

コーラーは国王の近くにいるはずだと踏んで、ここから王都のホップを目指す。

イグニスはあの不思議なデカ白モフに「王都まで道案内してくれるか?」と頼んでいたが、どこまで理解しているかは謎だ。

宿屋には連れ込めないので、今日はその辺で休んでいるはずだ。


ビール帝国内にはイグニスの顔を知っている人もいるので、慎重に進まなくてはいけない。

「でもこの国で俺は処刑されたことになってるだろ。まだ生きてるなんて思ってる奴、いねーんじゃないか?」

「そうだが、用心を重ねておいたほうがいいだろう」

『正体を明かすのは、王都で』と決めてある。

死んだと流布されている能力者が現れれば、もう一度利用してやろうとあちらから捕まえに来てくれるだろう。


「王都に着くまでには手を完治させたいな〜」

「それに何か意味があるのか?」

リュードが不思議そうに理由を訊いてきた。

「死んだと思われている人が、体を再生させてまた現れるって、めちゃくちゃ怖くない!? イグニスを酷い目にあわせたんだがら、思いっきりビビらせてやりたいのよ!!」

リュードとボルヴィーは何だそんなことかと、苦笑いを浮かべた。


「ヒカリ!ありがとう!」

イグニスはその言葉に感激してヒカリに抱きついた。

「でも間に合うか?」

指の部分は本当に戻りが悪く、イグニスが心配する気持ちも分かる。

「どうしても無理そうだったら、最終奥義を出す!」

「おっ、何だよそれ!かっこよさそうだな!」

「ヒカリ、それはダメだ!」

リュードはヒカリを自分の方へと引き寄せた。

きっとそれはプランにしたようなこと(舌を這わせる行為)もしくはそれ以上の行為だと、すぐに気がついたからだ。



『統べる者』が話していたことを思い出す。

『守る者』の3人は『創る者』に必ず好意を持つようになっているそうだ。

それは逆にも言えることらしい。

『創る者』であるヒカリも、3人のうちの誰でも受け入れられるように好意を抱くそうだ。

そして白だけが同じ体でいることも、あの体は子供を産むことに適しているからで、治療の能力も子孫を守るために備わっているのだそうだ。

「治癒の能力は、本人の生命力を分け与えているに過ぎない。

体は老けないから分かりにくいが、中身は疲弊し消耗していくのだ」


この話を聞いて、リュードは愕然としたのだ。

そして気安く、治療を頼んでいたこと後悔したのだった。


「以前の能力者に比べて、ヒカリはそんなにまだ力を使っていないだろう・・・

そう案ずることはない」

リュードが落ち込んだので、スベルは慰めたのだった。

しかし本人の生命力がどのぐらいなのかは、全くの未知数なので力は使わないに越したことはない。


スベルもヒカリの体を心配していた。

「それならば、その腕だけ過去に戻してやろう!」

こうしてスベルの能力によって、イグニスの手はアッという間に元どおりになったのだった。


「ちょっと〜・・・今までの私の努力は何だったのよ!!!」とヒカリは拗ねた。


リュードは力を使ってくれたスベルにお礼を言った。

ヒカリを想う気持ちは、自身が『守る者』だからの一言で片付けられるものでは絶対にないと断言できる。

しかし『創る者』と『守る者』の関係性を知ってしまった今、ヒカリの気持ちを知ることは益々怖くなってしまったのであった。


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