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69 悪知恵の働く人は機転が利く


『さっき揉めたおじさんとの相部屋は嫌だな〜』と思っていたが、おじさんはさっきとは打って変わって、とても静かにしている。


「彼女は誰かと似ているのですか?コーラーがどうとか聞こえましたが、それは誰なんですか?」

リュードが居場所を聞き出そうとしてくれたのだが、相手は気まずそうな顔をして、会釈を一つ寄越しただけだった。

ボルヴィーの対応が良かったようで、チャーコブの王室の人間だと認識させられたようだ。

優秀な従者が付いていることは、社会的地位の高さを示すことになるらしい。

彼は長年、水伯爵の家に勤めていただけあって、こういった駆け引きは得意なようだ。

おじさんはボルヴィーのことをかなり警戒しているようなのである。


おじさんとその従者は『何も聞かないでくれ』とばかりに、早々とベッドに横になってしまった。

こちらは「雨がすごいなー」とか、当たり障りのない話をしていたのだが、会話を聞かれることを警戒して、休むことにした。

避難用に燭台の明かりは付けたままにしておくことにした。

風雨の音がすごくて、この建物は大丈夫だろうかと心配でなかなか眠れなかった。

その音にも、慣れてきたようで、いつの間にやらヒカリは眠りについたのだった。



強い力が体にかかってヒカリは目が覚めた!

一体、何が起こっているのか判断ができない。

口に何かを詰められているようで「うーうー」と呻き声しか出せない。

おじさんの従者が両手を動かせないように抑えていたのだった!

誰かに気付いてもらおうと足をバタバタ動かすが、残念ながら雨音にかき消されてしまい、すぐそばで仲間が寝ているというのに誰も起きてはくれない。

おじさんはものすごい力で両足を掴んで、脚を開かせようとしていた。

ヒカリは『助けて!』と言わんばかりに、従者に涙目で訴えた。

彼は居た堪れなさそうに、顔を背ける。

そうこうしている間に、おじさんがアレを出しているのが見えた。

さらに抵抗してみるが、誰かに見つかる前に早く終わらせようとしたのか、お腹に強烈なパンチを打ち込まれたのだった。

ヒカリの動きが鈍くなってしまう・・・

・・・ああ、もうだめだ・・・そう観念したときだった



「愚かな」

そんな声と共に、誰かが扉を開けて入ってきたような気がしたのだった・・・



次の瞬間!!

ヒカリは我が身に何が起こったのか益々わからなくなっていた。

さっきまで横になっていたのに、なぜか立っているのだ!

着衣は乱れていないし、お腹の鈍痛もない。

しかも、先ほどまでのロウソクの頼りない灯りとは違い、ここはまだ明るい。

襲ってきた忌々しいじじいが「そんな物を持っているのに、どうしてここの宿代も払えんのだ!」とボルヴィーに文句を言っているのだ。


ヒカリは起きているみんなの顔を見て、安堵する。

どういう訳か、先ほどの危機を脱することができたらしい・・・

「こちらにも諸事情があるのです。こちらの素性を知ったのですから、そちらも名乗ればどうなのですか?」

そうボルヴィーが言い返していた。


ん?これってお昼にしていた会話だ。

旗色が悪くなったじじいは、こちらの宿代を払うって言ってくれて、『タダで泊まれる〜』と喜んで、その案に乗っちゃったんだよね。

この時からヒカリを襲うつもりをしていたのかと考えると、全歯が抜けるまで横っ面を引っ叩いてやりたくなる。


「まあまあ〜、このようなところでそのような話は・・・・・

そうだ!そちらの宿代を肩代わりさせてもらいますので、ここは一つ穏便に済ませてはいただけませんか?」

「ぜーったい済ませません!!!!」

ヒカリは大声で否定し、じじいを指差した。

「お前の顔はしかとこの目に焼き付けたぞっ。

さっき襲おうとしたことは、絶対に許さないからなっっ!!」


ヒカリがすごい剣幕で怒鳴ったので、その場にいた人全員が唖然としていた・・・


「何を!!お、襲うだなどと言いがかりもたいがいにしろ!」

「そうするつもりがあったから、急に宿代を出すなんて言い出したんでしょーが」

みんなはヒカリが急におかしなことを言い出したことに、どう対処すればいいのか戸惑っていた。


宿の店主も客同士の争いごとに、わざわざ首を突っ込みたくはない。

いつの間にやら村の子供がここにやって来ていたことに、気がついた。

「あれ?スーちゃん。来てたのか?」

「うん、母さんが『部屋が足りなかったら、こっちにも泊まってもらって下さい』って言ってる」

ヒカリはすぐ側で声がしたので、驚いたのだった。

しかもその少年とヒカリは、どういう訳か手を繋いでいるのだ。

繋いだその手をお腹の辺りまで振り上げて、ヒカリは声の主の方へ視線を向け、目が離せなくなった。


「「うわっ」」

リュードとイグニスが小さく声を上げ、ボルヴィーも体をビクッとさせていた。

それは少年が黒い靄のように包まれていたからであった。


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