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67 海の広さには圧倒される


船は大海原を進んでいた。

チャーコブの港町から船に乗り込んで、一路ドーリンク大陸を目指しているのだ。


国王は約束をきちんと守ってくれ、コーラーの居場所を調べてくれた。

チャーコブの大貴族が病気を治してもらいに、そこへ行ったことがあったそうだ。

しかし、元気になって帰って来たのだが、喜び勇んで乗馬を楽しんでいたら、落馬して運悪くぽっくり亡くなってしまったそうなのだ。

遺産を相続することになって、莫大な治療代を出していたことが分かり、怒った息子は、その治療を引きとめなかった執事のことをすぐにクビにしたらしい。

だから詳しく、コーラーのことを知る者が誰もいなかったのだった。


でも同行した者の話を総合してみると、ドーリンク大陸のリポディーかコロナミンのどちらかの国なのではないかということになったのだ。


本当なら、この大陸の端まで馬車で行ってから、船に乗ると近いらしい。

しかしビール帝国の国内では、あちこちでまだ紛争が続いており、特に元エール地域を中心に治安が悪いそうだ。

それに、ビール帝国の者にイグニスが見つかってしまう心配もあって、船旅に落ち着いたのだった。


「これが全部水なのか?!」

「うわーっ、スゲーーな!!」

「これは壮観ですね!」

ヒカリ以外の3人は海を見るのは初めてのようで、みんな興奮していた。


イグニスの治療は順調に進んでいて、もう掌の辺りまで再生していた。

時間をかければ、粘膜接触をしなくてもかなりの治療ができることが分かったのだった。

この調子でいけばドーリンクに着く頃には元どおりそうだ。


リュードはプランと離れて少し落ち込んでいるようだったが(本人は絶対に認めないだろうけど・・・)海を見て、少しは気が晴れたようだった。

プランはシーラさんとの暮らしを手に入れて、今頃楽しくやっていることだろう。

まあ、その内に義両親が来て、ラブラブ生活にも邪魔が入るのだろうけど・・・

プランは能力を手放すことができて、やれやれとホッとしているようだった。


その能力を受け取った側のボルヴィーは不機嫌だ。

プランに能力の使い方を習っているときは楽しそうだったのに、いざ4人での旅が始まると始終ブスッとしているのだ。

リュードとイグニスはあまり気にならないというか、気づいていないのかもしれないが、ヒカリはとても気になっていた。


自意識過剰かもしれないが、自分に対して特にそっけないように思えた。

やはりあのタイミングで()()のことを話したのが良くなかったのだろう・・・彼に変なプレッシャーを与えてしまったようだ。

あわよくば、彼にも付いて来てもらえたら心強いと思っていたことは認める。

でもそれは能力者じゃなくても協力してもらいたかったからなのだ。

あの時はまだ、ボルヴィーも能力者になるかどうかを決めかねているようだったので、『()()()()()は気にしないで』と、わざわざ言いに行ったのだ。


それにヒカリ的にはどちらかと言えば、プランに能力者のままでいて欲しかったのだ。

プランは能力者としての経験も長いし、決断力もあるのでとても頼りになる。

彼が指標で居てくれるから、みんなは安心して彼について行ってたところもある。

今こうして旅をしていても、プランが居ないことは心の支えがいなくったようで、頼りなく感じてしまう。


「風が強いな〜!」

ふとリュードが話しかけてきた。

「心配しなくても、コーラーは有名人なんだから、ドーリンクに着いたらきっとすぐに見つかるよ」

ヒカリが考え事をしていたので、そちらのことで思い悩んでいると勘違いしたようだ。

「ああ、うん・・・それより、ボルヴィーのことなんだけど・・・」


ヒカリが話している途中に、周りがガヤガヤし始めた。

「こりゃ、そうに違いねぇ〜」

「だな」

「すぐに、船長に報告してくる!」

片方の男が足速に立ち去ったので、残った男に「何かあったんですか?」と聞いてみる。

「この風は嵐の予兆に違いねえ!!だからここから近い港に避難しねーとな」

「?!」

「そのうちに雨も降り出すだろうから、早く船内に入ってくれ」


そんなやりとりをした数時間後

船は近くの島に寄港し、乗船していた人たちは嵐が過ぎ去るまで島に滞在することになったのだった。


「こんなに晴れているのに、本当に嵐なんか来るのか?」

イグニスは納得できないようだ。

客として乗り込んでいた人たちも、降ろされて不満タラタラで船員に文句を言っている。

「確かに風が強いよね。そのうち、雨も強く降ってくるだろうから、早く宿をとりましょう」

見渡した感じ、()()()そうな島には、似合わない大きな船がもう一隻、停泊している。

沖にもここに避難してきそうな船が、向かってきていた。

早くどこか建物の中に入って安全を確保したほうが良さそうだった。


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