64 味方は多いほうがいい
良い機会なのでお互いに秘密にしていることが無いかを確認しあった。
「・・・という訳で、伯爵家であったことは、母には何も話していないんだ。あそこにいた期間は、何不自由なく幸せに暮らしていたと思っている」
リュードはそう打ち明けたのだった。
ヒカリが倒れたフリをしてまで口止めしてきた理由が、ボルヴィーにはやっと分かったのだった。
「そうでしたか。私の方こそ、今まで素質のある者だと黙っていてすいませんでした」
祖父の言いつけを守っていたが、リュードが能力者になり酷使される姿を見るのは、ずっと辛かった。
「ボルヴィー、顔を上げてくれ。もういいんだ。
伯爵家も国から搾取される側だったから同情すべきところもあったと判った。
それにプランが仕返しをして、全てを解決してくれたから、これで良かったんだよ」
ボルヴィーが素質のある者だとわかった時は『なぜ言ってくれなかったんだ!』と頭に血が上ったのは確かだ。
しかし、落ち着いてくると、まだ自分が能力を継いで良かったのかも知れないと思えるようになっていた。
もし彼が能力を継いでいたなら、今もずっとあの家で飼い殺しになっていたことだろう。彼の家には伯爵家とのしがらみもあるので、拒否権はないだろう。
伯爵も使用人という立場の彼に『実家の取り潰し』をちらつかせれば、簡単に操ることができるわけだ。
「俺はあの家とは無関係だけど、ボルヴィーはそういう訳にはいかないだろう。
今はこうして自由になれたのだから、気にすることはないよ」
「ありがとうございます」
「それよりも、緑の能力はどうするの?」
プランはシーラと一緒に過ごしているので、ここにはいなかった。
だからこそリュードは彼の気持ちを聞こうとしたのだ。
ボルヴィーが答えるよりも早く、イグニスが口を開いた。
「ここにいる3人は能力者だって知ってるんだし、お前もなればいいじゃないか。
事情を知ってるやつがなってくれるほうが、俺たちも心強い!」
彼は軽食を取りながら、ヒカリに治療をしてもらっている。
「それはそうよね」とヒカリも同意した。
秘密を知っている人が、秘密を持つ側になってくれるほうがリスクを軽減できるからだ。
「能力者になったとしても、何も目的がない」
プランへの憧れはある。
それに彼のお眼鏡に適ったことも嬉しい。
名指しで能力を継いでほしいと言われ、舞い上がってはいるが、この先の目標がなかった。プランとシーラの従者としてこの国にいるほうが、自身には向いているように思えたのだった。
「それなんだけど・・・聞いてほしい話があるの」
ヒカリは、彼女のことを話そうとする。
「大丈夫か?俺から話してもいいんだぞ」
リュードが気遣ってくれたが、ヒカリはきちんと自分の口から、コーラーとの経緯を話したのだった。
「お前もそんな大変な目にあっていたんだな・・・あ〜くそっ、何なんだよ、そいつらは!!胸くそワリーな」
イグニスは彼女の境遇にとても同情してくれたようで、罵詈雑言を吐き続けていた。
それに対しボルヴィーは黙って何か考え込んでいたのだった。
結局、ボルヴィーは一言も発することなく、用意してもらった部屋に引き上げてしまったのだった。
「なんだよ・・・あいつ。こんな嫌な話を聞いても何も感じないのか!?」
イグニスは彼が出て行くなり悪態をついた。
「彼も彼で、急に能力者にならないかと誘われた矢先に、彼女の話を聞いて思うところがあったんじゃない」
プランさんが能力者を辞めて、シーラさんとこの国に留まるつもりをしているなら、コーラー捜しを手伝ってくれるのはリュードだけになる。
ヒカリとしては、イグニスもこちら側に引き入れておきたかった。
「イグニスも手伝ってくれる?」
「当たり前だろう!任せとけ。そんなヤツの屋敷、秒で全焼させてやるぜ!」
何だか必要以上に焚き付けてしまったようだが、ヒカリは仲間が増えて嬉しかったのだった。




