60 暗闇は不安
シーラは6人兄妹の末っ子で第4王女である。
女、男ちょっと開いてから女、女、男。
大分と開いて最後にシーラが生まれた。
出産は王妃の体への負担が大きいのではないかと反対の声もあったが、彼女は決して諦めなかった。
出産後、母子共に健康だと分かると、みんなは安堵し、新しい家族を最大の喜びで迎えたのだった。
それを見届けるように、第一子の王女はすぐに他国へ嫁いで行ったのだった。彼女とシーラとでは17才も年齢差があったのだ。
そんな経緯があってか両親をはじめ、姉兄達も一番下の妹のことをそれはそれは可愛がった。
だからシーラが好き勝手に王宮内で遊んでいても、誰にも咎められることもなく、自由にすくすくと大きくなったのだった。
その行動が段々と目に余るものになっていても、大目に見てもらえていた要因は、第2と第3王女の婚約が立て続けに決まったことにあった。
国王は次々といなくなってしまう娘達を、とても寂しく感じていた。
だからついつい、末娘のシーラには甘々になっていたのだった。
「どうせ、今しか居られないのなら好きにさせてやってくれ」
国王はいつもそう言っていたし、王妃も同感だったので多少のことは目をつぶっていたのであった。
だが、シーラはそんな二人を真っ青させる、とんでも無いことを仕出かしてしまうのであった。
シーラが言葉を話すようになった頃、長兄は花嫁を迎えいれたのだった。
結婚後、すぐに男の子が続けて生まれたので、王宮は更に賑やかになったのだった。
年上ばかりに囲まれていたシーラは、自身より小さい甥っ子達のお姉さん気取りであった。
二人も王宮内の遊びのパイオニアであるシーラに、大層懐いていた。
そんなある日、甥っ子達にこんなお願いをされたのだった。
「僕、冒険してみたいの!」
「いのっ!」
就寝前に読み聞かせてもらっていたお話に夢中だった二人は、自分たちも物語の主人公になってみたくなったのだった。
実はシーラにはとっておきの場所があったのだった。
王宮の一番端っこの部屋の暖炉の下に、隠し階段を見つけていたのだった。
喜び勇んで階段を降りたのだが、そこは真っ暗だったので、さすがのシーラも怖くなって探索を諦めていたのだ。
頼りないちびっことはいえ誰かと一緒なら、暗闇の怖さも軽減されるだろうし、何より自身もあそこに何があるのかずっと気になっていたのであった。
松明を調達し、付き添いの侍女を扉の外に追いやって、3人は冒険に出たのであった。
そこは緊急時の脱出用の避難通路で、城下にある無人の民家と繋がっていたのだった。
暗闇の中、3人は塊になって恐る恐る進んでいたのだが、地上に登る階段を見つけたときは通路に響き渡るような大歓声を上げたのだった。
王宮の外に初めて出た3人は嬉しさのあまり、露店の物を勝手に取ったり、食べたりしてしまった。
世間知らずなお子様達は、物の売買にお金が必要なことも知らなかったのだった。
店主に怒られても、シーラは気に入って手に取った物を決して離さなかったし、謝りもしなかったのだった。
王宮のお子様達にとって、目の前にある物=自分のものという感覚でしかなかった。
触ろうが壊そうが、誰にも咎められたことなど無いから、きょとんとしていたのだった。
しかし店主からすれば、そんな太々しい子供の態度に益々腹を立て、シーラは平手打ちをされたのだった。
シーラが倒れるときに、甥っ子も一緒に巻き込まれて転倒してしまったのだった。
その時に、ちょうど城の者が異変に気が付いて捜しにきてくれたので、3人は無事に保護されたのだった。
叩かれたシーラは顔が赤くなっただけだったのだが、煽りをうけた甥っ子は地面に頭をぶつけてしまったのだった。
幸いにも打ち所が良かったようで大事には至らなかったのだが、兄嫁である時期王妃からは非難の嵐を受けたのだった。
もともと彼女はチャーコブより格上の古参のチャー国出身であったので、皆は慇懃かつ丁重に接していたのだった。
彼女は自尊心も気品も高かったので、一国の王女であるシーラの自由奔放ぶりにはいつも眉をひそめていたのであった。
『このままでは、自分の息子達にも悪影響を及ぼすから、何とかして下さいませ。状況が改善されないなら離縁も考えますわ』
そう涙ながらに訴えられては、兄も国王たちもシーラを庇いきれなくなってしまったのであった。
こうしてシーラは離宮に住まうことになったのだった。




