58 娘は父親が自分に甘いことを知っている
プランは覚悟を決め「そうだよ」と認めたのだった。
「シーラ、黙っていてすまなかった。
すっかり人間不信になってしまった僕は、もう人と関わることを避けて生きていたんだ。
それは心穏やかに過ごすことはできたけど、人と話さない生活は、余りにも孤独だったんだ。
そんなときに君に出会えた。
久しぶりに会話を交わした人は『花が咲いた』と、無邪気に喜んでいた。
その姿に僕は心を奪われてしまったんだ。
けれどもこの国の王女だとわかって、『やはり人と関わってはいけなかったのだ』と君を裏切ってしまったんだ・・・本当にごめん」
「あの、そちらではなくて・・・能力者って本当なんですの?」
「えっ! あー、そっち!?」
シーラが深く傷ついているに違いないと、言葉を慎重に選びながら弁明していたのに、気になったていたのはそちらではなかったようだ。
「僕は緑、植物の能力者だよ」
「まあ、まあーー!!!」とシーラは破顔一笑した。
「能力者って本当にいたのですねっ!!一体、どんなことができるのかしら?
ちょっと、今やって見せてくださらない?」
シーラさんは時と場所も考えず強請った。
「シーラ!!いい加減になさい!」
そう一喝したのは上王妃であった。
「それよりまず、私にもあなたの大事な人と、かわいい孫を紹介して下さらない」
そう割って入り、ニコニコしながらプランとリュードの顔を代わる代わる見たのだった。
母シーラの話から、両親から邪魔者扱いにされていたのだと思っていたのだが、祖母と呼ぶべきその人は、愛おしそうにこちらを見つめてくるのであった。
「はじめまして、リュードです」
「あなたに会える日をどれほど待ち望んでいたでしょう!」
そう言って、涙を流して喜んでくれているのである。
どういうことだ?と母を見た。
「ねっ、いい子でしょう!
顔もそれに気立ても良いのよ。
それに脚も腕も指も長いし、足の指もスラっと長いのよ。髪だって私に似てクセひとつないの。おへその形だってね・・・」
感涙している王妃の横で息子自慢をぶっ放しているのである。
「ちょっと母さん!止めてよ、恥ずかしい」
「どうして止めなきゃいけないの!
身内にリュードの長所を自慢して何が悪いの!今まで出来なかった分を取り返さないと、あなたの良さが伝わらないでしょう。・・・・・ふふ、わかってるのよ。本当のことを言われて照れているんでしょう。
そんな奥ゆかしいところもリュードの良いところよね〜。ほらね?私の息子はこんなにも素敵なのよ!!」
シーラの暴走に上王、プラン、リュードは苦笑いするしかない。
上王妃もこのまま感動に浸っていたら、シーラのペースだと顔を上げた。
「プランさん、リュード、あなた方をこのチャーコブに迎え入れられて本当に嬉しく思います」
上王を差し置いて、上王妃がそう宣言した。
これはシーラの家族として、二人を認めるということだ。
国王が不満も露に文句を言おうするよりも先に、シーラは父に駆け寄り、その手を取った。
「ありがとうございます、父上、母上」
「おー、おう」
娘に手を握られ、上王は嬉しくてつい頷いてしまった。
そのまま、目を潤ませて父親を見つめる。
「先ほどの殴るも嘘ですよね?ね、父上?」
シーラは力技でさっきの発言をとり消そうとしていた。
たとえいくつになったとて、娘の可愛さは特別なようだ。
ヘソを曲げてまたどこかに行かれては困ると、上王は渋々プランを婿として受け入れるしかなくなってしまったのだった。
こうして、シーラは見事な一本を決めたのであった。




