57 お父さんはツラいよ
「王妃とシーラが来るまでに話しておきたいことがある」
上王はじっとプランを見据えた。
「そちも能力者なのだな?」
「!!!」
プランは驚き、リュードとヒカリは少し身構えた。
どうやらこの国に能力者の光を見える者がいたらしい。
その見える者に急遽ここに来てもらい、本当に火の能力者なのかを確認させたらしい。
「そうしたら、そなたが光っていると言うのだ!
しかも火の赤ではなく緑だと言うので、こちらは益々訳が分からなくなってしまったのだ・・・一体どうなっておるのだ?」
『素質のある者』がいるのなら、言い逃れはできそうもなかった。
「仰る通り、僕は緑の能力者です。そしてこのイグニスも火の能力者なのは先ほど見ていただいたとおりです。光というは大きい人もいれば小さい人もいるんです」
リュードとヒカリのことまで知られてはいけないと『わざと小さくしていること』は黙っておくことにした。
「シーラは能力のことを知っておるのか?」
「いいえ」と首を振りながら、どう説明すればシーラとのことを許してもらえるだろうかとプランは考えていた。
「そうか・・・シーラがこの国の王女だと知って逃げ出したのか!!!」
「はい、そうです。僕たち能力者が一番警戒しないといけないことは、強欲な権力者に捕まることなのです」
「貴様っ!!」
そんな奴らと一緒にしないでくれとばかりに、上王は立ち上がった。
「僕が知ってる権力者達は、どいつもこいつも能力者を利用することしか考えていませんでした。
ですから、あなたの能力者への見解には驚いた次第なのです。
そのように考えて下さる方がいらして僕は本当に感服したのです。
世の中、あなたのような方がたくさんいたなら、僕たち能力者が次々と悲惨な目に遭うこともないのでしょうね・・・」
プランがそれは物悲しそうに呟いたので、上王は席に着き、彼の事情に耳を傾けた。
それは無論、アクーア国王にも話して聞かせたものだった。
王宮の人間を木に埋め込んだというオチは、さすがに端折っていたが・・・
「それは・・・・ドーリンク大陸の伝説の話ではないのか?
その昔、乳母から聞いたことがあるぞ。一晩で国が滅んだという話ではないか!」
国王は昔を懐かしんだ。
乳母は物知りで、色んな国の神話や説話を話して聞かせてくれたものだった。
「その、のーりょくさって本当にいるの?」
「さあー、残念ながら私も見たことがありませんわ。
これはきっと、とても秀でた人間には注意しなさいという戒めではないでしょうか。そういう人は『諸刃の剣』になるということですね」
彼女の影響力もあって、能力者に対して慎重な姿勢を取っていたのかもしれないと、上王は考えていた。
「僕もその伝説と同じように、何十年と奴隷のように働かされ続けたのです。
『民が飢えても構わないのか』『お前が悠長に寝ている間にも食べる物が無くて、亡くなっていく者が大勢いるんだぞ』そう脅されて寝食を惜しんで、能力を使い続けたのです。僕がそうやって身を粉にして働いても、持っている者がさらに富んだだけでした。
だからもう関わりたくなかったんです・・・
シーラが王女だとわかって、彼女のことが信じられなくなりました。
僕はすぐにここを去りました。彼女は傷つくでしょうが、そのうち忘れるだろうと思っていたのです。本当に浅はかでした。
こんなにも立派に息子を育ててくれて、僕のことを待ってくれていたのです」
「そなたの気持ちはわかるのだが・・・」
上王は能力者の境遇に同情を寄せてはいた。
しかしながら父親として、娘のことを捨てたこの男の振る舞いを許せるわけがない。
「あーーーもう、どうすればよいのだ!! 1発、いや2、3発・・・
やっぱり気が済むまで殴ってもよいか?」
バタンと大きく扉が開いて、上王妃とシーラがやって来たのだった。
「あなた!何を愚かなことを言っているのですか!!」
上王妃は上王を諌めた。
シーラはプランの側に行くと「さっきのお話しは本当なのですか?」と詰め寄った。
二人がここに来た時、ちょうど扉の向こうから『シーラが王女だと知って逃げ出したのか』と上王の激昂した声が聞こえてきたのだった。
ふたりは耳を澄まし、さっきまで会話を全て聞いていたのであったのだ!




