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53 温かい湯は心もほぐす


「上手くいったのは分かったんだけど、こんなにのんびりしてていいの?」


あの御用商人が王宮にライターを売りに行くのを待っているのだ。


それまでは何もすることがないからと、旅行気分で温泉でゆっくりしている。

ヒカリは今までの水シャワーを取り戻すように、温泉に浸かりまくっていた。

みんなは初めての温泉に『変な匂いがする・・・』と不審そうにしてたが、今ではすっかりその虜になっていた。


「いいの、いいの。臨時収入も入ったことだし、どうせ待つだけなんだから」

臨時収入はライターを売ったお金だ。

ヒカリの白の力の所為なのか、温泉がそうさせるのか、プランもリュードもあんなにシーラのことを心配していたのに『足掻いても仕方がない』と妙に開き直っていた。


反対に次に出番がくるイグニスはそわそわしていた。

彼は顔バレ厳禁なので、温泉にも入れず宿屋の一室に軟禁状態になっていた。

この計画には彼の協力が必須だった。

快く了承してくれたお陰で、城への強行突破をしないで済んだのだ。


「慰撫の力がつかえたらいいんだけどね・・・」

ヒカリは温泉も楽しむことができないイグニスに同情していた。

現在、彼への治療は一時休止中であった。

どちらにしてもイグニスの場合、白の力は体の治療に行ってしまうので、慰撫はできない。

「いや、構わないよ」

ヒカリの力で痛みや微熱もすっかり無くなった。

それに片手がないことにも段々と慣れてきていた。

自分への戒めとしてこのままでもいいような気になっていたのであった。



それから数日後

もう王宮にライターを売りに行っただろうとメドをつけて、プランは再びあの御用商人の店を訪ねたのであった。

リュードとヒカリは兄妹という設定でお供をした。


店主は余程、貴重な品を(格安価格で)提供してくれたことに、好印象を抱いているようでニコニコ顔で現れたのだった。

「どうでした、国王様には気に入っていただけましたか?」

「ええ、それはそれは」と上機嫌だ。

「紹介します。こちらは私の息子と娘です」

「そうですか、お二人ともお父様に似て端正で利発そうでいらっしゃいますな」

その言葉に今度はプランが上機嫌になった。

「そうなんです!見た目もそうですが、中身もなかなかに良い子に育ってくれていまして」

「・・・ゴホッ・・・父上」

リュードは脱線しそうな話を戻した。


「おれ・・私と妹は父とは別行動で、この地方の名産品などを探し回っておりました。その途中に怪しげな人物を見つけてしまったのです」

プランが続きを話し出す。

「先達てラガー国がエール国を侵略したのはご存知ですよね?」

急に血なまぐさい話になり店主は怪訝そうな顔で頷いた。


「その時にエール国に多大な被害を負わせたのは、実は能力者がいたということは?」

能力者の話が出たので、店主は慌てて人払いをさせた。

「勿論、知っています。火の能力者ですよね?!でもその者は処刑されたのでは?」

プランは首を振った。

「その能力者は実は生き延びているのです!」

「そ、そんなバカな!?ではラガー国、いや・・今はビール帝国でしたね。

が、嘘をついているのですか?」

「近隣国には()()()()()()()と報告しているのでしたね。

どうやらそれは失敗だったようで、片手だけを落とされただけのようです。

『あいつはまだ生きている』とエール国ではもっぱら噂になっていました。

どうやらその逃げ延びた能力者を、うちの子供達がこのチャーコブの領土内で見つけたようなのです」


店主は驚きのあまり言葉がでないようだ。

「私も一大事だと思いました。それで店主から、国王様にこの事をご報告していただくほうがいいかと思いまして・・・」


馬車で待機していたボルヴィーとイグニスを呼んだ。

プランの言葉に半信半疑だった店主は、イグニスが掌から火を出してみせると「これは大変だーっ!」と、すぐに王宮に連絡を取るように手配したのだった。


こうしてみんなは無事に王宮の門をくぐれる運びとなったのだった。


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