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50 得体の知れないモノには警戒


「しかし、能力者ってのは一体何人いるんだ?」

「さあ、どうなんだろう?」

「雷や氷とか、ありそうですよね〜」

馬車での話題は能力者についてで持ちきりだった。


唯一、この中で能力者ではないボルヴィーは『いや、またクリスターのこと忘れてますよ!』とツッコミたいところだが、黙ってみんなの話に耳を傾けていた。


みんなが自己紹介をしていく中、ボルヴィーだけは名前以外は、特に言うべきこともないのであった。

「能力者ってのは、ひどい目に遭うようになってんのか・・・」

ここにいる能力者のそれぞれの身の上話を聞いて、イグニスは憤りと仲間意識を感じていた。


「そう、だからお互いに利用しないで、能力者同士で協力し合おうとしているんだよ。

そこでだよ、イグニス君! これから僕は奥さんのお父さんに挨拶しに行かなくちゃいけないんだよね。相手はチャーコブの上王様だから粗相のないようにね」

「上王様だって!? どうすりゃいいんだよ?」

「このボルヴィーは伯爵家に勤めていたから、彼の真似をしていれば大丈夫だからね」


そう、プランがボルヴィーを旅の仲間にしたのはこの為だったのだ。

上王に挨拶に行くのに、従者も連れていないような者を相手にしてくれるだろうかと心配してのことだったのだ。

その点、伯爵家にいたボルヴィーは適任者だったという訳だ。


イグニスは急にそんなムチャ振りされて、困った顔をしている。

「そんなに気負わなくても頭数に入れてるだけだから!

一人よりも二人も従者を連れているほうが貫禄を感じられるからね〜!」

どうやらプランの頭の中は、そのことばかりが気がかりのようであった。

事情を知らないイグニスに、シーラとリュードの事を話をしている。



3人がその話題に気を取られている間に、ヒカリはボルヴィーに話しかけた。

「もう分かってらっしゃるでしょうが、私も能力者なんです。黙っていてすいませんでした」

「別に・・・私には関係のないことですから」

能力者ではないボルヴィーは、先ほどから話に付いていけない孤立感もあってか、強く当たった。


「私は怪我や病気を治すことができるんです。

他の能力とは違い自己防衛できないものですから、出来るだけ人には知られたくなかったんです」

「分かっていますよ、誰にも話さなければいいんでしょう!」

「ありがとうございます、そうして頂けたら助かります」

ヒカリは以前、偉そうに説教したことを悔いていて、彼にはついつい下手(したて)に出てしまうのだった。


「そんなに謙られたら、不快なんですが」

ボルヴィーも彼女に対しては、坊ちゃんの忠告もあって、素っ気ない態度を取っていた。

あの伯爵までもが、去り際に彼女に笑顔を向けていたことにボルヴィーは引っかかっていた。


『得体の知れないモノには強く警戒をしろ』と本能がそう告げていた。

今だって、こんなに強く当たっても「ごめん、気をつけるね」とヘラヘラしているので不気味だ。

口ではそう言いながらも、心の中では何を考えているか分からない。

ボルヴィーはこれ以上、関わり合いになりたくないので、確実に嫌われることを言いだした。


「この際だから言っておくが、俺はお前のような小娘が嫌いだ。

浅慮で姦しく、誰もが自分に興味があるのだと思い込んでいる。

努力もしてないくせに自尊心だけは一丁前で、話す言葉は『すごーい』と『かわいいー』の二語だけ。

男に媚び諂うのが上手で、伯爵家の者に気に入られたらすぐに調子に乗り偉くなったつもりで、我が物顔で用事を言いつけてくる」


伯爵家にいたころは若い女の出入りが多かったので、そんな女を何人も見てきた。

そういう女はすぐに愛想を尽かされるのだが、それでも諦め切れずにボルヴィーにまで色目を使って仲立ちしてもらおうと、すり寄ってくる奴らを沢山見てきた。

うんざりだった。そんな女どもを引かせる為にはこれが効果覿面(てきめん)だった。


「女は30超えてからじゃないとお話にならないな!」

これがトドメの一言だ。

ある程度、歳を重ねた女性はその時期を過ぎた後なので、それなりに良い事、悪い事の人生経験を積んでいる。

無駄に自己主張は強くなく、角がとれて、理想と現実に向き合えるようになっていく。要は彼が好きになるのは年上の女性ばかりだったのだ。

『あいつはババアにしか興味がない』と鼻で笑われるが、ガードをするにはもってこいの言葉であった。


若い女性への偏見たっぷりのご意見に、ヒカリは眉をひそめていたが、その30超えてからには心打たれた。


「ありがとう、そう言ってくれる男性が一人でも多くいて私は嬉しいよ。

そうなのよ、若けりゃいいってものじゃないよね〜。

女性の価値が年とともに下落するような思想にはうんざりなのよ!

女も男も経験を積めば積むほどにいい味が出るって、何でわかんないんだろうね!!」


ヒカリを牽制するために、わざわざそんな話をしたにも関わらず、相手が『そうだそうだ』と意見に乗っかってきて、ボルヴィーは驚いていた。


「あなたとは話が合いそう、これからもよろしくね」

それは嬉しそうに右手を差し出してくるではないか!

仕方なく右手を差し出すと、ガシッと掴まれ、なぜだか二人は固い握手を交わしたのだ。


この握手のお陰で、ここ数日痛かった背中の痛みが嘘のように治ったのであった!

何だかよくわからないがヒカリに気に入られて、ボルヴィーの思惑は外れたが、その力を前にして『嫌われなくて良かった〜』と安堵したのであった。



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