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5 両肩に重い荷物は頭痛がする


私は昨日、用意したカバンを持っている。

彼は売り物が詰まった重そうなリュックを背負って、旅ははじまった。

お互いの身の上話でもして、交流を深めようとしていたのだが、彼は難しそうな顔をしており気軽に話しかけられるような感じではなかった。


話し相手もいないので、ぼーっと昨夜のことを考えていた。


またも眠っている間に彼女と会えたのだ。

その日あったことを、興奮した様子で教えてくれた。


「すぐに火が付いたのよ!なんて便利なの!!」

「温かいお湯が出てくるなんて信じられなかったわ!」 

「あの冷蔵庫って本当に便利ね〜」


彼女はライフラインと家電に感心しっぱなしだった。

スマホの便利さに気がつくまでは、もうちょっと時間がかかりそうだ。


「ごめん、話し過ぎたね・・・・そっちはどうだったの?」


私は青い光の人に出会ったことを話した。

彼女は彼の話を聞いて、とても悲しそうだった。


「やっぱり能力持ちは利用されやすいのね・・・」


さっきまで(はしゃ)いでいた彼女を悲しませたくなかった。

「あなたに光を弱くする方法を教えてもらえたから、私は無事だったんだよ。彼もそこから逃げるって!!」


「それがいいわ!彼もきっと今まで辛い思いをしてきたと思うの・・・力になってあげてね!」

彼女に頼まれたら何も言い返せないのだけど、無力な私がどうやって力になれるのだろうか。


()()()()と話していたぐらいだから、あの青髪の好色父さんに、散々利用されてきたのだろう。


だが昨日会ったばかりの素性のわからない女と、いきなり無銭の旅なのだ。

彼はどう思っているのだろうか?

重たい荷物を持ちながら、あの家を飛び出すんじゃなかった・・・と後悔しているのではないだろうか?

今更、帰るとか言ったりしないよね・・・


「その荷物って重いの?」

「まあ、そうだな」

「交代しようか?」

重労働を強いて、逃亡されたら困る。

こっちの世界にいる唯一の味方を手放したくはなかった。


「いや、まだ大丈夫だ。限界がきたらそうさせてもらうよ」

意外にも明るい声だった。


「名前まだ言ってなかったよね。私はヒカリ」

今、気がついたけど『白井 光』(シライヒカリ)って、シロイヒカリとも読めるな。

もしかして、これで選ばれたのか?


「俺はリュードだ」

あれ?こっちは普通だ!

(青色発光)ダイオードとかいう名前かと思ったのに・・


「昨日、話していた『光を小さくする』とはどういうことなんだ?」

彼女に教わったやり方を教えてあげた。


「そうそう、そんな感じ。もうふんわりとしか青い光は出てないよ!」

彼はすぐにコツを掴んだ。


光が弱くなると能力がなくなると、彼は聞かされていたようだ。


「それはあまり関係ないと思うよ・・・」


彼女の場合は『この能力はもう要らない!!』と放棄したから、私に移ったのだ。

私はそこに至るまでの疑似体験というか、ダイジェストで彼女の苦しみを全て味わった。

それはそれは酷く辛いものだった・・・

だから彼女が楽しそうに今日あったことを話していたのが、他人事に思えなくて、とても嬉しかったのだ。


「ちょっといいか。チャーコブに着いたら行きたいところというか、捜したい人がいるんだ・・・」


彼は母親との経緯と身の上話をしてくれた。

彼女が心配していた通り、彼も能力のせいで酷い目にあっていた・・・


「それは、絶対に会いに行かなきゃダメだよ!!」

「だが・・・母はあまり自分の話をしない人だったんだ。

昨夜からずっと考えていたのだが、何という町で生まれ育ったのかさえ、聞いた覚えがないんだ」


ああ、それでずっと難しそうな顔をしていたのか・・・


「でも名前はわかっているんだし、地道に捜せばきっと見つかるって!」

これは後でわかったのだが、私(白)が発するポジティブな言葉には人を宥めたり、安心させたりする効果があるそうなのだ。

「そ、そうだよな!」

その言葉で彼は前向きな気持ちになったようだった。


私が成敗したい相手は、何という国にいるのか知らない。

彼女も()()()()だったから、外出することがほぼ無かったからだ。

だから色んな町を回れば、見覚えある物や人に出会える可能性もある。


だがリュードのことが先だ!

何とかお母さんを捜し出して、再会させてあげたい!!

それに彼の心の憂いを取り払うことができたなら、こちらのことも協力をお願いしたい。

私は(したた)かにそんなことを考えていたのであった。



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