46 打ち出の小槌は誰だって欲しい
話し終え、号泣するヒカリに駆け寄ると、リュードは力一杯抱きしめたのだった。
「わかったから、もう話さなくていい」
リュードにとって、ヒカリが現れてくれたことが、人生が変わるきっかけであった。
ヒカリが寄り添って居てくれたからこそ、自由になれたのだ。
次は自分がヒカリの願いを叶える番であった!!
こんなにも辛い思いをしてきた彼女の過去の話を打ち明けるのは勇気が必要だっただろう。能力をひた隠しにしていたのも頷ける話だ。
「治療を頼んでしまって、申し訳ない」
さっきのことがきっかけで、彼女の恐ろしい過去を呼び覚ましてしまったのではないかと、プランは落ち込んでいた。
「それは違います。信頼しているからこそ能力を使ったのです」
同じ痛みを抱えているからこそ、裏切るようなことはしないと確信している。
それに二人と長い時間を共に過ごしてきて、性格や人柄も重重分かっている。
「それに・・・恩を売っておけば断られないかなーと思って治療したんです」
プランはその発言に面喰らったようだ。
「まあ、その随分と正直にバラすんだね」
「確かに」
リュードが相槌を打つと、3人はくすくすと笑い出した。
そうここまで本音を言えるほどに、みんなとは信頼関係が築けているのだ。
「で、そのコーラーって奴らはどこにいるんだ?」
リュードは称号も付けず、忌々しそうに呼びすてにした。
「彼女の記憶を辿ってもそれがわからないんです。でも先日のアクーアの国王を治療したのは確かだと思います」
あの時は気が動転していたが、毛を生やして少しふっくらさせると国王らしき人の治療をしたことがあったのだった。
「どこで治療が行われたのか、ペリーエ伯爵から国王にきいてもらったらいいんじゃないのか?」
「いや、それは避けたほうがいいかな」
プランは否定をした。
あの国王はもう治療は求めないだろうが、皇太子に能力者がいることを知られてしまうのは危険だと思ったからだ。
プランも旅をしていて、何度か彼女の噂を耳にしたことがあった。
『法外な値段を支払った』
『全く治らなかった、あんなのはデタラメだ』
『本当に回復したらしいが、金の支払いを渋ったので殺されたらしい』
聞こえてきたそれらは半信半疑なものばかりで、どれが本当の情報なのか全く分からない。
きっと嘘もたくさん混じっているのだろう。
称号のある者ならば、同じ貴族に尋ねるのが一番手っ取り早い。
それならば、シーラと共にチャーコブの王宮に出向くことだし、そちらで訊くほうが確かだろうという結論になったのだった。
次の日から、馬車を飛ばすスピードは上がった。
事情を知らないボルヴィーが、ガタガタ揺れる馬車の中で文句を言っている。
「どうしてこんなに急いでるんですか?」
ヒカリからボルヴィーにはまだ事情を打ち明けないで欲しいと頼まれたので、プランはシーラに早く会いたいからなんだと嘘をついた。
自分たちのような植物や水などは、ゆっくりとお金を生み出す能力だ。
月年単位でじわじわと成果が出てくるが、それまでは待たなくてはいけない。
だから資金力のある者にしか囲えないのだ。
しかし彼女の能力はもっと直接的ですぐに結果が出るものだ。
『大枚を出すので、今すぐに病気を治してほしい』という金持ちは沢山いるだろう。だから悪知恵の働く者なら、誰もがすぐにその能力を利用して儲けてやろうと考えるはずだ。
しかも最悪なことに、白の能力には自己防衛する術が無いのだ。
そう考えると彼女がやけに慎重になるのも頷ける話なのであった。




