44 予想内と予想外
「おい、ヒカリ。あのアワアワになるソープとやらを貸してくれ!」
タイミング悪く、リュードがノックもせずに部屋の扉を開けたのだった。
父親がヒカリの前で半裸になっているのを(しかも二人きりだ)目撃する。
「そんな格好で一体、何をやってるんですか!!!」
そうズカズカと部屋に入ってきたのであった。
「ち、違うよ!リュード、誤解だよ」
プランは必死に言い訳している。
怒りながら入室したのだが、近付くと彼の背中一面に大きなミミズ腫れのような傷跡が隆起して広がっているのであった。
「その背中・・・どうしたんですか?」
ヒカリも覗き込むとその傷跡を見て、言葉を詰まらせた。
「うわー・・・」
「怖くないからね、見た目ほど痛くはないんだよ。今は雨が降る前に少し痛むぐらいだから」
それは彼がポーカリで「もう能力を使いたくない」と申し出た際に、酷い鞭打ちを受けたときの傷跡なのだそうだ。
「僕には能力を手に入れる前に妻と子供がいたんだ。能力者だと知られてからは王都から出してもらえなくて、会えなくなってしまったんだけどね」
彼はその妻と子供を人質にされて、結局、言われるがままに何十年もの間、能力を使うしかなかったそうだ・・・
だけど彼はある日、妻と子供はとうの昔に亡くなっていたことを知ってしまう。
その出来事が積年の間、抑制されていたものを一気に噴き出させて、一国を滅ぼすことに繋がるのだ。
「ヒカリちゃん、白の能力でこの傷跡を治すことってできる?」
「多分、大丈夫かと思いますが・・」
彼女の記憶では、このぐらいの古傷は余裕で治せていた。
「良かった。これから一緒に暮らすことになるとシーラに、この傷を見られてしまう機会があるだろう。そうすれば、この理由を話さないといけない。
彼女にはこんなにも辛い目にあっていたことを知られたくないんだ」
彼もまたリュードと同じように、シーラさんに心配をかけたくないようだ。
そのリュードは、今日一日でプランのことをたくさん知ることができたのだった。
彼が一国を滅ぼした理由もようやく判った。
そして彼が母と知り合うよりも以前の話だが、所帯を持っていたことに少なからず動揺している自分がいたのだ。
いつの間にやら、思っているよりもこの父のことが好きになっていたようだ。
そんな父とヒカリは、先ほどからリュードの目の前で信じられないことを行っている。
「二人には話していませんでしたが、白の能力はほぼ全ての病気や怪我を治すことができます。軽いものは触れることで治せますが、深い傷や臓器に疾病がある場合は・・・粘膜接触で治すのです」
こうして治療は始まったのだった。
ヒカリとプランは出て行って欲しそうだったが、リュードは気付かないフリをしてここに居座った。
先ほどからプランの背中を、ヒカリが丁寧に舌を這わせているのだ。
その姿は何とも妖艶で、いつもの幼さはどこかに身を潜めているようだ。
くすぐったそうな、でも気持ちよさそうに身悶えるプランを羨望しているのだ。
治療をしているヒカリが、実年齢を思わせる大人に見えたのだった。
そこには自分がずっと避けてきた、甘美で官能的な世界が広がっていた。
少しでも見逃すまいとヒカリに釘付けで、あそこが痛くなるぐらいに素直に反応してしまったのであった。




