42 固定概念には要注意
ヒカリはどうみても年下にしか見えない。
この姿は入れ替わったと話していた女性の容姿なのだそうだ。
プランのよると能力者は年を取らないそうだから、成人した姿がこれなのだろう。
確かに、見た目に反して性格面では俺よりも遥かにしっかりしている。
ヒカリが引っ張ってくれなかったら、すぐに伯爵に捕まって、母にも再会できていなかっただろう。
特に金銭管理には感心したものだ。
年を聞いてそこは納得できたが、どうやらその割には感情の調節は下手らしい。
母の年齢に驚き、俺の境遇にガン泣きし、花の精の「君は随分と変わったね」発言に怒り狂い、能力者が年を取らないと知ってそれは嬉しそうにしていた。
「何よ!おばさんで悪かったわね!!」
俺が何も言わないのでヒカリは自虐的な言葉を言った。
「ヒカリはヒカリだろ。俺よりもしっかりはしてるけど、情動は素直で分かりやすい。それが俺の思うヒカリだよ」
その時、部屋の向こうからボルヴィーの大きな声が聞こえてきた
「ええーーーっ、100歳!! 信じられない・・・」
「あっちは100歳なんだってさ?!どう思う?」
ヒカリは遠目にプランを凝視し「どう考えてもおじいさんではないよね〜」とつぶやく。
人生経験は豊富そうだなとは思っていた。
能力のせいで起伏に富んだ人生を歩んできたのだろう。
その長い長い人生の中で、あのように長けた駆け引きや交渉術を身につけないとやってこれなかったのかも知れない。
「あの人もおじいさんには見えないし、ヒカリもとてもじゃないけどおばさんには見えないよ」
長い間培ってきた固定概念というものはそう簡単には覆らないものだ。
見た目と年齢の視覚関係もその一つである。
青年に見えるプランは、超が付くほどのおじいさんには見えないし、少女のように見えるヒカリも母と同じ年には見えないのであった。
「150にはなってないと思うんだけど・・・もう数えるの面倒になっちゃった!」
唖然とするボルヴィーを前に、プランはえへへへと笑っている。
やはりその姿は、どう考えても昼間の国王よりも年上には見えない。
「確かにリュードの言う通りだね、ありがとう」
ヒカリは素直に受け入れてもらって一安心する。
「それより、いい加減プランさんのことを指示代名詞で呼ぶの止めたら!?」とすぐに小言を言ったのだった。
そんな話をしていたからなのだろうか、ヒカリはその夜久しぶりに彼女に会ったのだった。
「「久しぶりー」」
2人は再会を喜びあった。
「聞いて!!青の能力者の男の子が無事に自由になれたの!」
嬉々として話し出してしまったが、彼女がこっちのほうが早いよと手を出した。
私たちはお互いの体に触れると、経験したことを共有しあえるのだ。
手を繋ぐと、彼女が五感で感じた情報が全て入ってきた。
毎日、慣れない仕事に精を出している。
同期で仲良しだったいっちゃんが、彼女と私の性格の差異に気が付いて心配してくれている。
そして彼女が段々とアイドルグループに興味を持ち始める。
中途採用でほとんど話したことのなかった山口さん(ドルオタだという噂があった)と彼女は意気投合していく。
連絡先を交換し、一緒にライブにまで繰り出している。
そのあと2人はいい感じになり・・・
「ええーーーっ、山口さんと付き合ってんの!!」
彼女はとても照れながらコクンと頷いた。
その姿が、長年見慣れた自分の顔じゃなければ素直に『かわいい』と思うところなのだが、胸中は複雑だ。
アイドルには全く興味がない私は、その噂を鵜呑みにしていたので、ドルオタな雰囲気の山口さんとは、進んで話そうともしていなかった。
だけれども、本当の彼はまあそこそこのオタクではあるが、彼女のことを大切にしてくれている。何より2人は気が合うようだ。
オタク話を一方的に話した後は「ごめん、話し過ぎたね」と謝り、その後は彼女の話にきちんと耳を傾けてくれる。
容姿に自信のなかったアラフォーを褒めてくれるし(彼の好きなアイドルとは掛け離れているのに!)思っていたよりもずっといい彼氏なのである。
私だったら固定概念から抜け出せず、山口さんの良さに一生気がつくことはなかっただろう・・・
彼女が彼のように誠実で優しい人と恋人になれて本当に良かった。
「今、幸せ?」
「うん。あなたには申し訳ないけど、入れ替われて感謝してる。本当にありがとう」
私こそ、彼女にはずっと負い目があった。
あんなに辛い人生を送った後なのに、私のような冴えない女と入れ替わっちゃって、何だか申し訳ないなと思っていたからだ。
でも彼女が『幸せだ』と言ってくれることが、私の幸せでもあったのだった。




