40 年下の人にも素直になろう
経緯を聞いて、プランは「う〜ん」と考えている。
「君の言う通り、これから伯爵家は人員整理していかなきゃいけないだろうね」
「ですから、辞職を申し出たほうが良いと判断しました。坊っちゃんもようやく独り立ちできそうですし、後顧の憂いはありません」
「そっか〜、じゃあ一緒に付いて来てもいいよ」
プランが『一緒にメシでも行くか』ぐらいの気楽さで受け入れているではないか!
堪らずに声をあげたのはヒカリだ。
「ちょっとー、猫を拾うときでも、もっと真剣に先々のことまで考えるもんですよ!」
「あなたも本当に辞めてもいいの?坊ちゃんのことは心配じゃないの?」
「いえ、未練なんてありません」
ボルヴィーは不愉快そうな顔で、ぶっきらぼうに言った。
その態度にヒカリはムッとなった。
「大体、あなたいくつなの?そんな勢いだけで本当に辞めても大丈夫なの?貯金はあるの?再就職するのに何か有利な資格はっ・・」
矢継ぎ早に質問しながら、ああやってしまったとヒカリは項垂れた。
会社でもよくあったのだ。
せっかく仕事も覚えて、打ち解けて話せるようになったのに、辞めていってしまう。
20代のころは、退職して行く人にも、もっと大らかだった。
いつからだろう。そんな風に責めるように引き止め出したのは・・・
転職に踏み切れる若さと勇気と気力を、いつの間にか無くしていた。
自分だけが取り残されているような気になり、焦っていたのだ。
「ごめんなさい、言いすぎた。あなたの選択を尊重するわ」
「ヒカリちゃんの言うことも分かるよ。だけど僕もちゃんと今後のことを考えて、彼に来なさいって言ったんだよ」
プランはヒカリにだけ、その理由を教えてくれたのだった。
「そうだったんですね。本当にごめんなさい、あなたも・・」
「ボルヴィーと呼んで下さい。俺のことを思って言ってくれたのなら構いません」
坊ちゃんから、さんざん彼女の悪口を聞かされていた。
純粋で可憐そうな見た目に反して、イイ男と見ればすぐに色目を使う。
しかもすぐに手を握ってたりして、やり方が下品。
リュードさんは何か弱みを握られていて行動を共にさせられている。
「あのコントレ兄さんが、あいつの前で自ら『手を繋いでもらっていい?』なんて言ったんだよ!あの冷然とした兄さんがだよ!」
長男ほどではないが、コントレもそれなりに女性と遊んでいたことを、坊ちゃんは知らないのだろうか。俺は逆に、彼がそんなうぶなことを言ったことに驚いていたのだが。
「何か人を誑かすツボを押さえているんだよ。ホント恐ろしい小悪魔だよ! ボルヴィーもいい男なんだから気をつけるんだよ!!」
そう言い放った坊ちゃんが、幼少の頃から付き添ってきた俺のことをいい男として見ていることのほうに、薄ら寒いものを感じたのであった。
さっきの彼女は鬱陶しかったが、お金が心細いことは確かである。
坊ちゃんは彼女のような容姿に憧れているようだ。
しかし現実の彼女は、坊ちゃんよりももっと現実主義で物事を冷静に見ているようだ。
はてさて彼女は坊ちゃんの言うように『男たらしの小悪魔』なのか、それとも『人間的魅力』で人を引きつけているのか、じっくり見極めてやるかとボルヴィーは考えていたのであった。




