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36 親の心子知らず


兵士は追い付くと、国王を支えるには頼りのないコントレとエヴィに交代を申し出た。

王様は屈強な兵士に背負われたので、皇太子が閉じこもった執務室の前にすぐに到着できたのであった。


「誓約書はもう準備できましたか?広間で能力者が遅いと怒っています!」

兵士はさっきの会話を全て聞いていた訳ではないので、親子の醜い思惑は知らなかった。


「今、準備しているっ!!」

皇太子は焦っているように答えたが、思い通りに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と口元をほころばせている。


「ここを・・・開けろ」


皇太子の耳にも、その嗄れた声は薄っすらと聞こえた。

しかし、具合の良くない国王がわざわざここまで足を運ぶとは考えられなかった。

今のは空耳ではないのかと様子を伺っていた。


そこにいち早く反応したのが、コントレであった。

ここは老い先短そうな国王よりも、息子に恩を売っておこうと考えたのだ。


「皇太子様、国王様がお出ましになっております。

安心してこの扉を開けてください。ここに能力者は来ておりません」


こう話しかけたことで、皇太子にこの扉を開けさせるきっかけを作った。

しかも国王を見捨てようとしたのではなく、能力者を恐れて鍵を閉めていたように体裁を保てるからだ。

国王も先ほどは息子の裏切りに激昂していたようだが、今は別のことに気を取られている様子だ。


「ガチャ」


扉は開き、皇太子が顔を出したのであった。

彼は後ろめたい気持ちからじっとしていられずに、ちゃんと書類の文言を考え、それを記していたのであった。

誓約書を作成していたことで、国王は息子の奸計を帳消しにしようとしていた。

「すいません」

蚊の鳴くような声で詫びた息子を、わざわざ問い詰めるような事はしなかったのであった。


国王は書類に目を通すと、()()()()とばかりにコントレにそれを渡して来た。

彼も内容を確認すると、続いて弟のエヴィにも渡した。

弟をペリーエ家の一員として認めたのだ。


3枚の誓約書には、それぞれ『青の能力者を解放する』

『伯爵家は今まで通りの爵位と領地を維持しても良い』

『伯爵家の追徴課税は取りやめ、他の領地と同じ納付額とする』

と書かれていた。


国王がペンを握り署名をしようとしたら、皇太子は自身の行動を顧みずに、またも文句を言い出した。


「国王、いや父上!本当にこのまま能力者を手放すつもりなのですか?」


国王は息子を一瞥し「全く、お前はいくつになっても大勢(たいせい)が見えとらんな!これだから、おちおち引退もできん!」とブツブツ言いながら、ペンを走らせたのであった。


こうして3枚の誓約書を手に入れることができたのであった。


「大儀であった」


国王のその言葉で、みんなは安心して広間を後にして行く。

やっと解放された兵たちには城内の点検に向かい、木はほぼ庭に戻った。

プランは残しておいた木と、一番最後に広間から退出しようしていた。


「まさかとは思うけど、背後から『ブスーッ』なんてこと考えてないでしょうね!」

「それができたら・・・苦労せん」

プランはそれを聞いて豪快に笑った。

皇太子の不甲斐なさを見たせいか、国王は何かが吹っ切れたように、()()()()()しているようだった。



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