33 心理的包囲
「この国の方針は大体わかった。その前に面白い昔話を聞かせてやろう・・・」
プランはそう言ってその場にドカッと座り込んだのだった。
「ここから海を渡った東に、ドーリンク大陸があるのは知っているか?
そこにポーカリという寒冷で日照時間も短く、痩せた土地の貧しい国があったんだ。
民は常に餓えと戦っているような酷い状態で、毎年、冬を越せずにたくさんの人が亡くなってしまうような、そんな悲惨なところだったんだ。
けれどもその国はいつの間にか、豊かな穀倉地へと変貌をとげたんだ。
国中の人に食料が行き渡るようになり、他国にさえ穀類を売ることが出来るようになったんだ」
「一見すると食糧不足も解消されて裕福になったように見えたんだけど、国は段々と欲をかき、民に過剰な貢納を課すようになったんだ。
それらの貢納は、何らかの形で民に還元されることは決して無かった。
今までの反動のように、贅沢な暮らしを始めた国王や貴族の私腹を肥やすためだけのものになってしまい、再び民に苦しい生活を強いることになったんだ。」
「そんなある日・・・・・・
王をはじめ王宮に居た、私利私欲にまみれた国の主要人物が跡形もなく消え去ったんだ!
そして王宮を破壊するかのように、立派な巨木がいつの間にか立っていたそうだ。
更に不思議なことに、その木からは声にもならないような、たくさんの人の呻き声が絶えることなく、辺り一体にずーっと不気味に響き渡っていたそうだよ・・・・・・怖いよねー」
みんなは固唾を飲んで話に聞き入っていた。
それって・・・『あなたの仕業でしょ』とは、気軽に尋ねられるような内容でも空気でもなかった。
誰もが閉口して静まり返ったこのタイミングで、遠くから物音や人の悲鳴のような雑多な騒音が聞こえてきてきた。
「ほら、ここにも破滅の音が聞こえてきたようだよ」
通訳が目配せすると、兵は慌てて様子を見に出て言った。
「もう一度聞いたほうがいい?能力者は強制的にこの国にいなくちゃいけないのかな?」
国王も通訳も、なんと答えるべきなのか思案していた。
先ほどの話の信憑性と、緑の能力がどれほどのものなのか測りかねているようだ。
「青の能力者だけ、残ればよい」
これで危機は回避できると考えたようだ。
まさか緑と青が親子関係だなどと、夢にも思っていない。
こんなことを話している間にも、騒ぎは段々と大きくなっていっているようだ。
不安を煽るように、悲鳴や物音は否応なしに耳に入ってくる。
「たた、大変です!! 木が、たくさんの木が城内に次々と侵入してきています!!」
そうは言われても、木が動くなど俄かには信じられない話だが、その場にいた兵たちは慌てて出て行った。
「おい、水の能力者! お前も行って何とかしてこい!」
通訳は焦ってそう命令したが、この物言いにはリュードも腹に据えかねるものがあったようだ。
「俺の能力はもう無くなってしまったんです」
そうシレッと嘘をついたのだった。
プランに素直過ぎると言われたことを反省し、狡賢く振る舞おうとしているようだ。
「嘘をつくな!!!お前が能力を使っていたのを見たものがいる」
「あれから力が無くなったんです」
「そんな都合のいい話があるか!」
「だったら、素質のある者を呼んできて確認すればよいではないですか!」
能力者でしか分からないぐらいに弱い光を、たかが素質のある者に見つかる訳がない。
そんな言い争いをしている間にも、着実に騒ぎはこちらに近づいており、聞こえてくる音も野太い叫び声や剣の金属音に変わってきていた。
通訳はなんとかこの状況を打破しようと考える。
ここに助けが来ないということは、全兵で応戦しているのだろう
もしかするともう城内にはもう逃げ場所がないのかもしれない。
「わかった。青の能力者も解放しよう」
「ペリーエの廃位もしない? 税も元どおりにしてあげてよ〜」
「わかった、わかった。そちらの条件は全て飲む。だから攻撃を止めよ!」
とりあえずこの場を凌げればいい。
それには緑の能力者の機嫌を損なわなければいいのだ。
しばらくすると、先ほどまで響き渡っていた金属音が少しずつ聞こえなくなった。
「どうやら木の動きが止まったようです!さあ、今のうちにお逃げ下さい」
国王を避難させるべく戻って来た兵たちは、王の前に跪いたのであった。




