32 お前らの物はオレの物
私は城下で待っているつもりだったのだが「ひとりにしておけない」と言われ、みんなと一緒に城内に入ったのだった。
伯爵家とは無関係なのに、不思議がられることもなく、謁見の間らしき立派な部屋に通されたのだった。
国王は、何と平安の帝スタイルで姿を現したのだった。
御簾でこそないが、紗のような布で隔てられているのだ。
絶妙に『あの辺にいるんだろうな〜』と影でわかるぐらいだ。
しかも、私たちには直接話しかけずに、お付きの者に声をかけ、その人が代わりに話すのである。
何とも奥ゆかしいというか、まどろっこしい。
「よう参った」
言葉も何だかそれっぽいのね〜
「お呼び出しを受けていたにもかかわらず、登城が遅くなり申し訳ありません」
「して、新しい能力者というのはどいつじゃ?」
伯爵のお詫びの言葉を無視して、プランさんのことを尋ねたのだった。
「それは僕のことだよ」
プランは自ら名乗りでた。
「何か証拠を見せよ」
「イヤだね。臣下が怪我をおしてまでわざわざ来てるのに、労いの言葉ひとつもかけないなんてどうかしてるよ」
それもこれもプランが元凶なのだが、彼は平気でそう言い放った。
ホントそれ!! もっと言ってやれ!
「無礼者!!何と言う口の聞き方だ!!」
通訳さんが怒ると、兵たちが足早にやって来て、私たちの周りをぐるりと囲んだ。
「止・・めよ・・・・」
カーテンの向こう側から、お年を召したであろう嗄れた声が聞こえた。
そのまま国王が話すのかと思いきや、またも通訳さんが話し出した。
「ペリーエ、ご苦労であった」
「伯爵から話があるようだから聞いてあげてくれない。僕と話すのはそれからだね」
プランはそのまま主導権を握ったのだった。
「わかった、聞こう」
国王からの許しが出たので、伯爵は話し出した。
ペリーエ家で能力を継ぐ素質のある者が生まれなかったこと。
養子を迎えて能力を引き継がせたのだが、伯爵家からの別離を望んでいるので、それを受け入れるつもりにしていること。
それに伴い青の能力を手放すつもりをしていて、これまでのように納税はできない旨も包み隠さず打ち明けたのだった。
「全ては私の不徳の致すところです。私は責任を取って家長を退き、息子に家督を譲る所存でございます。ですのでどうか寛容な決断をお願いしたい次第でございます」
「能力者を手放すと言うのか!!」
国王が耳打ちするよりも早く、通訳が声を荒げた。
「誠に申しわけありません」
「これは国王様への背信だ。能力者は国の宝であるぞ!お前のところに預けているだけであって、そのような国の一大事を貴様が勝手に決めていいわけがないだろう!!」
伯爵家に能力者が生まれたお陰で、今まで散々恩恵を受けてきたのに、まるで国が授けてやったんだと言わんばかりの暴言であった。
伯爵は廃位を免れたい気持ちから、首を垂れ続けた。
殊勝な態度に通訳はさらに続けた。
「もし能力者を王家に差し出すと言うのなら今の話は水に流してやろう。今まで通りに伯爵を名乗るが良い。だが税は今まで通りだ。廃位されなかっただけでも有り難く思うことだな!」
国王のことなどほったらかしで、通訳がペラペラと話しているのである。
「随分な物言いだな」
わー、このプランさんの感じ相当頭にきてるみたい。
また凄いことやらかしそうだなと、ヒカリは身構えた。
「能力者は国を潤す為に存在しているんじゃない。
僕たちはたまたま能力者になっただけで、各々の自由は守られなくちゃいけないんだ。
誰かに束縛されたり強要される筋合いもないし、ましてや国のために自分を犠牲にする必要もないんだ。」
「何を言う!この国に住まわせてやっているんだから、国の為に力を使うのは当たり前だろう!」
「僕は君とじゃなく、国王と話したいんだけど・・・あなたもこの男と同じ考えなのか?」
珍しくプランさんは苛立ちを隠せないようであった。
「そ・う・・だ」
カーテンの向こうから、そんな声が薄っすらと聞こえたのであった。
「では、水の能力者が国の為に力を使うのはイヤだと言ったらどうなるの?」
「これは・・・強制・・だ」
「それは緑の僕にも当てはまるの?」
「そう・・だ」
プランさんは最終確認をすると、これで自由に暴れようと言わんばかりに首をゴキゴキ鳴らしたのであった。




