30 昨日の敵は今日の友
伯爵の怪我はかなり酷く、上半身を起こすだけで端正な顔を歪ませ「ウギャーーー」と、とんでもない声で鳴いている。
プランはこのまま登城しないのはマズいと考え、ヒカリにある提案をした。
「ヒカリちゃん、申し訳ないけどアイツを治療してやってくれないか?」
ヒカリが返事をする前に、リュードが猛反対した。
「それはダメだ!!!ヒカリは誰にも能力者だと知られたくないと思っているんだ。俺たちと違って身を守れる能力じゃないだろう!」
「それは分かっているよ・・・だけどこのまま伯爵が国王と話し合わなければ、リュードがこのアクーア国から狙われるよ」
リュードが現在も、青の能力者であることも報告されているだろう。
当主である伯爵が能力者なら手出しできないが、第三者が能力者であるなら話は別だ。
伯爵が緑の能力者のプランを連れて来れなければ、能力者を隠蔽していると難癖をつけ、青の能力者を差し出させるつもりなのだろう。
伯爵が渋れば、色んな罪状を付けて廃位させればいいのだ。
後は、能力者を捕まえればいい。
国王にしてみれば、自身で能力者を囲っているほうがずっと都合がいいことだろう。
「あんただって狙われるだろう?」
「勿論、そうだろうね・・・けど僕は自分の身もシーラの身も守るだけの力があるから。」
リュードはプランとの実力差をひしひしと感じていた。
「僕と違ってリュードは優しいんだよ・・・力の使い方が素直すぎる。
だけどこれからはもっと非情にならないと自分も大事な人も守れないよ」
そうプランに説得されて、渋々、リュードは了解したのだった。
ヒカリが『白の能力者』だとバレると、また伯爵が良からぬことを考えてしまうかもしれない。
そこでプランがお見舞いに行き、ヒカリも密かに入室し、プランが脚に触れるフリをしてヒカリが触れて治すという回りくどい作戦に出た。
完治すると怪しまれるので触るのも、ほんの数秒にしておく。
この方法のお陰で、ヒカリの能力を知られることなく、伯爵も肩を借りれば歩けるぐらいにまで回復したのだった。
こうして大きな馬車に乗り込んで、王宮を目指しているのである。
緊張感からか馬車の中で口を開く者は誰もいない。
国王に会って何と話すべきなのか、シミュレーションでもしているのだろうか・・・
伯爵がうーんと首を捻った。
体調がすぐれないのだろうかと、コントレが心配して声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「うーん、何だか、とても大事なことを忘れている気がするんだが・・・」
「父上もですか!実は俺も何かがずっと引っかかってるんです!」
「あ、あの・・・・・・それは・・・・・・もしかして・・・」
「もしかして、何だ?」
なかなか肝心なことを言わないので、伯爵はエヴィを促した。
「間違っていたらすいません。クリスター兄上のことではないですか?」
「「あっ!!」」
「そうだっ!リュードが見つかったことを、あいつにまだ教えてないじゃないか!」
「そうか、だからあんなにも話し合いが円滑に捗っていたのか!」
伯爵はバツが悪そうな顔をし、コントレは辛辣な一言を放ったのだった。
プランも伯爵と同じぐらいバツの悪そうな顔をした。
「えーっと、彼なら現在、自己反省の真っ只中なんだよね。
でも大丈夫!この件が済んだら帰してあげられるから」
プランは伯爵の心労を慮って、芯を食った説明は避けたのだった。
「・・・ん?一体どういうことですか?」
伯爵は詳細を知りたそうにしたが『お宅の長男さんはとっても素行が悪いから、木の中に生き埋めにさせてもろてます〜』なんて言えるはずもない。
ここは国王との話し合いに集中していてほしいところなので、黙っておくことにしたのだった。




