3 計画性ゼロでもなんとかなる
手荒に外に放り出されて、私は怒っていた。
今、出て行くところだったのに・・・
着替えを持って部屋から出ようとしていた時に、お母さんに『早くお風呂に入りなさい!』と注意を受けたぐらいに腹立つな〜。
だが、門に向かって歩いて行くうちに、これからどうしたらいいのだろうと不安で一杯になってきた。
こちらに知り合いなどいないし、お金もないし、部屋着だし、靴さえはいていないのだ。
フィールドに出たら超低級モンスターに一撃でやられそうだ。
門を出たところで『これからどうしよう・・・』と途方に暮れていたのだ。
そうしたらさっきの青い光の子が、こちらに走って来るではないか!
「ど、どうしたの? も、もしかして気が変わって家に置いてやるって言われた?」
一縷の望みを込めてきいてみる。
「俺、この家を出ることにする!」
「えっ!?仲間になってくれるの?」
「どうせ、いつかは追い出されるんなら、今すぐに出て行ってあいつを困らせてやる!」
仲間になってくれるのは嬉しいんだけど、その言葉には不安しかなかった。
「その〜、あなたお金持ってる?」
「まさか!!あいつが俺に金など渡すはずがないだろう・・・」
やっぱりねー、だと思ったよ。
「じゃあ、行く当てとかあったりする?」
「・・・・・・・」
ですよね〜、薄々勘付いてたよ。そんな場当たり的に家を出るって決めたんだもん。
計画性0だよね。私も0だもん。
0に、あなたという線が一本入ってQになっただけだよねー!
「あっ、そう言えば『伯爵のところが嫌になったらいつでも来てください』と言ってきた男がいたな」
それだ!! もうその人を頼るしかない!!
「その人ってどこの誰なの?」
「・・・・・・」
さてはこいつ、覚えてないな・・・
あからさまに目を逸らしたので、ずいっと近付いて、じーっと顔を見た。
ほれ、詫びろ!
「すまん、覚えてない。でも眉毛のところに大きな黒子があった!」
う〜ん、その情報だけで辿り着けるかな〜。
とりあえず、恐れていた魔物はいないらしい。
彼が言うには、俺の能力があれば近隣国は大喜びで迎え入れてくれるらしい。
その言葉を信じて国外に行くしかない。
「ここから一番近いのはチャーコブだな」
「そこまではどのくらい?」
「歩いてだったらひと月もあれば着くんじゃないか・・・」
ガクッと項垂れた。一文無しがひと月もどうやって旅するのよ!!
でもよく見たらこの人、着てるものは立派じゃない。
「提案なんですけど、その高そう服を売って資金にするっていうのはどうかな?
実は私もお金持ってないんだよね〜、しかも見てよ・・・裸足なの」
「靴なしでどうやってここまできたんだ?」
「まあ、それは追い追い事情を説明するよ」
彼は服を売るのを渋ったが、嫌いな人にもらった服を手放さないとは何事だ!
とプライドをこちょこちょしてやったら、あっさり承知してくれた。
こうして私たちはチャーコブとは逆方向の、街に向かって歩き出したのだった。
彼の服はそこそこの値段で売れた。
替わりに安い服を購入し、私も無事に足を保護するもの(靴と呼ぶにはお粗末だが)も手に入った。
旅に必要な丈夫そうなカバンに、水筒、地図、方位磁針、小型のナイフや火打ち石、それに日持ちしそうな食料を買ったら、手元にはごくわずかなお金しか残らなかった。
「この残金でこれから大丈夫なのか?」
彼は不安そうにこちらを見てきた。
ようやく気がついてくれたのね!
そうよ私たち、かなりあぶない橋を渡ろうとしているのよ。
「もう、腹を括って行くしかないでしょう!」
いざとなったら私の能力で金持ちの病気を治して、路銀を稼ぐという最終手段がある。
極力やりたくはないが・・・
「その前に、そのお金で何か食べません?」
朝から何も食べていないので、お腹が空いていた。
それにチャーコブへの行き方を、誰かに聞いておくほうが良さそうだったからだ。
店で食事するには心許ない所持金なので、焼いた肉が刺さっているものを屋台で買った。
「お金がこれだけしかないんです・・・これで買える物を下さい」
店主は私たちをマジマジと見て、串を2本くれた。
私たちを可哀想だと思ってくれたようで、おまけしてもらえたようだ。
私と入れ替わった彼女は、あの長男も褒めていたようにかなり可愛らしい容姿をしている。
少女のあどけなさを残す、儚げで守ってあげたくなるような華奢な感じなのだ。
まさか中身が荒んだアラフォー女子だとは誰も思うまい!
「私、お兄ちゃんとチャーコブにいる親戚のところに行かなくていけないのです。
ですが、行き方がわからなくて困っているんです・・・」
この店主は親切な人だと見抜き、ここは困っている兄妹という設定で情報をもらおうとする。
「山道を通れば早いらしいが、お嬢ちゃんの体力じゃ無理だろうな・・・そういや客で荷物持ちでチャーコブを往復している奴がいたな・・・」
ラッキーなことにそのお客さんは、明日からチャーコブに向かって出発するらしい。
荷物を持ってくれるなら、一緒に付いて来てもいいと言ってもらえたのであった!!