29 不機嫌そうに見える人は放置
ペリーエ家の親子は、あの後、3人できちんと腹を割って話し合ったのだった。
プランに言われたように水の能力はもう諦め、高額な納税と廃位は何とか免除してもらえるよう、国王に申し開きをしに行くつもりをしていた。
けれども伯爵を守っていた兵士の中に、国王の手のものがいたようで、こちらが書状を送る前に呼び出されたのだ。
「そちらに滞在中の植物に関する能力者を連れて登城するように」
わざわざ早馬がきて、口頭でそう伝えられたのであった。
「行くのは全然構わないんだけどさ・・・」
「お手数をおかけ致します」
伯爵はすっかり毒気を抜かれたようで、プランに対して敬意を払っている。
「僕がやっておいて言うのもアレなんだけど・・・君はその体で登城できるの?」
伯爵は頭こそしっかりしているが、全身打撲に打ち身、骨も何本も折っていて、動くこともままならない。
とてもじゃないが王宮になど行けるように見えない。
「そうなのですが、呼び出された以上どうにかして行くしかありません」
「僕が伯爵のことを攻撃していたことを知ってて、来いって命令するなんて意地悪だねー」
国王は連れて来られないだろうと思って、わざと呼び出しているのだろう。
ペリエ家の今後ことも交渉したいので、伯爵と跡継ぎに決まったコントレ、能力者のプランとリュードが王宮に出向くことになった。
「え!?私は?」
「ヒカリちゃんはこのお屋敷で待っててくれたらいいよ。 伯爵、任せても大丈夫だよね?」
ヒカリが不安そうにしていたので、プランは確認してくれた。
「壊されてないところにも部屋はたくさんありますから、安心してください」
イヤ、そっちの心配じゃなくって
エヴィと留守番ってのが嫌なんですよ!
「み、みんなのことが心配だなー」
こんな言い訳で連れて行ってもらえるだろうか。
プランさんはここにいたほうが、安全だと思っているのようだ。
困ったと思案しているとリュードと目があったので、こっちに来い来いと呼び寄せた。
ひそひそ話をしたいのだが、背伸びをしてもリュードの耳に届かないので、腕をグーッと下に引き寄せた。
「あのさ、この家に取り残されるの嫌なんだけど」
「一緒に行きたいのか?」
「うん、独りは不安なのよ。それにさ、万が一のときはみんなを助けられるでしょ。何とか連れて行ってもらえるようにプランさんに頼んでくれない?」
2人以外は私が能力者であることを知らない。
「お前、そこまでして付いて行きたいのか!?もしも能力者だとバレたらどうするんだ!」
「国王の前では使わないようにすればいいんでしょ、大丈夫よ!」
「お前の魂胆はわかったぞ!全くあんなののどこがいいんだ?」
「あんなの?って何のこと?」
「どうかされましたか?」
何とすぐ近くにエヴィが立っていたのだ!
私たちが顔を寄せ合って話していたので、きっと邪魔しにきたのだろう!
「べ、別に何でもないよー。」
リュードからさっと距離を取り「じゃあ、プランさんにそう伝えておいてね」とその場から脱兎の如く逃げたのだった。
あの騒ぎの直後だった。
「兄さんにまで手を出すなんて信じられない!一体どんな神経してるんだろう?
クソ、ド厚かましい女だな・・・」
すれ違いざまに、そんな恐ろしい独り言が聞こえたのだった。
リュードとプランさんに手を握られていた時も、恐ろしい形相でこちらを睨んでいたのだった。
あれは完全に殺ビーム出てたな!
だからエヴィと絶対、二人きりになりたくないのだ。
そんな状況になったら、どれだけ文句と嫌味を言われることだろう・・・
しかも、私に言いたいことを吐き出せてスッキリしたのか、何だか前よりも毒が強くなってきている気がする。
問題はなぜ標的が私なのかだ・・・
リュードへのただならぬ気持ちを口にしていたことだし、彼と仲が良い私は目障りだということは分かっている。
だけど『そんなあからさまな言動とる!?』と言いたい。
地球にいた時は、黙っているだけで『怒っているの?』とよく聞かれる方だった。(決して怒ってなどないのだけど)
そのせいか、面と向かって文句を言われたことなどなかった。
はっ!もしかして・・・今までみんなに気を使わせていた罰をこっちで受けているのだろうか??
従者のボルヴィーのことを悪く言ったのが良くなかったのかな、伯爵家と無関係の私には嫌われても害がないから?とか、色々考えを巡らせながらビクビクしているのだ。
そんな心配を他所に、リュードが上手く言ってくれたようでプランさんから一緒に行っていいとお許しが出たのだ。
「リュードに怒られちゃったよ〜。
伯爵家の人達はヒカリちゃんのこと、まだ諦めてないかも知れないもんね。
将来、僕の娘になるかもしれない子を独りで置いて行ったりしちゃダメだよね」
連れて行ってくれるのはいいけど、僕の娘ってどういうこと???
リュードめー、何を言ったのよ!!激しく誤解されてるじゃないのよ!!




