25 嘘も方便
次の日
案内された広間には、どこからともなく集められた兵士たちが武装して待っていたのだった。
驚いている私たちを尻目に、伯爵は話し始めた。
「まずは、お前だ」
名前すら口にすることもなく、リュードのことを指差した。
「お前は青の能力者を捜しに行くんだ。 その間、父親にはお前の代わりとしてこの家の力になってもらうことにする」
要は、次の能力者も補充できたし、リュードは用済みってことね。
「それと、その女も置いていくんだ!」
その女って・・・もしかして私のこと?
「そうだ、お前だ! お前も能力者の素質があるのだろう・・・だったらこの家の為に働いてもらおうか」
働いてもらうって、もしかして能力者ってバレたの?
「ヒカリはこの家には関係ないだろう!!」
「いやいや、お前が能力を持ち去った迷惑料だ。
それに、その女と私なら今度こそ能力を継げる子ができるかもしれないだろう。
私がダメでもこの家には男が3人もいるからな・・・」
はぁ、何それ!!こいつ人のこと何だと思ってるんだ!
「いい加減にしろっっ!!」
リュードは怒号し、感情のまま伯爵に向けて水を放ったのだった!
広い部屋のせいで、水が伯爵に届く前に、兵士たちの盾によって遮られてしまったのであった。
「貴様っ、よくも嘘をついたな!絶対に許さん!!あいつをすぐに捕らえろーーー」
伯爵も怒りを露わにした。
リュードは水圧を強くするが、屈強な兵士たちは身を寄せ合うと、一枚の大きな盾のようになり、ゆっくりとこちらに近づいてくるではないか!
「ははは!お前には水を綺麗にすることや輸送方法は教えたが、戦い方は一切、教えていないからな・・・」
伯爵は自身の勝ちを確信しているようだ。
「リュードの力が戻ったことだし、僕とヒカリちゃんは失礼させてもらってもいい?」
プランは伯爵の人間性を推し量っているようだ。
「そんな訳がないだろう!お前たちは全員、これからずっと私の役に立ってもらうんだ!!」
「だったら、せめてヒカリちゃんは助けてあげてくれない?」
これが最終確認であると、伯爵はまだ気がついていないようだ。
「黙れ、この嘘つき親子が! そう言えばあの女もこの家に子供を預けたいが為に、平気で我が子に嘘をついていたな!!」
勝ち誇ったように言うが、それがプランを秒速で力を出すトリガーであったのだ。
次の瞬間
どこからか延びてきた根に四肢をぎゅっと捕まえられ、凄いスピードで引っ張られ、伯爵は大きな音を立てて壁に打ち付けられた。
「ぐはっ!!」
苦痛の声をあげたが、その程度の攻撃では気が済まなかったようだ。
根は緩んだり、締まったりを繰り返し、その度に伯爵は壁にバンバン打ち付けられている。
リュードと応戦していた兵達も『何事だ?』と気が散ってしまったようだ。
大きな盾は綻んでしまい、兵達はバラバラになってしまった!
そうやって個々になると、水の威力が効くようで、かなり後方まで吹き飛ばせるようになった。
このまま形勢逆転かと思いきや、そう簡単にはいかなかった。
シューティングゲームで全滅させるのが難しいのと一緒で、バラバラになると一人一人に水を当てなくてはいけないので、集中力が必要となってくる。
しかも水しぶきが邪魔で視界も良くない上に、攻撃の当たらなかったものは前進してくるので、じりじりと後退せざるを得なくなってしまったのだ。
「早くここから出ましょう!」
コントレは扉に手をかけたが、外から鍵をかけられていたのであった。
エヴィとボルヴィーも加わり、3人で扉を開けようと体当たりしているが、頑丈な扉はビクともしない。
そうこうしているうちに、伯爵を捕まえていた根は切られ、兵士によって救出されたのだった。
彼は気丈にも立ち上がった。
だがかなりのダメージを受けているようで、両側から兵士に支えられている。
扉のところまで追いやられているのを見て、ここからは逃げられないと思ったようだ。
「お前達に逃げ場所などないっ! フッ、どうやら私の勝ちのようだな・・・」
伯爵は勝利宣言をしたのであった。




