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24 見て見ぬ振りはラク


次男コントレの、幼き日から今までの想いを聞いていると、リュードのことを居ない者としてずっと無視しているのも頷けた。


彼は長男のクリスターよりも先に読み書きができるようになり、次期当主として早くから英才教育を受けていたのだそうだ。


彼は父親の期待に応えるべく、子供らしい遊びに興じる時間を惜しんで勉強に剣術にと励んでいたそうだ。

けれども、彼の努力も虚しく()()()()()()との理由で、伯爵は彼のことを段々と遠ざけるようなったのだった。

そして彼の失望を決定づけたのが、リュードの出現だったと言うわけだ。


しかし、聡い彼は出自のよくわからないリュードが、次期当主に選ばれることはないだろうと踏んでいた。

彼は腐ることなく、能力に頼らないでこの地を豊かにする方法を考えていたのであった。


「ある日、この家の回想録を見つけたんだ。青の能力が現れたのが約60年前。それから能力をもった祖先たちが何をやったか分かるか?」


コントレに問われてもリュードは答えられなかった。


「他国を流れているミーロ川の支流の水量が減少し始めたんだ。そのかわりにこの国にある本流の水量が増加していた。これの意味することが分かるか?!」

俺は固唾を飲んで続きの言葉を待った。


「一族の能力者達が何年もかけてそう仕向けたんだよ。水を売りたい為だけに()()()()()をも動かしたんだ」


「俺はそんなことは知らなかった」


「さすがにもう今はそんなことはしていないようだが・・・

それでも年々、水量は減り続けているようだ。このままこんなことを続けていれば、支流は全て枯れてしまうのではないかと考えている」


「それってマズいんじゃない・・・そうなれば生態系は崩れるし、本流は大雨になれば、あっという間に氾濫してしまうんじゃないの?」

ヒカリが急に意見をしたので、話せもしないと思っていたコントレは驚いたようだ。


「その通りなんだ。俺も父にそう進言したよ。なのに父は『青の力があれば川の氾濫を抑えることなど造作もないことだ。』と取り合わなかった。それどころか『そうなればもっとたくさんの水を売ることができるな』と笑ったんだ」


「俺はそんなことは知らなかった・・・・無理矢理に能力を押し付けられただけだ!」


いやそうだろうか・・・違う・・・被害者ぶっていただけで、能力について何も知ろうともしていなかったのではないだろうか?

俺はこの家に巻き込まれただけだと、いつも他人事のように思っていた。

能力も一時的に預かっているだけで、いずれは返すものだからと伯爵の言われるがままに、この力を使っていた。

自分の頭で何も考えようともしていなかった。

知らず知らずのうちに己の保身を最優先にしていたのではないだろうか!!


「能力を使えばミーロ川を元通りに戻すことができるのか?」

「可能性はあると思う」


リュードは『今も能力者だ』と打ち明けようとしたが、それを阻止するようにプランが話し出した。

「この子はもう能力を失ってしまったからね・・・残念ながら、力にはなれそうもないな」

コントレは「そうですか」と残念そうな、でも何だかホッとしているようであった。

彼にも明日の話し合いに顔を出すように勧めておいた。


コントレが出て行くと、ボルヴィーが感嘆の声をあげたのだった。

「あの方があんなにもこの家のことを考えていらしたとは、正直、驚きました!」


いつも伯爵そっくりの無表情な顔で、偉そう振る舞っていた。

どうせ世の中など舐めきっているのだろうと思っていた。

なのにさっきの彼は年相応の少年で、憤りや、やり切れなさを内に秘めていて、それを消化できずに足掻いていた。

ちゃんと血の通った人間らしい振る舞いだった。

しかもこの家の行く先を誰よりも案じているのだ。


プランの様子からコントレには好印象を抱いているようだ。


勤め先であるこの伯爵家の跡継ぎ候補が思いの外、知慮に富んだ人だったと分かり、『このまま坊ちゃんの従者としてしばらくはやって行けそうだな』と、ボルヴィーは計算高く考えていたのであった。



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