23 眼を見て話そう
一晩よく考えて答えをくださいと、伯爵のところを後にしたのだった。
リュードは自分の部屋に私たちを通すと、慌てて扉を閉めた。
「この家の役に立つだなんて、ここに残るつもりじゃないでしょうね!」
そう言ってプランさんに詰め寄ったのだった。
リュードにしてみれば、まだ会って数日の父親らしき人に恩を着せられるのは嫌な上に、母親のことが気掛かりなのだろう。
シーラさんは今も首を長くして、プランさんの帰りを待っていることだろう。
一体、母のことはどうするつもりなのだと聞きたいようだった。
「それは伯爵の返事次第かな・・・」
考えるも何もリュードの能力が無くなったと思っているのだから、プランさんの能力は是が非でも欲しいと思うのだけれど。
「普通ならそう考えるだろうね。だけど、この一族は青の能力で栄えたんでしょ。
水伯爵と言う名で世に知られていることだし、その称号で呼ばれている者の矜持ってものがあるんじゃない。そう簡単に青を捨てて、緑に乗り換えるかな〜」
「何を呑気なことを!」
リュードは怒った。
伯爵の能力に対しての執着が半端ないことを熱く語り出したのだった。
「なるほどー、だからあんなにも子沢山なのね!ただの女好かと思ってたけど、能力を引き継がせる子が欲しくて、そこいら中に種を巻いてたのかー!」
「そうだ!あいつはそんな最低な奴なんだ!!」
リュードは強く肯定した。
プランさんはどう思っているのだろうと、ちらっと見ると目が合った。
「ヒカリちゃんって一体いくつなの?」
「へ?」
「いや、年頃の女の子が一番軽蔑しそうな行為を『そこいら中に種をまく』なんて言い回しをするから不思議だなと思ってさ・・・」
ぎくー、プランさん鋭いな!
能力者は見た目が変わらないことだし、気になっていたのかしら?
リュードも私の見た目と実年齢のギャップに心当たりがあるようで、食い入るようにこちらを見ていた。
知ったら『ヒカリって俺のかーちゃんと同じぐらいなのかよ!』とからかわれるだろうな〜と思いつつ口を開こうとした。
だが私が答えるよりも早く、部屋がノックされたのだった。
「食事の支度が整いました」
侍女が私たちを呼びにきたのだ。
この間見かけた若い奥さんと赤ちゃん、それに伯爵自身も食事には現れなかった。
だから一緒に帰ってきたメンバーに次男が加わっただけで、食事は始まった。
次男のコントレは、戻って来たリュードにも、エヴィに対しても気持ち悪いぐらいにノーリアクションだ。
長男のクリスターがいないことも、知らない男が同じテーブルに着いて食事をしていることも、何も不思議に感じないらしい。
昨日までと全く変わらない日常のように食事をしていた。
たまらずに、先に声を掛けたのはプランさんだった。
「ねえ、ねえ、君も伯爵の息子なの?」
コントレは質問にも答えず、黙々と食事を続けている。
プランさんは怯むことなく、空いていたコントレの隣の席に移動し、同じ質問をした。
彼は面倒そうに顔を上げプランさんを一瞥すると「そうですけど、それが何か?」とようやく答えたのだった。
「初めまして、リュードの父親のプランです」
握手をするべく手を差し出したが、彼がその手を取ることなかった。
プランさんはもう片方の手で、コントレの手を掴んで無理やりに握手をした。
「そういう態度は人を不愉快にさせるからやめたほうがいいよ」
はじめは優しく言ったが、グイッとその手をひっぱり顔を近付けると「そうやってリュードのことも無視し続けていたのか?」と問い詰めた。
握手をする手にかなり力を込めているようで、コントレは眉根を寄せた。
「痛いっ!!」
我慢できなくて声が出たが、プランさんは手を離さなかった。
「まだ僕の質問に答えていないよ」
「そうですよ!」彼は強引に手を振りほどいた。
「光が見えるってだけで、血縁者でもない者を引き取ったりするからですよ!
そいつがこの家にいることが目障りで仕方なかった!!
ずっと俺を後継ぎにしたいと言っていたのに、能力者のそいつが現れた途端、父はそいつを優遇し始めた。こんな不条理受け入れられるわけがないだろ!!」
「そうか。君も辛かったんだね」
プランは彼の心情を慮って同情した。
「光が見えるって・・・能力者ってそんなに必要なのか!?
お前の顔を知っている屋敷の者を総動員させて捜索していたんだぞ!」
リュードはそれを聞いて顔を曇らせた。
「どうやったら光ってみえるようになるんだよ!なあ、教えてくれよ!!」
コントレは感情を爆発させ、リュードの肩を揺らしながらそう尋ねたのだった。




