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22 気がつく人と気がつかない人


チャーコブを出て1週間余りで、私たちは水伯爵の屋敷に到着した。


行きの徒歩&野宿とは違って、馬車移動&宿も利用させてもらっていたので快適であった。


だがあのトゲを持った小動物エヴィが目を光らせているので、道中は気を使った。

刺激を与えないように、極力リュードとは話さず距離を取るようにしておいた。

リュードもここに戻ってくることが不安だったようで、途中から口を開かなくなったことも幸いした。

プランさんとリュードの3人で泊まっていたことも、バレることなくここに来れてホッとしている。



伯爵はリュードを見るなり、猛ビンタを喰らわせた。


私は驚いてプランさんを見たが、彼は意外にも平然としていた。


伯爵は一発では気が済まなかったようで、2度、3度とリュードの頬を叩いた。

どこからか根っこが伸びてきて、伯爵を羽交い締めにするのではないかとワクワク、じゃない、ドキドキしてしていたのだがそのようなことはなかった。


「その辺でもう許してやってくれませんか?」

怒りが収まらない伯爵にむかって、プランさんは冷静に声をかけたのだ。

「初めまして、リュードの父のプランと言います。息子が長い間お世話になりました」

伯爵はやっと手を止め、彼の方を見たのであった。


伯爵は突如現れた男を食い入るように見ていた。


リュードの父親が出現したことに驚いたわけではなく、明らかに彼が緑色の光を放っていることに目を奪われているようであった!

その証拠に、プランさんの顔ではなく体の方を凝視していたからだ。


水伯爵は弾かれたように、リュードの方を振り返った。

「おっ、お前!!光、光はどうしたんだ?? ま、まさか・・・消えたのか・・・」

私と同じように最低限の光しか放っていないので、元能力者の伯爵にはやはり感知できないようだ。


その点、現能力者のプランさんは、私たちに「どうしてそんなに光が小さいの?」とすぐに不思議そうに尋ねてきた。

私が彼女に教えてもらった方法で大きくしたり小さくしたりしてみると、それを興味深げに見た後でこう言ったのだった。


「そんなに光が小さければ素質のある者にも気付かれることはまずないだろう・・・権力者に利用されたくなければ、そのままでいなさい。伯爵にも力を失ったと言うんだよ」


プランさんに言われた通り、リュードは「光は消えてしまいました・・・」と嘘をついたのだった。


伯爵は激昂し、再びリュードを打ち付けようと大きく手を挙げた。

「お前!何をしたのかわかっているのか!!」

だが大きく振り上げられた手がリュードに当たる前に、プランさんはその手を捕まえたのだった。

「まあまあ、落ち着いて下さい。

能力の無くなった息子に代わって、私が伯爵様のお役に立てるように尽力いたしましょう!」


伯爵はプランさんをしばらく睨んだ後、掴まれていた手を振りほどいた。

「それで、お前の能力は何だ!」

説得に応じたと思われたくないのか、いつもよりも尊大な口のききかただ。


プランさんは飾ってあった生花の蕾に手を翳し、その花を咲かせた。


「フン、その程度のことで、青の能力を補えるわけがないだろう!!」

お話にならないとばかりに鼻で笑ったのであった。


プランさんは窓の外の庭園を指差した。

「では、あちらを見ていて下さい」と、湖の周りに等間隔に植えられた木に注意を向けさせる。


しばらくの間、外を眺めていたのだが変わって行く様子もない景色に、伯爵は痺れを切らした。

「悪あがきはもういい!!」

吐き捨てるように言ったが、プランさんは伯爵にもう一度外を見るように促した。


ほぼ同じ大きさだったそのうちの一本の木が『アハ体験』みたいに、見る見る大きくなっていくではないか!!


私たちの表情で何かを感じ取った伯爵は、我慢できなくなりもう一度外を見たのだった。

無表情な伯爵もぐんぐん大きくなっていく木に、目を丸くしている。


「植物をそんなにも速く成長させられるのか!!」

「そうです、わかっていただけましたか! 聡明なあなたでしたら、この力がどれほど役に立つかお分かりいただけるでしょう」

プランさんは勝ち誇ったように、そう言ったのだった。


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