20 我慢は良くない
水伯爵のところへ戻るべく、みんなで馬車に乗っている。
この馬車はリュードのことを捜しにきた、三男のエヴィが乗ってきた物だ。
五人乗ると手狭ではあるが、行きの時とは違い、歩かなくていいので快適である。
兄弟たちは、青い父親に命令されて、どうやらここまで捜しに来たようだ。
伯爵のところに戻ることに若干の不安はあったが、二人の能力を見た今なら、軍隊が待ち構えていても勝てるのではないかと思えた。
三男エヴィの付き人ボルヴィーはリュード父の能力に夢中のようで、質問攻めにしている。
プランさんの場合、いきなり能力が使えるようになったらしい。
私のように入れ替わったわけではなく、リュードのように人から授けられたのでもないようだ。
だから能力のことも誰にも教えてもらえず、試行錯誤の末にやっとコントロールが出来るようになったそうだ。
木に取り込まれたクリスターは、言わば仮死状態になっているらしい。
呼吸はできるように鼻の穴は確保されているそうだ。
水分は点滴のような物なのだろうか?
木から与えてもらえるそうである。
「植物とどうやって意思の疎通をおこなっているのですか?」
それ、いい質問!私も気になってたんだよね・・・
映画みたいに急に植物が大きくなったり、人が木に埋まるんだもん。
本当にびっくりしたよ!!
そんな話の途中だというのに、三男のエヴィがおずおずとリュードに話しかけてきた。
「リュードさん、あの〜・・・その・・・」
「何だ?」
面倒そうに返事をしている。
リュードも父親の能力に度肝を抜かれたようだった。
さっきから前で話されていることに耳を傾けているのは、どうやら私と一緒のようだ。
坊ちゃん、なぜこのタイミングで話しかけてくるかなー??
エヴィはどうやらリュードと仲良くなりたいようだが、恥ずかしいのか、上手く話せないようだ。
そんな気持ちを微塵も理解していないリュードは、何も言ってこないことに益々、気分を害しているようだ。
憎っくき伯爵の息子なので、冷たく遇らう気持ちもわからなくはないけど、もう少しぐらい優しくしてあげたらいいのに。
「リュードって彼に何か嫌なことされたことあるの?」
「・・・・・・・・」
私が追い出されたときも、彼だけは心配そうにしてくれていたので、ついつい味方してあげたくなった。
「ベタベタと擦り寄ってくるのが怖い」
「それは、あれだよ!リュードと仲良くなりたいんじゃないの?ね?」
エヴィは『そうです、そうです』と言わんばかりに頷いている。
「伯爵家の者は信用できない・・・」
リュードはボソボソ答えた。
彼の心の傷をよく知っているので、それ以上何も言えなくなってしまった。
前に座っていた付き人のボルヴィーに助けを求めようとする。
なのに彼はプランの話に夢中で、坊ちゃんが冷たくあしらわれていることに気がついていない。
つま先でツンツンと突いて注意を促す。
ボルヴィーさんは面倒そうにこちらを見てきた。
私は『あっち、あっち』と坊ちゃんの方を差した。
ほら、坊ちゃんが困っていますよ!助けてあげて!
ボルヴィーはチラッとそちらを見たが、全く気にせずにプランと会話を続けるではないか!!
もう一回やってみたが、やはりシカトされてしまった・・・
その日泊まる宿に着き、エヴィと二人になることがあったので話しかけた。
「さっきはリュードがゴメンね」
彼は恥ずかしそうに「そんないいんです、いいんです」と言った。
「仲良くしようとしてくれているのに、伯爵家の人間ってだけで一括りにするのは良くないって、リュードのことをよーく叱っておくからね!」
この子はリュードに何か嫌なことはしてないんだから、あんな風に避けなくてもいいのに!
彼は黙っていた。
「それに、あのボルヴィーさんっていつもあなたに対してあんな態度なの?
従者なのにあなたが困っていても助けてもくれないなんて・・・」
「・・・・・・してよ」
何か言ったようだが聞こえなかった。
「ん?どうかした?」」
「いい加減にしてよ!君ちょっと顔が良いからって何を言ってもいいとでも思ってるの!」
えーーーー!!なにーーーー!!
突然の強い口調にびっくりした。
どーなってんのーーー?!
「ボルヴィーは僕がこんな消極的な性格だから自己主張ができるようにと、わざと突き放す時があるの!!
それに君、リュードさんとどんな関係なわけ?
ちょっと一緒にいたぐらいで馴れ馴れしい!!
だいたい〜リュードさんは女になんか全く興味ないんだからね!!
顔はかわいいからちょっとは憧れてたけど、こんなに気が強いんなら最初のときみたいにずっと黙っていればいいのに!!!」
ポカ〜〜〜〜ン
私は正面切ってこんなに文句を言われたことに面食らっていた。
消極的・・・そんな感じしてたけど・・・
こんなにも流暢に話せるじゃない・・・しかも、なかなかの悪口をぶっ込んできてるよ。ダメージ大ですよ。
さも人畜無害そうな小動物にいきなりガブーッと噛み付かれたことに、私はかなり衝撃をうけていたのであった。




