18 人の話はちゃんと聞く
男たちが水圧で押し出されてくるのを、店の外から見ていたのは三男のエヴィとお付きのボルヴィ、そして長男のクリスターだった。
「あいつ、くだらないことに能力を使いやがって!!」
クリスターは真っ先に店に向かった。
坊っちゃんに頼まれたので、クリスターに伝言を送ったのだ。
『リュードさんに繋がるかも知れない情報を手に入れました。何か分かり次第、また連絡します。』
どこにも見つかりましたとは書いていない。
なのにあのバカはここにやって来たのだ。
「リュードはどこだ?」
「に、兄さん・・・・ど、どうしてここに!!」
真っ青になって、返答に窮している坊ちゃんに代わって答えた。
「リュードさんなら、まだ見つかっていませんよ」
「だったらどうして、宿屋でのんびり過ごしてんだ!!時間を惜しんで捜しに行けよ!」
『だったらお前もそうしろよ!』と言いたい。
どうせ捜索は人に頼んで、お前は鼻くそでもほじって待っていただけだろう、と心の中で悪態をつく。
「今は情報を待っているんです」
「情報だと?」
「どうやらリュードさんは、伯爵に追い出された少女と一緒にいるようなのです」
「ああ、あの話せないバカ女か」
「この近くの商会に時々くるようなので、彼女が来たら連絡をもらえることになっているんです」
「だったら、今からその商会に行って話を聞いて来い!」
コイツ、今、俺の話聞いてたのか・・・こんな理解力のないバカには説明するだけ時間の無駄だな。
「だからー、店を訪ねてきたら、ここに連絡がくることになっています!!」
俺があまりにも横柄な口調になったので、坊ちゃんが言い足してくれた。
「お店の人も、彼女のことを何も知らないそうなんです」
「そちらこそ何かリュードさんに繋がる情報は見つかったんですか?」
バカが何か言い返す前に、質問をぶつけた。
「ああ、モチロンだ! あいつ、町で服を売ってやがった!」
次の言葉を待ったが、続きは無さそうだった。
「・・・・・・・・・・・・ん、それだけですか?」
よくもまあ、その程度のことを偉そうに言えるもんだ。
そのときに丁度、セイロン商会から「例の少女が来た!」と連絡が来たのだった。
店内は水浸しで大変なことになっていた。
「リュード!どこだーー!」
クリスターは大声で捜していた。
逃げた者が、追いかけてきた人の呼びかけに答えるわけないだろーが。
坊ちゃんと俺は商談室を目指した。
そこには店の支配人に向けて、放水しているリュードさんがいた。
「リュードさん!捜しましたよ!」
坊ちゃんの登場により、支配人が情報を漏らしたことを察知したリュードは、さらに水圧を強くした。
「よくも話してくれたな!」
容赦ない水攻撃に支配人は言い訳もできないようだ。
面白いので付け足してやった。
「張り紙を見せてもらったんです。そしたらシーラさんという女性を捜していると書いてあったので、リュードさんがその少女が一緒なのだと気がつきました。
あとは、少女が来たら『連絡してくれ!』と金を握らせたんです」
「この守銭奴め!」
真実を知ったリュードさんは更に勢いよく支配人に水を噴射している。
そこに登場したのはクリスターであった。
「おい、リュード!! テメー、こんなところにいやがったのか!手間かけさせるんじゃねーよ!」
支配人への放水はそのままクリスターに移って行った。
「がはっ、テメ・・・・ぐぶぶ・・・」
ヤツが無様に水を浴びせられている姿は、最高にスカッとした。
伯爵家に仕える立場上、腹を抱えて笑うわけにはいかないが、知らず知らずうちに顔がニヤけてしまう。
表情を必死に押し殺していると、あの少女と目があった。
「いい加減にしなさい、溺死するよ!」
その場にいた第三の男がそう嗜めると、リュードさんも危険だと思ったのか放水を止めた。
クリスターは苦しそうにゲホゲホ咳き込んでいる。
「君が殺人なんてしてしまったら、シーラに顔向けできないだろう!」
そんなお説教をしている間に、クリスターの呼吸は戻ったようだ。
「よくも、やりやがったな!!」
リュードに掴みかかろうと、勢いよく向かって行った。
その時、大きな音と共に窓際に置いてあった鉢植えが一斉に割れたのだ!
植えてあった花はすぐに規格外の大きさになると、クリスター目掛けて根っこを伸ばした。
「うわーーーー!!! 何だこれは!!」
彼は、その根に足を絡め取られ、無様に床に倒れ込んだ。
リュードに説教をしていた男が問いかけた。
「君が伯爵のところの長男か?」
「それがどうした!それより何だこれは!早く助けろよ!!」
「僕の息子が、君に世話になったと話していてね」
「は?お前、そいつの父親なのか? 貧乏人がっ!!
伯爵家に拾ってもらってくせに、能力を持ち逃げしやがってよー!!
どう・・あがが・・・」
大きくなった植物の花の部分が、クリスターの口の中にズボッと放り込まれた。
彼は最後まで言い終わらないうちに、みっともなく大口をあけたまま話せなくなってしまった。
「聞いていた通りの人だね」
彼は笑いながら、リュードの方を見た。
「こんなにも地位をひけらかすような愚か者は、少々痛い目を見た方がいいだろうね」
異論はないかな?と笑顔でみんなを見渡したのであった。




