15 ストレスを溜めるのは良くない
それから1週間後にその花は咲いた。
だが花の精は現れない。
「やっぱり、母の作り話だったんだよ」
リュードは何だかホッとしたように言ったのだった。
お母さんと一緒にあの花を見られたことに、彼は満足しているようだった。
だけど私は納得できない。
二人がそれでいいなら、口を挟むべきことではないことは分かっている。
だけど、シーラさんの苦労や、リュードのことを想うと、一言・・・
では済まないか、有りったけの文句を言ってやりたい。
それというのも、誰かに八つ当たりしたいほど、私のストレスが溜まっているからだ!
やっと一人で部屋を使えると楽しみにしていたのに、リュードがついた嘘のせいで、私たちは同室なのだ。
シーラさん、あなたどういうつもりで私たちを同じ部屋にしているの?と聞いてやりたい。
年頃の男女の同室を、親が勧めてどーすんだ。
しかも、顔を合わせる度に「リュードのどこが好きなの?」「どうやって恋人になったの?」そんな質問を、乙女の様に瞳をキラキラさせながら訊いてくるのだ。
それを誤魔化すのも一苦労だ。
それに使用人という名目でここに置いてもらっているので、意外にもたくさんの仕事を頼まれる。
それは別に構わないのだが、リュードの恋人という設定でいる限り、みんなの目(主にシーラさん)もあるので、きちんとしないとと気が張る。
「あー、疲れた」と部屋に戻っても、そこにリュードがいるという悪循環だ。
「イライラするな〜」
私は雑草をブチッブチッと手荒に抜いた。
「植物が痛がっていますよ」
どこからともなくそんな声が聞こえてきた。
条件反射のように「あ、すいません」と謝り、そちらを見た。
そこには緑の光に包まれた男が立っていたのであった!!
「リュ、リュ、リュードーー! ちょっと、ちょっとーーー!!こっち来てー!」
「ど、どうかした?」
リュードが慌てて近くに来た。
「みどりよ!緑が現れた!」
リュードも目を見開いて、その緑の人を見ていた。
「ガシャーーーン」
何かが割れるような音がしたので、振り返るとそこにシーラさんが立っていたのだった。
「・・・・・花の精さん来てくれたのね・・・」
「「えええーーーーーっ!!!!!」」
シーラさんの言葉に、二人は大きな声で驚いたのであった。
移動して室内に入ったはいいが、妙な沈黙が流れていた。
シーラさんは久しぶりに出会う恋人?に何も言えず、モジモジしている。
どうやら彼のことを、まともに見ることすら出来ないようなのだ。
この人、本当に私と同年代なのだろうか・・・擦れていないというかピュア過ぎる。
リュードは不貞腐れていた。
ついこの前、事情を知ったばかりなのだ。
父親だと言われてもピンときていないようだ。
でも、シーラさんへの仕打ちは許せないものがあるようで、それが表情に出ている。
一番無関係な私が口出しすることでもないし、緑の光をボーッと眺めていた。
この緑の人、一体いくつなのだろう??
リュードの父親になんて到底見えない。
「昔、この離宮に住んでいた若い女性を知りませんか?
あなたよりも、もう少し年上の方です」
どうして、私に聞いてくるのよ。
「それは、彼女ですよ」
私はシーラさんの方を指した。
「シーラ? 君、シーラなのかい?」
男は立ち上がり、シーラさんに歩み寄った。
名前を呼ばれたシーラさんも立ち上がった。
「君、そのー、随分と変わったね・・・」
ちょっと何、その歯切れの悪い言葉!
老けたとでも言いたいのか、ゴルァー
「あなたは何も変わっていないのね。私はこんなになってしまって恥ずかしいわ」
彼女は顔を手で隠し、俯いてしまった。
「君のことをずっと捜していたんだよ」
緑の人は彼女の手を掴み、顔から外した。
「やっと会えたね!」
シーラさんをぎゅーっと抱きしめた。
二人のラブシーンにリュードは黙っていられなくなってしまった。
「ちょっと、待てよ!!今まで放って置いて今更、どういうつもりなんだよ!!」
緑の人は彼の剣幕に驚いたようだ。
「こちらの彼は?」
「息子のリュードよ」
シーラさんは誇らしげにそう答えた。
緑の人は「息子、息子」と呟きながら、シーラさんから離れた。
「やっぱり、結婚していたんだね・・・すまなかった。
もうここには来ないから」
そんなことを言いながらここを出て行こうとしていた。
「ちょっと待てよ!どうして母さんのことを捨てたのかちゃんと説明しろよ!!」
緑の人は振り返ると「捨てたってどういうこと?」と、逆に聞き返してきたのであった。




