14 親の過大評価
翌朝、花が咲くまでここにいても構わないのか、母に訊いてみた。
俺は純粋に母が大切に育てていたその花が、どんなものか見てみたくなったのだ。
だが、ヒカリは復讐に燃えていた。
復讐相手がどこの誰だかわからないので、母の花の精の話に賭けるしかないのが実情だ。
「いい機会だから、お母さんときちんと話をしたほうがいいと思うよ」
そうヒカリに背中を押されたのだった。
「男の子は成長が早いわね・・・別れた時は同じくらいだったのに、もう見上げるほどに大きくなったのね」
「母さん、ごめん。俺、伯爵のところに居辛くなって飛び出したんだ」
「何かあったの?」
母は心配そうに見つめてきた。
母さんと離れてから、嫌なことしかなかったよ。
伯爵は、俺の能力目当てで引き取って、さんざん利用された。
息子たちをはじめ、屋敷の使用人にまで地味な嫌がらせを受けていたんだ。
そんなこと、やはり、母には言えない。
「本当はわかっているのよ・・・」
母がそう言うので、何か知っているのだろうかと驚いて顔を上げた!
「あの可愛らしい彼女のことでしょー、伯爵の娘なの?
それとも誰かの奥さんとか・・・何か不貞を仕出かしたんでしょ!?
それで逃げて来たのね!」
「・・・・・・・」
母さん、あなたもか!!
なぜみんな一様に、俺とヒカリのことをそう思うのだ?
「リュードは昔からとても優しかったし、こんなにも格好良く育ったんだもの。
そりゃ、誰だって好きになっちゃうわよね〜。自分を責めちゃだめよ!決して決してリュードが悪いんじゃないわ!!」
しかも親バカ全開・・・
「違うよ、彼女はここに来る途中で知り合っただけなんだ!!」
「嘘おっしゃい!あなたたちが廊下で抱き合っているところを、この目でしかと見たんだから!」
母さんは証拠は上がってんだぞとばかりに睨んで来た。
「リュードはいつから知り合い程度の女性のことを、抱きしめたりするようになったの?」
返答次第ではタダでは済まさんぞと言わんばかりだ。
俺とヒカリが能力者であることを打ち明ければ、母にも事情を分かってもらえるとは思う。
それをすると、伯爵家でのことも話さなければいけなくなる。
ここは一つ、もう母が得心する嘘を付くしかない。
ヒカリ、すまん。
「彼女とは恋人同士です・・・」
「やっぱりねー!だと思った!!」
それでそれでと、母は物欲しげに次の言葉を待っている。
「彼女は伯爵家で働いていて、ふたりで逃げて来たんです!!」
「まあ、まあ、まあ〜!」
母の顔がパァーっと明るくなった。
親の恋愛話には興味はないが、親は子供の恋愛話には喉から手が出るほどに興味があるようだ!!
「ロマンティックね〜。
いいわよ。しばらくここにいなさい!
使用人としていれば、私みたいに父には見つからないでしょう!」
母がここに戻ってきていることを、何と両親は知らないようなのだ。
「父が昔の使用人を戻してくれていたお陰で、こうやって暮らせているのよね〜。しかし気付かれないものだわね。ふふふ」
ふふふじゃないよ母さん。
茶目っ気があると言うか、図太いというか。
『見つかったらどうするのだろう』とまた一つ心配事が増えた。
「一つ聞きたかったんだけど・・・伯爵はどうして俺を引き取ったんだと思う?」
母は俺が能力者であることを知らないから、ずっと気になっていたのだ。
「だってリュードは生まれつき気品があったもの。そういうのって隠し通せるものじゃないでしょう。やはり高貴な人には見つかってしまうものなのかと、感心したのよね〜」
「・・・・・・・」
母さんの俺への評価は、聞いてるだけでお腹いっぱいです。
「とにかくしばらくの間、お世話になります。よろしくお願いします。」
無理やりに話を切り上げて、そそくさと、この場を離れたのだった。




