10 毎年、勝手に年は取る
宿屋生活になって何日も経ったが、リュードのお母さん捜しは難航していた。
シーラという名はどこにでもある名前のようで、情報をもらったら片っ端から会いに行ってるのだが、1日かけても数人にしか会えないので、どうにもこうにも効率が悪い。
「私が聞き込みをして、あなたが一人で捜しに行く方がいいんじゃない?」
当たり前だが、私はシーラさんの顔を知らない。
「それもそうだな」
リュードも思うように進まなくて焦っているようだ。
「他に何かシーラさんの特徴ってないの?」
ブラウンヘアーに同じ色の瞳。
齢は私とあまり変わらない40歳ぐらい。
そりゃー、ショックを受けましたとも!!
「ええーっ、お母さんってそんなにお若いの?」
「俺が19だから、そんなものだろう」
「・・・・・・そっか」
『気にしないもんね~』
『軽症だもんね〜』
『こっちの世界とは結婚観も違うもんね〜』
頭の中で必死に言い訳をしていた。
どんなに見た目が若く美しくなったところで、私の中身はそう簡単には変わらない!!
「実は・・・母は片足を少し引きずるような歩き方なんだ」
「どうして、それを早く言って・・・」
叱責しようとしたのだが、リュードは思い詰めたような顔をしていた。
「黙っていて、すまなかった。母はそのことを凄く気にしていたんだ。だからヒカリにも言えなかったんだ」
「そっか」
誰だって触れてほしくないことの一つや二つはあるもんだ。
彼は母親のコンプレックスを隠しておきたかったのだろう。
「教えてくれてありがとう。聞いたからには有力な情報を手に入れてくるから!任せといて!」
この日を境に、シーラさんの情報はかなり絞られるようになった。
が、1日中聞き込みをしても条件にヒットしない日も出てくるようになった。
「ここから移動した方が良さそうね」
私たちがいるのは街の中央なので、外れに行けばまた違う情報が得られるのではないかと考えた。
「そうだな」
彼も手応えがないように感じていたようだ。
ここを移動する前に、ライターを売ったセイロン商会を訪ねてみた。
以前の時とは違い、すぐに、店の奥に通された。
リュードは母親の捜索に出ているので、今日は私ひとりだ。
「これはこれは、ようこそおいでくださいました。」
店の支配人らしき人がニコニコ顔で、商談室に入って来た。
「またあの素晴らしい商品を売っていただけるのでしょうか?」
「今日はその件じゃないんです。ここって色んな人達がやって来ますよね?」
ライターを売ってもらえないのだと分かると、彼はあからさまに落胆していた。
「まあ、そうですね」
「そこで、店にこの張り紙をしておいてもらえませんか?」
そこにはシーラさんの情報を記載してある。
リュードに似顔絵を描かせたが、イマみっつぐらいだったので、それは載せなかった。
でも、こうしておけば、ここを留守にしている間も情報が手に入るわけだ!
「こちらは構いませんが・・・」
「わかっていますよ、次もこちらであの商品を売らせていただきますよ!」
支配人の顔がパッと明るくなった。
「そうですか、そうですか。では一番目立つところに貼らせていただきましょう!」
「情報もしっかり聞いておいてくださいね」
「勿論です!」
帰る間際
「そう言えば、ライターをダージリン商会で査定してもらったら、もっと高値で買い取ってくれると言ってましたよ!」
支配人はギョッとしていた。
「だけど、私はセイロン商会さんのことを信用していますし、今回のことでもお世話をかけますし、あちらで売るつもりはないですよ」
そんな嘘をついて店を後にした。
こう言っておけば、次はもうちょっとライターを高値で買ってくれることだろう。
それにシーラさんの情報も、ないがしろにはしないだろうと考えて、嘘をついたのであった。




