そのにじゅうご コンタ33歳 お姫様、学園入学
お姫様が学園に入学した。
してしまった。
非番以外は、朝から晩までべったり張り付いていた俺。
さすがに女子寮には入れない。
女性兵士がお姫様を守ることが多くなり、
気がつきゃ、よくマリアといる俺。
「お姫様も学園なのね。私の天使たちも大きくなったわ」
しみじみとつぶやく、マリア。
きれいになったけど、こいつも年取ったな。
俺が33歳ってことは、こいつは、28歳かあ。
であった時は、確か17か。
アークレッドに移住したのが18歳。
「あれから10年か…」
今日はビールじゃなく、差し入れに持ってきたリオンのウィスキーの氷がカランと音をたてる。
つぶやいて、ふっとマリアが笑った。
すごく幸せそうに。
「ありがとうね、コンタ。あの時アークレッドに誘ってくれて」
よせやい。
「なんだよ、いきなり」
まるで別れが近いかのように。
いや、待てよ。
つい忘れがちだったけど、コイツはランドル公国の末っ子だけど、皇女だ。
本人、アークレッドで掃除も洗濯もやってるが、ランドル公国に戻れば、入浴や着替えまでやって貰える皇女さま。
現に、いま、この瞬間だって、護衛が目を光らせているはず。
まあ、アークレッドがあまりに平和ボケなのと、護衛でも武器をもつ国民認めない、
ヤーガバーバーやヤーガジージーたちにおいはらわれて、
となりのリオンからわざわざ通ってる護衛だけど。
俺はリオンの近衛兵だけど、姉ちゃんに拾われ、姉ちゃんがリオンの親友お嬢様に預けた。
兵士になったからって、アークレッドに住んでるわけじゃない。
ただ、護りたいだけだ。
たくされた、小さな生命を。
だけど…、。
「…10年か。俺はもう、13年だな。確かに、子供の成長ははやいな」
ーね、と笑う皇女さま。
微笑んで、そのままコテンと眠った。
「あーっ、もうっ!コンタじぃのせいだよ!こんな度数の強いお酒持ってきて!」
責任とって送るようにリーナが怒る。
おい、俺は確かにウィルのおじさんだが、ジジィじゃないぞ。
それに、味するのかってくらい薄めた水割りどころか、マジ水みたいなやつで酔うか?
また、どうせ、ろくでもない論文読みあさってたんだろ、夜中まで。
大国リオンの王立図書館の本を読破したくせに、
お前らがあっさり追いつくから、教師も大変なんだよ。
ー教える方も、教わる方も。
手抜きを知らない皇女さま。
ほんと、天使達で頭がいっぱい。
ーちょっとくらい俺、いるのかな。




