そのにじゅうよん コンタ32歳 自転車とお姫様
バカと天才は紙一重。
確か、むかしにツルッパゲが教えてくれた。
いま。俺はそれを実感している。
なんで、俺、こんなものつくってんの?
せっかくの休日を、マリアにこき使われて、
作りましたよ、なんか、輪っかがふたつある乗り物。
自転車ってやつ。
涼しくなったから身体を動かしたいって、リーナとセレナがマリアに訴えたのは知っている。
だって、俺も一緒に飲んでたから。
ツルッパゲでも半日かけて解く問題を山のような宿題にだされた悪ガキ五人組。
天才を教師にもつって大変だなあ、なんて人ごとに思っていたら、
忘れてましたよ、マリア・フォン・ランドル。
こいつは稀代の大天才。
大天才と大馬鹿は半紙一重。
アークレッド一周のトライアスロンなる競技を、
可愛い可愛い天使達って言うくせに、
やらせましたよ鬼教師。
作らせられました、自転車を。
こんなもん、乗れねーだろって思ったら、
手本もなしに、説明だけで乗りこなす悪ガキ五人組。
アークレッドの五人組。
決して、俺の運動神経が悪いわけじゃない。
たぶん。
なんか、手伝い賃金代わりに一台貰ってきたら、
あっさりツルッパゲが乗りこなし、お姫様に手取り足取り教えてる。
「さすがポマス様。惚れなおすわ」
いや、お嬢様、いつも、毎日、惚れてるでしょ?ツルッパゲに。
ムダにハイスペックなツルッパゲ。
ないのは髪だけツルッパゲ。
「くそっ!わしが教えたいのに!」
地団駄踏んで悔しがる大国リオンの王様。
今日だけは気が合うな。
きゃっ、きゃっ、と笑うお姫様。
ー俺が教えたかった、お姫様。
笑顔だから、ま、いっか。




