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読む気を削ぐ文章

作者: ダイナ

 せっかく設定が面白かったりキャラが魅力的であっても文章が残念だと読む気がなくなってしまう。といっても表現力がどうだとか高尚なことを語りたいわけではない。語るほどの教養もない。私が作品を読んでいく中でどうしても違和感を覚えてしまい、「この作品読むの大変だな」と思わせて読む気を削いでくる文章がどういうものかを語っていく。

 なお、このエッセイで問題提起をしたり、改善案を提示するわけではない。また、本来論ずるにあたり必要であろう明確な情報ソースからの定義確認などは全くしていないのであしからず。



※これ以降、「----」で上下を挟まれている文章は例文。





その一. ○○こと××の誤用


 ○○には通称、××には本名が入り、通称と本名が同一人物であることを表す表現。正直初っ端からこんな重箱の隅みたいなのを挙げるのもどうかと思う。しかし、その性質上一話目の主人公の自己紹介などで使われていることが多く、そのため誤用を目にしてモヤモヤさせられることも多いのでこれを最初にした。

 誤用の中でも多分一番多いのがこれ。


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俺ことルークはこの国では少しは名の知れた冒険者だ。

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 通称の部分に一人称代名詞が使われているパターン。正直、表現したいことが伝わらないか伝わるかで言えば伝わる。おそらくなんの問題もなく伝わる。読むのに支障はない。だがモヤモヤしてしまう。無理して「こと」を使う必要はない。先ほどその性質上なんて書いたがむしろ地の文での本人の自己紹介には使いづらい表現だと思う。「俺、ルークは~」で十分なはず。





その二. 一人称視点と三人称視点が入り混じっている


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 俺の入店に気づいた酒場の店主がカウンターから身を乗り出して声をかけてきた。

「おお来たか、ルーク。ちょうど新作ができたところなんだ。食ってみてくれ」


 この酒場の店主は新しいメニューを考案するたび、正式なメニューとする前にルークに試食を頼んでくる。ルークからしてみればただで食事が食べられるありがたい機会であるため、試食を断ったことはなかった。

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 個人的には読む気を削ぐパワーNo.1。これがあるためにとても設定が魅力的だったにもかかわらず読むのをやめてしまった作品もある。その一と同様に読むのに支障があるかと問われればないと答える。だが確実に作品への没入感は減る。

 例としては上記のような文章。店主の発言前は「俺」(ルーク)の一人称視点、発言後は三人称視点となっている。ルークの主観として進んでいた文が唐突に外から客観的にルークたちを描写する文となり、「んん?」となって読むのが止まってしまう。もっとも、一回くらいならばそこまで気にならない。単にミスかもしれないし。だが、例えば七段落くらいの間に三回も視点変更があったりすると質の悪いジェットコースターに乗っているようで気持ちが悪くなってくる。

 もしかしたら例文のように一行空けることで視点を切り替えているんだと言いたい作者さんもいるかもしれない。しかし、読んでいるこちらはそんなことはパッとは分からない。少なくとも初見では。一話の中で一人称視点と三人称視点を同時に書くならば明確な場面の転換が最低限必要だと思う。そして、場面と視点の両方ともを変えるならば、数行の改行なりそれに代替する区切り線のような目印がほしい。もっとも、この辺はただの個人の好みの問題かもしれない。





その三. 神の視点の登場人物への敬称


----

国王陛下の問いに対する答えをルークは持ち合わせていなかった。

----


 これが最後。三人称視点の中でもいわゆる「神の視点」「作者視点」と呼ばれるものは作品外からの客観的な視点になるだろう。それなのになぜ地の文に敬称をつけるのという話。これも読むのに支障はない。というより全部なかった。

 上記の文が例えばその場に同席している王国の大臣の一人称視点ならば何も問題はない。その大臣は国王の臣下であるだろうから、「国王」に対して「陛下」という敬称をつけるのに不自然さはない。

 一方、神の視点の場合特別な事情がなければ作品世界の登場人物でない視点から語られるため、敬称はつけない。地の文の語り手は「国王」を敬うべき立場にないのだから、国王は単に「国王」もしくは国王本人の名前で地の文に書かれるはず。それなのに「陛下」と敬称をつけてしまうと、国王を敬う立場の作品世界の登場人物何某の視点から語られているかのようになってしまい、読んでいる側としてはその差異に違和感を覚えてしまう。

 なお、神の視点であっても特定の登場人物の心情を語る場合は地の文であっても敬称をつけるのはおかしくない。





 大体この三点が読む気を削いでくる。上記のような文章を見つけた瞬間即座にブラウザバックし「読むのや~めた」となるわけではない。「モヤモヤする」「違和感を覚える」と書いたように、それぞれに感じるマイナスな印象は微々たるもの。なので最初の5話くらいまでは頑張って読む。そもそも作品の内容に惹かれるもの、フックとなるものがあって読み始めたのだから。ガチの初投稿作品なんかは、作者さんも書くのに慣れていくのか読み進めていくと改善が見られたりもする。そういった作品は当然引き続きありがたく読ませていただいている。他方で、読んでも読んでも上記のことでモヤモヤさせられる作品はだんだんと読む気が失せていき、最終的には「悪い やっぱ辛えわ」となってブラウザバックとなってしまう。



 上記以外にも文法・語法の誤りから微妙だなと思う文章もある。ただ今回はとりあえずよく目につくこの三つでおしまい。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

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[良い点] まったくもってその通り! [気になる点] 私は活字中毒者なので大丈夫でしたが、文章の改行が足りない気がします。 段落分けが出来ているからそれでいいと言われればそれまでですが、書籍と違って…
[良い点] 勉強になりました! 気をつけて書きます! それで直るものなら……
[一言] 受け入れたくても、どうしても違和感があって、口に合わない作品はありますよね。 私もセリフの言葉遣いが今ひとつな小説は、読んでいてがっかりします。 一人称・三人称は、新聞の連載小説でも案外自…
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