華忌憚
華は美しい、そして人を惑わす
ある意味毒だ
人々は綺麗な物が好きだ
魅せられる
本作の主人公である少女_宮内躑躅は眼を擦りながら布団から
立ち上がる。
不眠でもない。
睡眠は取っている。
だが、起きると自然と眠気が引き起こされてしまう。
人類の摂理なのか、
眠ることに関しては彼女が長けている。
そうだろう。
1日の半分を布団の中で過ごしている質なのだ。
彼女は良質の眠りに生まれて15年出会ったことは無い。
仕方ないから学校に行くことにした。
制服は普通のブレザー。
可もなく不可もなく。
身支度を終え
牡丹の花飾りを付ける
真紅。
お気に入り。
自宅の門扉を開ける。
いつ見ても我が家は広い。
歩くことは好きだが距離がある
それが好きなのだ。
無表情だがそれなりに楽しい。
歩幅はあくまでゆっくりとゆったりと
走ると憑かれて疲れてしまうからのそのそと。
道中。
花が綺麗だった。
彼女は誰よりも花が好きだった。
寄り道をして時間を食ってしまった。
少しだけ遅れる
目的地へと到着する
変わり映えのしない高校。
変わり映えのしない制服。
「もう、学校なの……」
物足りないようだ
教室に付いてからと言うもの眠気と退屈さで
倦怠感を迎えてしまう。
白い靄の中……
幾多もの美しい花々。
気を取られていた。
甘い匂いがする。
無我夢中。
呼んでいる。
ふわりと雲のような優しい声。
声には気づかず爆睡
宮内躑躅は花に憑かれやすかった。
彼女は何も知らない。
知らなくてもいい。
醒めるまで。