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第一章




学校生活にも慣れてきて、所属しているサッカー部でもかったるい球拾い期間が終了して本格的な部活を満喫し始めた中学一年の秋、夏休み明けのテスト結果が出た。

僕は学年三位をとったが、まだ納得がいってなかった。



またこいつか…



僕は順位掲示板を見上げて落胆していた。

前回のテストは四位で、今回のテストは今まで以上に頑張ったつもりでいたが、上には上がいた。学年一位の遠藤崇という男はクラスメイトで、彼は部活もやらずに勉強一筋の奴だから別にそれはよかった。


ただ、学年二位の中野友季は顔も知らなかった。しかも彼女は前回のテストも学年三位で負けていたので悔しかった。


僕はだんだん彼女のことが気になり始めていた。



「葵!オレに勉強を教えてくれ!」



僕が掲示板を眺めていると焦りながら一人の少年が駆けつけてきた。

彼の名は堂本晃。クラスは違うが部活仲間だ。彼はスポーツ万能で部活ではいつも一緒に練習をしている仲だ。ただ、彼は勉強は苦手だった。



「先生に、次のテストもこの調子だったらしばらく部活はやるなって言われたんだよぉ…。部活がなくなったら、オレの青春がぁぁぁ!」


彼は相当嘆いていた。

掲示板を後ろの順位から見ていくと彼の名はすぐに見つかった。



「赤点とらなかっただけよかったじゃん。晃は部活に没頭しすぎなんだよ。」



「そんなこと言ったってさぁ〜、何でお前は両立できてんだよぉ…。部活終わったら疲れて寝ちまうだろ普通〜。」



「そこを頑張らないといけないのがスポーツマンだろ…わかったよ。テスト近くなったら一緒に勉強しよう。」



「サンキュー!わりぃな!助かるよぉ!」



晃は安堵しきった顔でしゃがみこんだ。



「なぁ、晃。お前、あの中野友季ってやつ知ってるか?」



僕がそう聞くと晃は途端にニヤニヤしはじめた



「なんだ、お前が女子のこと気にするなんて珍しいな。しかもあの中野友季か。」


「べ、別にそんなんじゃねぇよ。ただいつも俺よりいっこ上にいるからさ。どんな奴か気になっただけだよ。」


「ふぅん…なるほど。たしかに頭いいって噂だしな。それに可愛いらしいぜ!灘川がクラスメイトだから、あいつに聞いた方が詳しいと思うよ。」


灘川は部活仲間だ。彼もよく僕と晃と練習する仲間だ。僕はとりあえず灘川の元へ向かった。



彼は背が高いから、すぐに見つけられた。



「よっ、灘川。」




「おぉ、早田か。どうした。今回のテストもすごかったなぁ。」




「まぁ、ちょっとがんばったからな。それより、お前のクラスに中野友季っているだろ?どんなやつだ?」


すると彼も晃と同じような含み笑いをし始めた。




「なんだ、早田も気になるのか、中野のこと。お前は女に興味なんてないと思ってたけどな。」




 

…晃といい、そんなに僕は女子と縁がなさそうなのか。



「そんなんじゃねぇって。ただいつもあの子にテストで負けてるんだよ。知らない奴に負けるのは納得いかねぇからちょっと気になってな。」



「なんだ、そんなことか。つまらん。まぁ、たしかに中野は頭いいからな。美術部も頑張ってるのに勉強もできるって女の子に評判だよ。ま、もちろん男にもな。たしかに可愛いよ。」



美術部か…それよりやっぱり男にも人気があるらしい。ますます気になってきたな。



「なんなら顔見てくか?一目惚れするかもな。」



灘川がニヤニヤしながらいってきたので、キッパリと断り、その場を去った。




中野友季…

いったいどんな子だろう… 


この時もう僕は顔も知らない彼女に恋をしていたのかも知れなかった。

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