魔力、気絶、&同行
「"晴れろ"」
僕の手から放たれた言霊は空へと昇り、雲を霧散させる。
「は、晴れ……ました」
さっきとは打って変わって完璧な晴天になった。
本当にすごいな、この『言霊』は。
「い……今のも神宮寺さんの魔法です、か?」
ネアさんが不思議そうに訊いてきた。
「あー、これって魔法なの?」
「魔力が使われているのでたぶん魔法かと……」
なるほど、言霊は魔力を使うのか。
魔力が減っている感覚ってどんな感じだろうか。もし、大事な時に魔力切れとかになったら大変だからな、理解しておいたほうがいい。
「魔力ってどうやってわかるの?」
「魔力です、か?
えっと……自分の内側にある力を見る感じで……。こう、スパーっとくるやつを……」
うん、わからん。というか、説明に擬音が出てくる時点でおかしい。……ネアさんは説明が下手なのか。
うーん、でも理解はしておきたいし……あ、そうだ。
「"僕は魔力を理解している"」
手から放たれた言霊が、僕に吸い込まれるように消えていくと同時に、僕の頭の中に魔力の情報がインプットされる。
うおっ、気持ち悪いな。いきなり大量の情報が脳に入るとこんな感じなのか。
というかこんな細かい知識いらないし。なんだ、魔力を虹色に光らせる方法って。いらんわ、そんなもん。
「自分の血液の流れを見るようにして……」
まだ説明していてくれたのか。なんか申し訳ないな。
「えーと、もう大丈夫。わかるようになったよ」
「あ、ほ、本当ですか……よかった、です」
ついでに言えば、周りの魔力もわかるようになったし。木とか地面にも魔力ってあるんだな。
……魔力について理解したからには、魔法も使ってみたいよな。
これもできるかな?
「"僕はすべての魔法を理解し、使用することができる"」
言霊が僕に吸い込まれるように消えていき、魔法の知識が僕の頭に――
そこで、僕の意識は途切れた。
*
「あ、あの……大丈夫です……か?」
「うわっ」
既視感のある声によって僕は目が覚めた。
どうやら、情報量が膨大過ぎて気絶してしまったようだ。
使い方は気を付けないといけないな。毎回毎回気絶してたらいつか死ぬ。
あ、でも魔法はしっかりと覚えられてる。
「大丈夫、ですか?」
ネアさんが心配そうにこちらを見てくる。なんか既視感。
えーと、なんて言おう。あ、そうだ。
「あ……ごめんごめん。よく気絶しちゃうんだ」
なんだその体質。自分でも意味わからん。
「そ、そうなんですか……よかった、です」
何がよかったんだ。なぜ信じられるんだ。
「いや、もう、死んでしまった……かと」
あ、まあそうなるか。
うーん、ますます使い方に気を付けないとな。周りに変な心配をさせないためにも。
「ごめんね、もう大丈夫」
「そ……そう、ですか」
はあ、女子に二回も気絶したところを見られるなんて、いまだかつてない体験だ。
もっとも僕に女子の友達なんていないが。って、あぁもう、暗いことばっか考えてんじゃねえ!自分!
「よしっ、町へ行こうっ!」
「ひゃっ!?」
いきなり立ち上がった僕にネアさん驚く。どんだけビビりなんですか、あなたは。
「ネアさん、大きい街ってどっち?」
「え、えっと……アンドルの町より、断然王都の方が大きいですから……ここから見て右側、です」
そういや、この道王都に繋がってるんだっけ。運がいいな。王都ってことは多分この国で一番大きい街に行けるってことだ。
この世界がどんな感じか早く見てみたい。
「じゃあ、今すぐ行こう」
「あ、は、はい」
ん?
「ネアさんは別についてこなくても良いんだよ?」
「いえ、その……私も王都に行く途中だったので……。
お邪魔でしょうか……?」
あー、その上目遣いをやめろ。目をウルウルさせるな。苛めてるような気持になるだろ。
「じゃ、じゃあ、一緒に行こうか」
「はい!」
ネアさんは目を輝かせて答える。小動物みたいだな。
「そういや、ネアさんは王都に何をしに行くの?」
「あ、ギルドの依頼の完了報告、です」
え、なに、ギルドとかあるの?
というか、この子依頼とかできるの?いや、完了報告ってぐらいだからできるんだろうけど……。
何はともあれ、ギルドにちょっと行ってみたいな。
「あー、一緒に行っていい?」
「はい!喜んで!」
なにが嬉しいのだろうか。ただ僕と一緒にギルド行くだけだぞ。
「よし、じゃ行こうか、ネアさん」
「あ、その……ネアでいい、です」
「え?」
「だから、その……ネアでいいです」
あー呼び捨てかあ。まあ、本人が良いて言うなら良いんだろ。
「じゃ、行こうかネア」
「はいっ!」
ネアさん、もといネアとともに、僕たちは王都に向けて出発した。
道中、僕が『ネア』と呼ぶたびに彼女は嬉しそうに目を輝かせた。
本当になにが嬉しいんだろうか?




