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戦う乙女に栄光を  作者: 善信
10/10

10 そして戦いはこれからも

「って、なんじゃそりゃー!」

ラチェッタの絶叫が響き渡る。

当然と言えば当然なその反応に、ラカルトはニヤリと笑った。

「これが俺の『切り札』さ」

「それって回復魔法の事でしょう! つーか、あんな魔法、聞いたこともないわよ!」

自動回復魔法(オートヒール)』は奥の手で、『爆裂推進魔法(ロケットダイブ)』は切り札だと解説するラカルトに、そんなん詐欺じゃんとラチェッタはバンバンと地面を踏んだ。

まぁ、気持ちはわかる。


そんなラカルトの切り札に、アルカリアも驚いていた。

「どうして……もっと早く使わなかったんですか?」

あの魔法なら、契りを行わなくても勝てたかもしれない。

だが、ラカルトは苦笑いしながら使えなかったんだ(・・・・・・・・)と答える。

「この魔法は元々、緊急脱出や自爆特攻用のもんだからな……『加護(スキル)』があったから攻撃に転化できたってだけだ」

そんな魔法をここ一番で使うラカルトに、アルカリアは呆れていいのか、感心していいのか困惑していた。


「っ……まぁ、いいわ。アンタら二人ともアタシが倒せばいいだけだもんね……」

圧倒的に不利な状況に追い込まれているものの、ラチェッタの強気な言動を崩さない。

「強がってんじゃねーぞ、さっさとギブアップした方がいいんじゃねーのか!」

ラカルトの言葉を鼻で笑ったラチェッタが、彼女の持つもう一つの『加護(スキル)』を発動させた!

その瞬間、ラカルト達の視界からラチェッタの姿が消える。

次いで、弾かれるように体勢を崩すラカルトとアルカリア!

「なっ……」

見えない何かに攻撃され、驚愕する二人の前に、ラチェッタが姿を現した。


「くっ……まさか姿を見えなくする『加護(スキル)』……?」 

「はぁ? 違うけど?」

アルカリアの予想をあっさり否定し、ニンマリと笑みを浮かべるラチェッタ。

「今のがアタシのもう一つの『加護(スキル)』、その名も『神速』!」

胸を張るラチェッタに対し、ラカルト達の表情は固くなる。

いかに防御系の『加護(スキル)』や回復魔法があっても、目にも映らぬ速度で攻められ続けてはやがて致命傷を負わされるだろう。

先程の強気な発言がハッタリはではなく、自信と根拠に基づいた物であった事を認識したラカルトは舌打ちをしていた。


「ほーら、突っ立ってると切り刻むよぉ!」

またも『加護(スキル)』を発動させたラチェッタの姿が消える!

それと同時に無数の斬撃がラカルトに刻まれていった!

「ぐっ!」

自動回復魔法のお陰で即座にある程度は回復していくものの、絶え間なく襲うラチェッタの攻撃はいずれラカルトを追い詰めるだろう。

「ラカルトさん!」

全くノーマークになったアルカリアが叫ぶ。

どうやらラチェッタは完全にラカルトに狙いを絞ったようだった。

(回復魔法だのバカみたいな威力の変な魔法だの……コイツは意外性がありすぎる!)

削り辛さはアルカリアの方が上だろうが、何が飛び出すか解らないラカルトの方から片付ける彼女の判断なのだろう。


影すら掴むことができず、防戦一方となったラカルト。

ついに『加護(スキル)』で生成された彼の鎧にヒビが入り始める!

(限界が近そうね!)

ラチェッタが笑いながらラストスパートとばかりに畳み掛ける!

「ぐあっ!」

苦鳴の声と共にラカルトが吹き飛ぶ。同時に彼の『加護(スキル)』の鎧が砕け散った!

それに合わせてラチェッタも一旦、姿を現す。


「手こずらせてくれたじゃない……でも……あ?」

言いかけたラチェッタの言葉が止まる。

なぜなら、眼前で起き上がったラカルトが背を向けて逃走し始めたからだ。

(不様っ!)

最高に格好悪い姿を晒したラカルトに、ラチェッタの嗜虐心が燃え上がる!

当然、逃がすつもりなど無い。

その無防備な背中に向かって爪を立てるべく、ラチェッタは飛び出した!


「……って、そうくるよな!」

一直線に向かってきたラチェッタにニンマリと笑顔を浮かべたラカルトが振り返る!

「しまっ……」


爆裂推進魔法ロケットダイブ!』


一瞬で『加護(スキル)』の鎧を生成し直したラカルトが、魔法を発動させ彼女以上の加速をもって突っ込んできた!

縦横無尽に動く彼女は捉えられないが、不様な背中を晒せば必ずそこを狙ってくると彼は読んでいたのだ!


影すら見えないラチェッタと、地を駆ける流星のようなラカルトが激突する!

「ぐうぅっ!」

ザワールを一撃で倒した、かの飛び蹴りをすんでの所で手甲で防ぎ、ギリギリで防御するラチェッタ。

だが、ビシリと『加護(スキル)』で作られた爪付き手甲にヒビが入った!

それでもなんとか防ぎはしたが、威力は殺しきれずに彼女の体は後方に吹き飛ばされる!


「ちぃぃっ! でも、この程度で……」

「任せたぞ、アルカリア!」

突然の呼び掛けに、ラチェッタは自分が吹き飛ばされていく方向の先を見る。

そこには……。


「アルカリアァァ!」

「はい」

絶叫するラチェッタにさらりと答えて、アルカリアが手を伸ばした!

苦し紛れに振るった爪をあっさりと取り、ラチェッタの両腕を交差させながら背負ったアルカリアは、吹き飛ばされてきたスピードも利用して地面に彼女を叩きつける!


「がはぁっ!」

クレーターが出来る程の威力で地面に叩きつけられ、さらに絡め取られた両腕まで破壊されて、獣じみた悲鳴をあげながらラチェッタは大地に転がった。

そのまま血泡を吹き、ピクピクと痙攣して意識を失う。


「ふうぅぅぅ……」

わずかでもタイミングが狂えば、飛ばされてきたラチェッタに巻き込まれていた所だったろう。

まさに神がかり的な投げを決めて見せたアルカリアが深く息を吐いて緊張をほぐす。


「それまでっ! 勝負ありです!」

審判のアサラエルが高らかに宣言する。

「勝者、ギルド『フェニックスの尾羽』!」

バッとアルカリア達を指し示すアサラエルの声に、天上の神々も称賛の声を上げる!


『マジか、勝ちよった!』『いつかやると思ってましたよ、俺は』『オイオイオイ』『勝ったわ、アイツ』


どよめく天上の存在をよそに、アルカリアはぼんやりと自分の手を見つめる。

「勝った……私が……」

「私達、な」

ハッとして顔を上げると、笑顔のラカルトがこちらに歩いてきた。

「本当に……勝ったんでしょうか……」

「ったり前だろ! ほれ!」

ラカルトに促されて、アルカリアは戸惑いながら右手を上げる。

パーンと強めのタッチを交わして、ラカルトはハハッと笑う。

「勝利のお約束ってやつだ。これから、どんどん機会は多くなるからな!」

「……ふふっ」

ジンジンと心地よく痛む手のひらを胸に抱くようにして、ようやく実感が湧いた初勝利に、一筋の涙と小さな笑い声が彼女からこぼれ落ちた。


────その後、地上に戻った彼らは気絶したままのラチェッタとザワールを、ギルド『白虎の爪先』の拠点まで運び、約束通りの星と仕事を得て帰路に付く。

『フェニックスの尾羽』の拠点に戻ると、ギルドメンバーがワッと押し寄せて勝敗の行方を聞いてくる!

そうしてアルカリア達の勝利を知った彼らは、そのまま大宴会へと移行していった!


飲めや歌えの宴会が進む中、酔い醒ましも兼ねて外で一人夜風に当たっていたラカルトの元にアルカリアがやって来る。

「こんな所に居たんですね」

「ああ、ちょっと酔い醒ましにな」

そうしてまた沈黙が訪れる。

彼女が何か言いたそうにもじもじしていたので、ラカルトが促すとアルカリアは突然頭を下げた。

「こ、今回は貴方のお陰で勝つことが出来ました。本当にありがとうございます」

一瞬、キョトンとしたラカルトだったが、すぐに苦笑しながらまったくだと答える。

「もうちょっとお前さんの頭が柔らかかったら、『護る者(シャーティ)』だってもっと早く作れていただろうに」


「でも……結果的にはそれで良かったかと知れません……」

呟きながら、アルカリアはラカルトに体を預けてくる。

「一緒に激戦を潜り抜けた後の釣り橋効果かもしれませんが……」

もしくは雰囲気に酔っているいるのかも知れない。

そんな前置きをする彼女にやれやれと呆れながらも、ラカルトはそっと彼女と唇を重ねた。


「……ふふっ」

「……ははっ」

そっと離れた二人はお互いの顔を見合わせて小さく笑う。

「これからも……よろしくお願いしますね」

「ああ……行こうな、異世界」

恩人達に報いる為にも……同じ目標を持った二人は拳を合わせる。

そう……ようやく今日、初めての勝利を得ただけなのだ。

最下位の現状から、さらに上を目指して……彼等の戦いは、これからも続いていくのであった。

とりあえず終わりです

次作も近い内に書きますんで、良かったらまたお付き合いください

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