太っ腹
トーキャとコーネがシャーシャーポコスコポコスコしているのを横目に、
ミエナイがうさ耳と談笑をしている。
『トーキャとコーネは幸せ者でございますね。
うさ耳様よりアイテムを授けられるなんて。
うさ耳様は見た目が美しいだけではなく、心までも美しくあります。
ミエナイはうさ耳様こそ女王に相応しいと心から思っております』
「そんな大した事じゃないよー。
ちょうど二つあったし、これ着けたら可愛いなぁって思っただけだよ。
それに名前間違えちゃったのボクだしね〜あはは」
うさ耳様は本当に気取らないっすね。
BROは只の音声ガイドシステムではあるっすけど、
うさ耳様につく事ができて幸せっす。
他のBRO達と情報交換した感じでは、
みんなここまで喋ってもらえてないみたいっすからね。
やっぱりみんな攻略サイトやリアルでのチャットで情報交換していて、
BRO自体そんな必要ないみたいっすから。
ミエナイって名前も正直「え?」って思ったっすけど、
他のBRO達からは羨ましがられたっすからねぇ。
「あっ、そーだ。
へへへ、ミエナイにもプレゼントがあるんだよ♪」
ふぁっ!?
自分にもっすか!?
い、いやぁ〜もうすでに名前まで貰ってしまってますからねぇ〜。
これ以上何か頂いたら他のBRO達に悪いっすよぉ〜。
もう貰えませんよぉ〜。
『有難き幸せ。
このミエナイ、謹んで頂きまする』
これが欲と言う奴っすね、よくできたシステムっすね!
「ちょっと考えてたんだけど。
ミエナイはミエナイでいーんだけど、
やっぱ見えないのは不便だから見えるよーにしてあげる♪
Over the Imaginative Faculty、使っ用〜♪
これミエナイに使ったら見えるよーになるでしょぉ〜?」
ブァッ!?
え? 今なんとおっしゃいました!?
Over the Imaginative Facultyを使用すると?
【星六】っすよ?
本当に超レア、チョアっすよ?
確かに、これは形なき物に形を与えるアイテム、
使えば見える様になる可能性は高いっす。
ーーいやでも……さすがにこれはダメっす。
プレイヤーを手助けするのがBROの役目。
足を引っ張る事ではないっす。
このアイテムは使い所によっては王への道が近づく品。
こんな事に使っていいものではないっす!!
『いえいえ、いけませんうさ耳様。
このアイテムは【星六】、超レアでございます。
もしもの時に使える様、大切に取って置くのです』
「もう決めたんだよっ。
それに最初の内からそんな事考えてたら楽しめないよ♪」
ーーーーミエナイは本当に幸せ者っす。
もう、うさ耳様の言う事にあーだこーだ言うのは止めるっす。
うさ耳様の選択こそすべて。
それを全力でサポートするのが、このミエナイの仕事。
うさ耳様……このミエナイ、誠心誠意尽力させて頂きます!
「じゃぁー何にしようかなぁ〜。
トーキャとコーネは猫ちゃんだしぃ。
どうせなら違うのがいいよねー。
う〜ん……思い切って沢庵にしようかな。
あれ美味しかったし♪」
前 言 撤 回 !
こ、こいつぁやべぇっす……
うさ耳様のセンスを忘れていたっす。
沢庵に手足がついて動いてる様は、
ある種の地獄絵図っす。
勘弁してください!!
『う、うさ耳様。
沢庵はちょっと……。
ど、どうせならライオンにしてください!
女王となるうさ耳様のサポート役として、
やはり百獣の王ライオンくらいでないと!
い、威厳が保てません!」
な、何を言っているんだ自分は。
だが、沢庵だけは嫌っす!
絶対嫌っす!!
「う〜ん。
まぁ、ミエナイがそう言うならそうしよっか♪
ライオンも黄色っぽいし、全然いいね!
じゃぁ、ライオンで決まりっ!
[ミエナイを見えるよーにライオンにしてください]っと」サラサラサラ〜
よく分からないっすけど良かった!
沢庵回避成功。
これでーーうっ。
あっなんだこれ。
あっあっあ”ーーーー!
眩い光に包まれ、ミエナイは一瞬意識が遠くなる。
「ど、どうなったんだガオ。
成功したガオか?
うぉっ……これは……肉球ガオ」
成功……したガオか?
んっ? 何か喋り方がおかしいガオ。
ご、語尾に変なのが付くガオ!
「おぉー。
ミエナイってそんな姿してたんだね!
毛がモジャモジャで可愛ぃじゃぁーん♪
モフモフ、モフモフ」
ラ、ライオン最高。
身長は六十センチくらいと小さいみたいだが、
立派な鬣、柔らかい肉球、可愛らしい目。
ガオ、ちょっと可愛過ぎる気もするが予々(かねがね)満足ガオ。
未来の女王の片腕、百獣の王ミエナイ、ここに爆誕ガオ!
「もう見えるし、
名前もミエナイからミエルに改名だねぇー。
ミエル、改めてよろしくおねがいします♪」
あっはい!
百獣の王ミエル、爆誕ガオ!
この差し出された綺麗な手を汚さぬよう、このミエルが全力サポートするガオ!!
〜〜〜〜
なんだなんだ。
うさ耳の奴何をやったんだ?
突然光ったかと思ったら、そこから変なライオンみたいな奴がでてきたぞ。
嫌に黄色を主張した奴だな。
黄色の鬣、黒いスーツに黄色いシャツ、靴までも黄色か……
ダ○ディーのペットかな?
「これはこれはキングさん。
ご機嫌如何ですガオ?
このミエナ……いや、もう違いましたガオな。
このミエル、ここに爆誕しましたぞ。
ガォハッハ、ガォハッハッハッハ!」
突然の告白に頭がついていかな過ぎる。
まぁいい。
うさ耳に詳しく聞いてみるとするか。
このガオガオはガオガオうるさいからな。
ーーふむ。
なるほどなるほど。
アイテムを使ったのですな。
例の【星六】アイテムを。
もう大丈夫です。
いえいえ。
だってうさ耳さんのアイテムですもの。
どう使おうがうさ耳さんの勝手でございます。
別に反対等しませんよ。
ちょっと一言相談して欲しかったなんて思ってないですよ。
いやいや……ホントホント………
(あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”い”や”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁあぁ!!!!
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!
あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁ……なんでっグスッ……なんで一言も……グスッ……
次からは……グスッ……相談しろよなうさ耳……)
……いかんいかん。
頭の中のリトル金木が荒れ狂ってしまった。
冷静さはゲーマーの必須スキル。
心を落ち着けるのだ金木裳嗣。
この事は後でしっかりうさ耳に言っておこう。
今は頭から忘れよう。
俺は何も見てない聞いていない。
ふぅ。
これにて、ガチャとスキル終了!
次は初めてのバトルです