レアガチャとスキル③
虹色の玉は二つあるので、俺とうさ耳がそれぞれ一つづつ確認する事にした。
ここは是非ともうさ耳よりもいいアイテムを出したいとこである。
「じゃぁーキング、ボクからいくねっ」
うさ耳はそう言うとジリジリと虹色の玉に向かい歩き出した。
ぶつぶつと何か呟いている様だ。
おまじないかな? 少し不気味だ。
うさみみの言動により部屋中に変な緊張感が充満していく。
小さな声で「うん、やっぱりRoad of Rainbowかな」とうさ耳は迷いが晴れた様な顔で呟き、
ぴょんっと虹色の玉の前にジャンプし、両手を大きく広げて叫ぶ。
「さぁ、力を解放するのだRoad of Rainbow! ボクの力になっておくれ!」
あぁ、うん。
決め台詞を考えててぶつぶつ言ってたのか。
それにしてもセンスがない。(なんて事はうさみみには死んでも言えないが)
さてさて、何が出るかな。
「それっ」タッチ
パッパッパッリーーーーン アイテム:Over the Imaginative Faculty(想像力を超えた先)《星六》を手に入れた。
おぉ! ……おぉ!?
ん? 紙……切れ??
いや、紙切れと言うよりはメモ用紙と言った感じか。
十センチ四方のよくあるメモ用紙、まさにそんな感じだ。
これは……星六の中でもハズレの部類に入るものだろうな。
「ただの白い……紙? えーどうせならピンクとかがよかったなぁボクー」
うさ耳は少し不満げな顔をしてミエナイに愚痴っている。
色の問題ではない気もするが。
『いえいえうさ耳様!
大当たりですよ!
これは想像し、紙に書いた物を実現させるアイテムでございます!
言わば形なき物に形を与える幻想級アイテムですよ!
超レア! チョアですよ!』
ミエナイが興奮した口調で答えている。
チョアってなんだよ。初めて聞いたわ。
「えっ!? そうなのー? これそんなレアなのかー♪
そっかー、えへへ。
キングーこれチョアだってーあはははー♪」
だからチョアってなんだよ。
それとほっぺをつんつんしてくるな。
……このうさ耳の勝ち誇った様な笑顔。
可愛い。 じゃなくて、悔しいです!
ハズレじゃなかったのかよ。
ミエナイが興奮する程のアイテムを出したのかうさ耳……
だが、負けていられない!
ふふふ、久しぶりだなこんな緊張するガチャは。
必死に貯めた配布石で、ゴミばかり出たあの時のガチャを思い出すぜ。
ラスト一回で欲しかったキャラがでたんだよなぁ。
俺は緊張に強いのだ。そうだ、強いんだ。
出せる出せる、俺なら出せる。
うさ耳以上のものが!
ついでに見せてやる、センスの【差】ってのもよ!
「うさ耳さん。やるではありませんか。
敵ながらあっぱれですよ。
チョア? でしたかな。
中々の戦闘力みたいですな。
だが忘れてもらっては困りますよ。
まだ私のターンが残っておりますので。
そちらのソファーにでも掛けて見ていてください」
なぜかうさ耳と一緒にコーネとトーキャもソファに座る。
まぁいい。
見てろようさ耳達。
ガチャ運にしても決め台詞センスにしても、
数々のゲームをやり込んできた俺に勝とうなんて百年早いぜ?
いくぜ!
「我キング、天地を統べる者であり英智を極めし者。
漆黒の闇に純白の光を照らす者。
虹霓の者の真の支配者であり、唯一の支配者。
我が命ず、目を覚ませThe rarest spirit!」
王者の風格を身に纏い、俺はゆっくり虹色の玉に近づく。
聞いてたかうさ耳?
これがセンスの違いってもんよ。
若干、うさ耳達が肩を震せ下を見ていることが気になるが、仕上げといこう。
「おはようの時間だ、解放! (決まったぁぁ!)」ピトッ
ポフンッ スキル:Master of the silvervine(マタタビ親方)《星零》を手に入れた。
まっ!!??
ほほほほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、星、星零!?
零ってなんだ零って!?
まず星四以上確定って言ってたよなミエナイ?
「きゃはははー♪ キング星零だってぇ〜。
まだまだボクにはセンスもガチャ運も敵わないようだねぇーあははは♪」
うさ耳が目に涙を浮かべながら笑い転げている。
ち、ちくしょう。
悔しいです!
なんで虹から星零なんか出てくるんだよ!
これはコーネとトーキャに文句を言ってやるしかない。
断固求める。詫び石! 詫び石!
「おい! なんで星ーー」
「にゃ、にゃんでそんなところにマタタビ親方があるにゃ!!」
目をぱちくりとさせながらコーネが叫ぶ。
やはりこのスキルは本来虹から出るものじゃないんだな。
良かった良かった、詫び石詫び石。
「にーちゃ! あのスキルはもう捨てたって言ってにゃにゃいか!
にゃんでこんなところから出てくるにゃ!!」
「にゃっ!?
そ、それは……にゃんと言うか……」
コーネの前に正座をさせられ、さらに小さく見えるトーキャが言い訳を始める。
話を纏めると、どうやらこのスキルは元々トーキャが持っていたものらしい。
毎日毎日マタタビででろんでろんになるトーキャを見て、
これではいけないとコーネが捨てる様に説得したと。
しかし、どうしても捨てる事ができなかったトーキャが虹の玉にしまいこみ、
限りなく零の排出率にして保管していた。との事だった。
排出率を異常に下げる為に、星零にしていた訳ね。
涙を流し、鼻水を垂らしながら必死にこのスキルを使って作る、
マタタビの素晴らしさを力説してくるトーキャを見ていて、
コーネの心配する理由が俺にも分かる。
こいつぁジャンキーの目ですぜ兄貴!
「わ、分かった分かった。
そんな泣くなよトーキャ。
必死過ぎて普通に引くわ。
要は、用法用量さえ守っておけば特に身体に害はないんだろ?
俺がしっかり管理して、一日一個ずつだけ、コーネとトーキャに渡してやるよ」
俺がそう言うと、コーネとトーキャは一瞬フリーズし、お互いの顔を見つめ合う。
その後、ダムが決壊したかの様に二匹して踊り出す。
どうやらコーネも本当は欲しかった様だが、
自分で管理してしまうとトーキャの二の舞になると分かっていて我慢していた様だ。
しっかりした弟である。どこかの弟にも見習って欲しいものである。
まぁ俺は一人っ子だが。
「キングはいい人だにゃー。
僕達の管理者様だにゃー」
「キングはいい人だにゃー。
僕の管理者様だにゃー。
あっでも……守護者たる者、人からタダで施しを受ける訳にはいかにゃいのにゃ」
トーキャがそう言うと、コーネも「確かに」と言った顔をした。
その後少し話込んだ末、トーキャが俺にこんな提案をしてきた。
「マタタビ一個とレアガチャ一回を交換するにゃ。
等価交換にゃ。
これにゃらお互い幸せにゃ」
おぉ、これはとても素晴らしい提案だ。
まさに願ったり叶ったりだ。
つまり、一日に二回、余分にレアガチャを回せる訳だな。
素直に嬉しい。
うん、これはあれだな。俺のスキルも相当レアって事だな。
チョアって奴だな。うん。
一日に二回ガチャが回せるスキル、と言う事にしておこう。うん。
なので今回は引き分けなだうさ耳。また貯まったら勝負をしような。
少しだけ不満気な顔をしていたうさ耳だったが、
コーネとトーキャ、二匹の笑顔に目をやると「あはは」と笑い、
引き分けだねーと言ってくれたのであった。
トーキャがお兄ちゃんでコーネが弟ちゃんです。
次でがちゃとスキルは終わります。多分。