レアガチャとスキル①
相変わらず殺風景な部屋だ。
なんでこんなシンプルな設定なんだ?
「Hey, BRO. ここってなんでこんなシンプルな作りなんだ?」
『うっさ。さっきから起動してるやんけ。
ここはキングさん(笑)のレベルが上がるにつれて色々変化して、買ったりドロップした好きなアイテムを置いて、うさ耳様の好きな様にオリジナルの部屋にできるんや。
んで、ここにうさ耳様のフレンドを連れてきて談笑したり、作戦練ったりできるんや』
なっ、こいつ俺の名前を鼻で笑いやがったぞ。
しかも何かすげぇ態度でけぇぞ俺には。
まぁいい。
この名前はうさ耳が付けてくれたんだからな。
俺のセンスでは断じて無い!
それはそうと、この部屋もゲームの中なんだな。
少しだけうさ耳の部屋なのでは? と思って心配だったぜ。
秘密基地みたいに色々置ける訳だな。
俺とうさ耳のセンスの見せ所って感じか!
「ねぇねぇ、キングと……あれ? そういえば名前なんて言うの?
BROってのが名前?」
『いえいえ、うさ耳様。
私どもには個別に名前はないのでございます。
識別番号はあるんですが、名前はありません』
こ、こいつ……全然態度違うじゃねぇか。
この野郎、いつか一発拳骨食らわしてやるからな。
「えぇ〜? そうなのぉ〜?
あっ、ならボクが名前付けてあげるよ!
そーだなぁ、んー、声だけ頭に響いて見えないから、ミエナイ!
君の名前はミエナイだ♪」
『!?
ミエナイ……素晴らしい名前です。
ありがとございます』
くっくっくっくっくw
一瞬すげぇ戸惑ったな今、絶対w
俺の名前を笑うから罰が当たったんだよ。
うさ耳ちゃんのセンスを舐めるなよ!
ミエナイ(笑)君♪
「じゃぁー、キングとミエナイ!
早くガチャ引こうよ♪ ねぇねぇ♪」
そうだった!
すぐ思考が脱線してしまうのが俺の悪い癖だ。
お楽しみのガチャの時間だ!
『そうでしたそうでした!
では、簡単にガチャの説明だけさせて頂きます。
ガチャには、バトルガチャ、日常ガチャ、素材ガチャ、レアガチャの計四種類ございます。
バトル、日常、素材に関してはそのままで、それぞれのアイテムが排出されます。
これらのガチャは、ゲームを進行していく際に、
敵がドロップしたり、探索で見つけたりできる【クリスタルの欠片】で回す事が可能です。
十個で一回、ガチャを回す事ができ、百個で十一連ガチャを回す事ができます。
レアガチャからはバトル、日常、素材、各アイテムが星四以上で排出されます!
さらに!
なんと、レアガチャからのみ、【スキル】も排出されるのです!
自分がレベルアップで覚えられない様なスキルも、手に入れる事ができるかもしれないのです。
レアガチャは【クリスタル】で回す事ができ、仕様はクリスタルの欠片と同じです。
十個で一回、百個で十一連、となっております。
クリスタルは基本的に【課金】しないと手に入りません。
ただし、ごく稀に敵がドロップするか、探索で見つかるか、イベント等の配布で手に入る事もあります』
なげーな説明が。
要は普通の一般的なソシャゲと同じな訳だなガチャは。
しかしスキルもガチャから出るとは新しいな。
まぁどうせ覚えられる数には限度があるからしっかり吟味しなきゃならないんだろうけど。
『うさ耳様には先着様サービスとして、クリスタル三百個がプレゼントされていると思うので、
十一連ガチャが三回引く事ができます!』
ナイス!
でかしたぞうさ耳!
初回からそんなけ引けるのは、後発組に大差をつけるチャンスだ!
序盤から無双状態じゃないのかこれ?w
「あー、もう二百個使っちゃってるからあと一回しか無理かな? てへっ」
ふぁっ!?
な、何を言っているんだうさ耳君!?
もう使った!? 一回!?
いやいやいや、てかまだ使うタイミングなんて一回もなかっただろ!
完全にフリーズする俺に代わり、ミエナイがパニクりながらも聞いてくれた。
『ふぁっ!? う、うさ耳様?
まだ特に使う様な状況はなかったと思うのですが……
一体何に使われたのですか?』
「ーーそ、そうだぞ、うさ耳!
何に使ったんだよ!
まさか一人だけで勝手にーー」
勝手に回したんじゃないだろうな!
そう言いかけた俺は、うさ耳の表情を見て固まってしまった。
「……名前をね、変えたの。わたし嬉しかったの。
産まれて初めて。あだ名をつけてもらったの。
【うさ耳】って、キングが呼んでくれる度に心が跳ね回って喜んでる。
だから、名前を変えたの……ごめんなさい」
……ボクっ娘じゃなくなってるな。
きっと嘘をついてる訳ではないだろう。
怒られてると思ってるのか、涙目だしな。
…………。
ーー少し違和感はあったんだ。
一人目の登録者ってのに。
頑張って並んだって言ってたもんな。
これだけのソシャゲだ、注目だってすごいはずだ。
それをこんな小さな子が、一人目の登録者ってんだから。
頑張って並んでまで、このソシャゲをやりたい理由があったんだろう。
でもそこは聞かない。
誰にだって人に言いたく無い事あるもんな。
だから、今の俺にできる事は、この空気を和ませるくらい……だな!
(それにしても、名前変えるのにクリスタル二百個って……運営も鬼畜だな。
いつか説教してやる)
「えいっ。おっ、プニプニで柔らかいなぁ〜うさ耳のほっぺは♪」
「ひゃっ、な、なにふるんでふかひんぐ(な、なにするんですかキング)」
「俺達別に怒ってないぞ、うさ耳。
なっ、ミエナイ?」
『勿論でございます。
どの様に使われるかはうさ耳様の御自由でございますよ』
「そういう事だ。
それに分かるぞ。気持ち。
うさ耳、名前つけるセンス無いもんなw
俺のセンスの良い名前が良かったんだろ?w」
「キング……
もう! ボクはセンス悪くないよっ!
ママにはセンスマスターって呼ばれてるんだからっ♪」
センスマスターか、どうやらこのセンスのなさは血筋の様だな。
何はともあれ元気になってくれてよかったよかった。
うさ耳ちゃんにはその笑顔の方が似合ってますよ〜。
ーーなんて本人には恥ずかしくて言えないから、内緒にしておこう。
小さな声で「ありがとう」って言ってた事も、
恥ずかしいだろうから聞こえなかった事にしておいてやろう。
思ったより長くなってしまったので分割します。
クリスタルの数がおかしかったので直しました。