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これがモブってやつですよ!

作者: 留守 蕗
掲載日:2015/04/15

突然ですが、私、乙女ゲームの世界に転生しました!


何言ってんだこいつ、とは…思わないかもしれないですね。乙女ゲー転生なんて物語ありふれてますし!


と言っても私は何の役割もない一般人。モブです。

前世でこの世界であろうゲームはプレイしたけど、私はいなかったしね。

でもですよ!

前世でいろいろ読み漁った転生物だと、モブ転生ってなんだかんだでチートだったり、メインキャラと親しくなったりするんですよ!

もうわくわくです。

第二の人生、楽しみます!




私が転生した乙女ゲームは、普通の、というのが正しいかはわからないけど、現代日本のとある高校を舞台にしている、学園ものだ。ファンタジー要素はない。

舞台となるこの町に引っ越してきたばかりの主人公が入学した高校で攻略対象たちと出会い、あるいは再会し、恋していくものだ。

相手によっては多少権力争いとかに巻き込まれたりもするが、ストーリー上で命の危険などはないし、バッドエンドも、ただの女友達との友情エンドだ。安全って大事。

お金持ちしか入れない学校というわけでもなく、多少偏差値が高いだけの普通の私立学校。

となれば、もちろんいくしかない。

学費的に公立が望ましかったのだがそこは何とかしてもらった。

いざ、乙女ゲームの世界へ!




「見て見て! あそこにいるの、生徒会長だよ!」

「どこ!?」


私は即座に窓の外を指さす友人の隣に移動した。同様にクラスメイト数人が窓の外を見た。


「ほら、あそこ。一緒にいるのは瑞姫さんかな? 最近よく一緒にいるよね。」

「だねぇ。美男美女で絵になる二人だよ。相変わらずかっこいいなぁー。」

「私もだけど、あんたもたいがいミーハーだよね。」


校舎内に移動した二人を見送ってから、席に戻る。


「あれだけのイケメンが学内に揃ってたらミーハーにもなるって。」

「確かに。」

「同学年にあれだけのイケメンがいるのに同じクラスじゃないなんて~。」

「運ないよねぇ。」


クラスメイト達が次々と嘆きだした。


「でもさ、同じ教室にいたら授業どころじゃないかも!」

「成績落ちる!」

「いやいや、逆にバカなところ見せたくなくて頑張れるのかも。」

「今度聞いてみようかな。」

「よろしく~。」

「それにしても、学祭、楽しみだよね!」

「うちの学校、結構すごいもんね。楽しみ―。」

「ねね、二人は、クラスの出し物何がいいと思う?」


どんどん人が集まり、文化祭の話で盛り上がる。

何の変哲もない日常風景が広がっていた。




乙女ゲームの舞台となる高校に入学してから早半年。

私は学園生活を満喫していた。まごう事なき、モブとして。

ヒロインは生徒会長ルートを進んでいるように見える。

私のほかに転生者がいるような感じはない…と思う。

特にイレギュラーも起こってないっぽい。


どれもこれもあやふやな情報なのは直接の接点がないからだ。


もちろん、私は入学当初からヒロインや攻略対象に近づこうとした。野次馬根性で。

さすがにこのモブ顔で恋愛対象に見られたいなどという高望みをするつもりはなかった。

でも、せっかくの転生。

間近で物語を見たいじゃない!

人の恋路を見てにまにましたいじゃない!

ゲームにはいなかった私だけど、転生補正とかで、誰かの友人Fくらいにはなれるんじゃないかって期待した。

ゲームをしてるから、ある程度の趣味とかはわかるしね。


でも現実はそんなに甘くはなかった。


まず、クラスメイトにヒロインも攻略対象もいなかった。同じ学年だというのに…解せぬ。

クラブに入るという手もあったけど、アルバイトをする約束でここに入学したからあきらめた。両立、無理。成績も危ないのにそんなことしたら、赤点を取る自信がある。

ならば、バイト先を誰かと同じに! と思って応募した場所は全部落ちた。顔か、顔が悪いのか。


一番自然な近づき方を封じられた以上、仕方がない。

今こそ唸れ! 前世知識!

イベント乱入だ!


やりこんだ、とまでは言わないがこのゲームは結構好きだったからある程度イベントは覚えている。

日にちが完全に決まっている物は意外と少ないが、そこは粘り強くいくしかない。

目指せ、存在認知!



無理だった。


ゲームでは固定イベントでも、ここ、現実。

ゲーム通りのタイミングで起こっているわけではないみたいだった。

出会いイベントがあるはずの図書室や裏庭をうろついてみたり、遅刻ギリギリに登校してみたり、放課後の遅い時間にヒロインの教室近くを通ってみたりしたけど、まったく遭遇せず。

ただの不審者にはなりたくないので、1週間でやめた。

でも、ヒロインはちゃんと攻略対象と出会っているみたいで、私はものの見事にあてを外したらしい。


ならば、学校行事イベントなら…! と思ったが、友人たちと行動していたのであきらめた。

やる気あるのかと思われるかもしれないが、友達、大事。

高校生活をボッチで過ごすなんて、とんでもない!

目の保養のためにそこまでは捨てれないのだ。


となると、あとはランダムイベントか休日のデートくらいになってくる。

相当難易度が高い。


あきらめた。


粘り強くいくんじゃなかったのか、とか、早すぎる、とかいろいろあるだろうが、時間は有限なのだよ。

それに、押してダメなら引いてみろ、という言葉もある。

関わらないようにしようとしたほうが巻き込まれる確率が上がるかもしれない。

という言い訳のもと、謎の徘徊はやめることにした。何度か友人につっこまれたしね…。



そんな感じに数か月を過ごしたわけだけど、そこで、気づいた。

この世界、ぱねぇ。


まず、学校。

広い敷地。きれいな校舎。広いグラウンドに、体育館。各スポーツ専用コート。かなり充実している図書室。メニューの豊富な食堂、しかもおいしい。品ぞろえ豊富な購買。ほかにもかなりの設備が整っている。

行事も豊富だ。ゲームなどでよくある生徒会主体の行事運営で、さまざまな催しがある。体育祭、文化祭、遠足などのお約束行事は相当自由で豪華だし、クリスマスパーティやスキー合宿などもある。

これで金持ち学校じゃないんだから、驚きだ。

前世では、漫画などで読む高校生活に期待を持ったものだが、実際行ってみると、まあ、そういうことだ。

でも、ここではそれが現実なのだ。

超楽しい。


次に、街。

学校を中心と考えたとして、最寄り駅の近くには大型のショッピングモールがある。大体のものはここで買えるだろう。ゲームセンターもあるし、カラオケもあるし、ボウリング場もある。

さらに、電車で少し行くだけで、遊園地があり、動物園があり、水族館があり、博物館があり、海があり、大きな森林公園がある。ちなみにどれも結構な規模だ。

ゲームをしていた時は気にしていなかったが、高校生が気軽に行ける距離にこれだけのレジャー施設があるって、かなりすごいことではないだろうか。

夏には大きな花火大会があるし、お祭りもある。

出かける場所は選り取り見取りだ。


そんなハイスペックな場所にいるのだから、満喫しなくてはならないだろう。

そう思い至った。


となると、ヒロインや攻略対象者に近づくのは優先順位・低である。

考えてみたら遠くで見るだけでもいいじゃないか。

モブ、万歳。




そんなこんなで今に至るわけだ。

友人たちと、攻略対象者たちを見てキャーキャー言いながら、高校生活満喫中である。

まあ、物語にかかわりたいという思いも捨てきれていないため、たまに落ち込んだりもする。


ちなみに今のところの接点は、友人の友人がヒロインの友人であるということくらい。ただの他人だ。


だが、実は一度だけ、物語にかかわったことがある。

ヒロインが女子生徒に呼び出されるイベント、よくあるファンからの警告ってやつだ。

彼に近づくなってやつね。

そのイベント内で、こんなセリフがある。


「昨日、ショッピングモールで二人を見たっていう子がいるのよ。」


私だ。

それに気づいたときは、感動した。

私、関わってる。

物語に関わってるよ!

まあ、それだけなのだが。


だけど、いいのだ。

そうやって些細な接点を楽しむのが一番いい。


体育祭では、お約束の借り物競争に出てみた。かつらって、なんだ、かつらって。書いたの誰だ。先生の誰かがかつらなのだろうか…。借りれずに最下位だった。疑問だけが残った。

ヒロインは大玉転がしに出ていた。ペアは幼馴染キャラだった。見れて感動。

花火大会は、友人と食べ歩きばかりしていて、あまり気にしていなかった。

夏祭りもかなりの規模だったので全力で楽しんだ。イベントは完全に忘れていた。

今度の文化祭だって見るものはたくさんある。

ゲーム通りなら、かなりクオリティの高い出し物がたくさんある。食べ物は制覇するつもりだ。

イベントは、ヒロインがどこに回るか次第なので、遭遇できれば、といったところかな。


バイトがない休日は友人たちといろいろ遊び歩いている。

お気に入りは遊園地。ジェットコースター、楽しいよね。

たまに、ヒロインたちを目撃したりして、遠くから眺めている。

そして、次の日、学校でクラスメイト達に話してもりあがる。黙ってても、大抵ほかにも目撃者いるしね。


モブとして、この世界を満喫する。それだけで十分だ。

半分本音、半分言い訳だ。




「図書室に本返してくるねー。」

「帰りに自販機でジュース買ってきて~。」


流れるようにパシリにされつつ、図書室へと行く。

本当にここの図書室は充実してる。卒業までに読みたい本を制覇できるだろうか。


「む、3巻がない。」


思わず声に出す。借りたかったのに、タイミングが悪い。

仕方がない。ほかのものを借りようか。

そう思った私の前に、本が差し出される。


「読み終わったので、どうぞ。」


欲していた本を目の前に出され、反射的に受け取る。


「ありがとうござい、ま、す?」


思わず疑問形になった。

ちょっと落ち着こう。うん。

この人、見たことあるよね。うん。


「どういたしまして。」


淡く微笑み、去っていく彼。


攻略対象者ーーーー!!

副会長殿ーーーー!?


今、言葉かわしちゃったよね!

これはイベント!? イベントなのか!?

この本は家宝にするべき!? …って図書館の本だってば!

まさかのモブ脱却!?

これをきっかけに接触回数増えたり!?

4巻の時も同じ事おきたりとかさ!



大混乱した結果、本はちゃんと借りたもののダッシュで教室に帰って友人たちに報告した私は、そこにはヒロインもいたことや、モブ脱却の機会を見事に無駄にしたことに全く気付かず、友人たちに根掘り葉掘り聞かれ、本をとられそうになったりジュースを買ってこなかったと怒られたりするのであった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] まさにモブ!でも確かにゲームの世界は楽しいことがいっぱいだと思う。そりゃ満喫しますよ! [一言] ゲームにあるような夏祭りとか私も行きたい!
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