第1話(書き変え後)
はい、投稿してみました。
最後までお読みいただけると嬉しいです。
誤字などがありましたら何らかの方法で教えていただけるとありがたいです。
パンッ。
スターターピストルによる破裂音が聞こえたと同時に走り出す。
体からいつも通り、何とも言い知れぬものが抜けていくのを感じるが、そんなことはどうだっていい。
それよりも今、集中すべきことは──
「長谷川選手、我が校が誇る陸上部エースと互角の勝負を繰り広げております! なんであんなのが速いんでしょう!! あっ……失礼しました」
……。今、集中すべきは陸上部エースとの差だ。
本気で走ってしまうと悠々と追い抜いてしまう、どこをどう考えても帰宅部の俺が陸上部エースと競争し圧勝と言うのは不自然極まりないだろう。
そのため、接戦の末、なんとかもぎとった勝利に見えるようにしなければならない。
辛勝だったとしても、地区でトップクラスの速さの陸上部エースに勝つのは不自然だけどな。それでも応援してくれている人がいるから負けるわけにはいけない。
ゴールテープ前の直前で、今まで横に並んで走っていた状態から気付かれない程度にペースを上げ、抜け出し、先にゴールテープを切る。
今まで応援ムードだった、トラックを囲むようにして連なるテントからざわめきが奪われ静まり返った。
そんななか周りの様子に気付いていないだろう、天使がタオルを持って近寄ってきた。
「おつかれさまっ、これ使って! それにしても準くんはすごいね!! まさか陸上部のエースに勝っちゃうなんて!」
ねぇ、ここがゴールテープ切ってすぐの場所だってわかってらっしゃる? ただでさえ静かなんだから、聞こえちゃうでしょう……? しかもほかの選手に睨まれちゃうし。
こんなことを考えつつ、お礼を言ってタオルを受け取り額に浮かんだ汗をぬぐう。
まぁ、かわいいから許せちゃうんだけど。
こんな風に、許せてしまうほど本当にかわいいのだ。
石井 雪さんは俺だけじゃなく学校のアイドルだ。可憐で護りたくなるような容姿、その上、巨乳である。モテないはずがない。
そして何より彼女はやさしいのだ。そう、こんな俺にさえ……。
──だが、それは時と場所を選ばない。
「どうせまぐれだ。あいつの調子が悪かったんだろうよ」
「調子もコントロールしてこそ一流なの! つまりそれも実力のうちだよ!!」
急に傍までやってきてそんなことを言いだしたのは、学校の男子アイドル的存在の今村 友樹だ。勉強はそこそこらしいが運動神経が抜群で、なによりイケメンでカリスマ性を持っている。ファンクラブまであるらしい人物だ。
こいつはよく俺に絡んでくる、それはひとえに俺が石井さんに優しくしてもらっているせいだろう。傍から見てもこいつが石井さんのことが好きであることは明白だ。
でも石井さんもなんでこんなやつに優しくするんだろうかね? 自分で言うのもなんだけど。
「長谷川。君も雪の近くに寄るなよ、汚らわしい。彼女が清廉だからって甘えるなよ」
確かに後半の部分は同意できる。でも汚らわしいはあんまりじゃないかなぁ……。
「最低っ。もう友樹くんなんて知らない! 準くんあっち行こっ?」
疑問形であったが、強く手を引かれて動かされた。
これは後々、遠目でこちらを見ていた人には何か言われそうだ……。
「準くんも準くんだよ! 男らしくガツンと言ってやればいいのに!!」
「そういわれてもなぁ、こんなに多くの人に言われると何か俺に原因があるはずなんだよ。まずはそこを直さないと……」
現在俺は、木陰で石井さんから説教を受けております。
準くんは悪いことしてないんだから堂々としろ、人を頼れなどなど延々と言われ続けております。
男子に嫌われる原因の一つは石井さんと仲良くしていることだとは思うんだけどね。そこはしょうがない、俺も仲良くできてうれしいし縁を絶つ気はさらさらない。
「はぁ……。準くんだし仕方ないかぁ。とにかく、何かあったら言ってね?」
「ハイ、ワカリマシタ」
強い口調でじりじりと詰め寄ってこられると、こう答えるしかあるまい。
近くで見る石井さんも可愛いです、ぐへへ。
「ところでさ、いつも思うんだけど。石井さんって、なんで俺に優しくしてくれるの?」
「それは準くんが……」
『──間もなく、綱引きが始まります。出場される選手は1番ゲートに集合してください』
「おっと、ごめん。行かないと! その話はまた今度!!」
集合の放送が聞こえたため走り出し後ろを振り向いてそういうと、そこには暑さのせいか顔を赤く染めた石井さんが口を開けた状態でいた。
「気付いてよ、鈍感……」
何か言ったみたいだけど少し離れていたため内容はわからなかったが、独り言だろうと思い聞き流した。
・ ・ ・
最終的に俺のクラスは、突出した俺の身体能力のおかげもあってか、俺が出た競技においては全てで勝利を収め、総合優勝した。だが、俺をねぎらってくれたのは石井さんと家族、そして少数の友達だけだった。
労ってくれなかったのはまだいいが、それでも、記念写真に写らせてもらえないのはやりすぎじゃないだろうか……。
その結果に不満を持ちつつ、翌朝、体育祭のほとぼりが冷めていない教室に入った瞬間空気が変わったノを感じた。もちろん悪い方向に。
今まで楽しげに話していた者はあざ笑うように俺のほうを見て、話していた人と一言二言話して爆笑し、そうでない者も顔を顰めた。
この状態も長くは続かなかった。
なぜなら──
「おっはよー!」
石井さんが教室へ入ってきたからだ。
皆は、ちょっと気まずくなりながらも石井さんにおはようと返した。
でも、どこかに違和感を覚えたのか
「何かあったの?」
と首を傾げた。
「いや、何もなかったさ。な、みんな?」
友樹はそう言ってクラスのさっきまで俺に好意的でない視線を向けていた者へ話しかける。
もちろん、ここで何かあったなんて言うような奴もいるはずもなく彼らはただただ友樹のその言葉を肯うだけであった。
こんなことをされたら少しは腹が立つものだ。だが少数でもそこには確かに悔し気な顔を浮かべる者たちがいる。その中には俺の数少ない友人の鈴木優太がいた。彼は昔、俺のことをかばってくれようとしたことがあったが、そのせいで優太の立場が悪くなるのは嫌だったためしないでくれとお願いした。そのときの優太の顔は何ともいえないものだったが。
辺りの様子を確認し、石井さんに視線を戻した俺は驚愕した。
石井さんは悔しそうな、それでいてとても普段からは想像できないような顔で怒っている。さすがに先ほど教室に入ってきたとしても俺が関係していることはわかっているのだろう。
恐らく……じゃないな、確実に俺のために怒っている彼女の顔を見て、こんなときでも石井さんはかわいいんだな、と再確認していた。彼女は真剣なのに俺は心の中でこんなことを考えていることに申し訳ない気持ちになったが、彼女が可愛すぎるのがいけないのだと開き直ることにした。
俺の心境を知ってか知らずか俺のほうを向いた。先ほどまでの表情と打って変わって憤りは収まったように見える。
石井さんは何も言わないがその心境は手に取るように分かり、また不快な気持ちを抱かせてしまった自分を不甲斐なく思う。
なぜなら石井さんは、目は口程に物を言うを地でいくような、本当に何もなかった? 大丈夫なの?? と言わんばかりの心配そうな目でこちらを見つめてきているからだ。
俺はその様子を見てあることを考えていた。
石井さんにこんな顔をさせるぐらいなら
──力を隠すのをやめてしまえばいいのではないか。
明らかに異常な力。理由も原因も心当たりはないが、身体能力が人外になっている。
これを周りが知れば表向きにあんな態度をとるものは減るだろう。
そうすれば、石井さんは──
「なぁ、長谷川? なにもなかっただろ?」
そう問いを投げかけられた俺は決意を固め──
そして辺りが光に包まれた。
あまりの光量に思わず目を閉じた俺たちは何事かと目を開いた。
すると、眼前にはローブを羽織った困惑しているような男と、いかにも騎士の格好をした武装集団が立っていて、後ろにはどこまでも続くかのように思われる平原が広がっていた。
一瞬前とは全く違う光景に混乱している俺らに、より状況がわからなくなる言葉がかけられた。
「よ、ようこそ。我が国へ、勇者様……御一行」
「「「はい?」」」
それは俺たち全員の心境を的確に表した言葉であり、俺たち全員の異世界での第一声であった。
お読みいただきありがとうございました。
今後ともぜひよろしくお願いします。
書き変えたいところをすべて書き変えたあとに更新しようかと思っていたのですが、まだ時間がかかりそうだったので、とりあえず更新しても構わないところだけすることにしました。もうしばらくお待ちください……。




