其の八
死人軍団 VS 死人&村人連合
左右に分かれた死者の陣は、うしろへ行くに従い徐々に隙間を狭くしている。前進する鬼の群を死者の壁で減らし、更に進みくれば後方に控えた人の射が一掃する、所謂雁行の陣がここに敷かれていた。
「来たぞ!」
前陣を突破した殤鬼らが、篝火の明るい領域へ姿をみせると、横並びになった男たちは指馴染んだ猟弓をかまえる。しかしその多くの腕は震えていた。いかに魔性と知りつつも、日常で獣を追うのと、鏃の先に人の形を定めるのとでは余りに勝手がちがい過ぎていたのである。
迫る殤鬼を前にきっかけをつかめずにいるなか、ひょうと放たれた一矢が風を切り、見事鬼の眉間を貫いた。
射手は白髪を散らした小柄の老人で、続いて第二、第三の矢が飛んだが、これも別の老いたる手より撃たれたものであった。
「今ぞ放てッ!」
村に少なくなった、戦乱の頃を生き抜いた老夫の鋭い声。躊躇う者がハッと弓を直し一斉に解き放つと、邪滅の矢が鬼の体を夥しく貫いた。
千の殤鬼に対し数で劣るを陣にて制し、兵器を以て圧する形で戦いは進んだ。矢数は一晩では射尽くせぬ程こしらえてある。重く腕を張らせながらも一心に放ち、疲労すると下がって矢を供給する側に回る。この交代の繰り返しで弓撃は途切れず、次第に減りゆく鬼の数に男達は手応えを感じ始める。
戦況に変化が訪れたのは雲間に十六夜の月がのぞいた頃――。互いに数を減らし合いながらも、素手の殤鬼に対し優勢にしていた村の死者達の首が、鉄の剣と戟により次々刎ねられていく。
かの庸嶺山より出没した五十余名の兵士らが突撃して来たのである。古式の武具を亡びの身に帯び、その形こそ生前と同じに見えたが、黒面の表情には先の殤鬼より一層の激しい邪性に満ちている。鬼兵は方々より略奪せし兵器を振るっては木剣を断ち、刻んだ死者の腐肉を戦場へばら撒いていった。
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