其の四
謀略によって死んだはずの兵士たちが魔物となって甦りました。
娘はあくびをしました。
村は今二つに割れていた。殤鬼は庸嶺山より発して真っ直ぐ西へ向かっている。生前の意志が都へ還らせようとするのか、あるいは計略を受けた怨みによるものか、とにかく進む先に集落があれば人を襲い破壊を尽くしていく有様で、ひと月と経たずこの地へ現れるのは明らかであるという。
あとは居を捨てて逃げるか、留まって策を講じるかのどちらかであったが、多くは村を出る事に賛同した。だが老親や病の者を抱えた家は容易には頷けず、道士を招いた若者もその一人で、されば消災度厄を司る道家の言をもらい、その上で身のふりを決したいというのが頼みの旨であった。
これを受けて道士は眼を開き、まず周辺の地理をたずねると、次に西方にあるという村のことを聞いた。しかしその村は鬼の襲来をまたずして飢饉により滅びたと、古老は空しく首をふる。こことても僅かな蓄えと狩猟によって食い繋いでいるのが現状で、いま住む場所をおわれては後に生きる道が無いと嘆く。
「委細承知しました。些か考えがあります故、明朝、件の村へ出立することに致します。つきましては、先の決断はこの帰還を待ってより下して頂きたく――」
静かな誠意の声に、一同は深く道士に頭を垂れる。
しかしその横からは「わきまえて下さいましな、借りものの身で……」と、不服げにささやく娘の言葉があった。
翌朝早く、村より二十名程の丈夫を連れて馬車は西へと発つ。また残った者たちには矢と剣の製作が命じられた。矢は桑の枝を削り矢羽を備え、剣は桃木を鋭くしただけの単純なものである。
二日が経ち、この日は朝から雲が垂れ込め、鳥や犬も姿を現さない妙な静けさがあった。作業は変わらず進められ、矢数が千、剣が三百を超した頃、西へ出ていた内の数名が駆け戻って来る。青ざめた顔をしては、作業を中断させ、女子供を家へ入れると、何を見ても騒がぬよう周囲へ伝える。
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